世界最高峰の女子プロ4選手のスイングを解説!球が曲がる要素が一つもない

今シーズンは男女ともに、多くの選手が米ツアーに参戦します。その中でもとくに注目されている女子のトップ4選手をピックアップ。

みな美しいスイングですが、それぞれに特徴があり、それが各自の持ち味につながっています。

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【岩井明愛・千怜プロ】ブレないオンプレーンスイングからのビッグドローとフェースの開閉を抑えたベイビードローが特徴

アドレス~バックスイング

【明愛プロのPoint】すでにフェースが開いている(写真右)

姉の明愛プロは、ヒザが深く曲がっていてドシっとした印象。妹の千怜プロは、上体が起きているスッとしたアドレスで、手元が低めの位置にある。この時点でフラットな角度でスイングしていくことがうかがえます。明愛プロのバックスイングは、ややインサイドにクラブを引きながらフェースを開いていくスタイル。つまり、アームローテーションを使っています。逆に千怜プロを見ると体の前にクラブがあり、かつフェースがボールを向いているので、アームローテーションをほぼしないタイプであることがわかります。

【千怜プロのPoint】バックスイング中、フェースがボールを指す(写真右)

トップ~ダウンスイング

【明愛プロのPoint】トップポジションはオンプレーン(写真中央)

明愛プロは「THE・オンプレーン」のトップ。ヒザを見るとアドレスの段階よりもやや曲がっており、実際に体が左方向へ回転する少し前から切り返しがはじまっているのがわかります。千怜プロのトップでのシャフトの向きは、足の向きに対してややクロス。この状態から体を回すとクラブはやや背中方向に垂れ、スイング軌道が乱れるリスクもありますが、うまくプレーンに戻せればシャフトにトルクがかかり、飛距離を伸ばすことができる。ダウンスイングでは、胸の向きよりも腕が右後方へ遅れ、ほのかなインサイド・アウト軌道の確保ができます。

【千怜プロのPoint】右ヒジが右ワキ腹についている(写真右)

インパクト~フォロースルー

【明愛プロのPoint】右足の強い蹴りを利用して骨盤を押し込む(写真左)

明愛プロは腕のローテーションが大きく、フォローでフェースが斜め下を向きます。対して千怜プロのフォローを見るとフェースが左方向を指す。これはさほどフェースが閉じていない状態。インサイド・アウト軌道で振りながらもフックボールにならないようにケアしているのでしょう。インパクト以降、うしろから見て左のお尻がしっかり出てくるのも千怜プロの特徴のひとつ。体が流れることなく前傾を維持できている証です。

【千怜プロのPoint】フォローでフェースターンが少ない(写真左)

また、ふたりのスイングの違いのひとつとして「骨盤の回し方」があげられます。明愛プロは、右足でしっかりと地面を蹴ることで骨盤を回していくのに対して、千怜プロは右足を地面からあまり離さず、左サイドを引いていくタイプ。利き足が右の場合は明愛プロ、左の場合は千怜プロのようになりやすい傾向があります。

フィニッシュ

明愛プロのフィニッシュは、クラブの動きにあまり制限をかけないナチュラルなスイングから、フィニッシュはやや背中が反った形に。打ち出しの高いつかまったボールをイメージしているのでしょう。千怜プロは、左カカトと右ツマ先に体重が乗っておりとてもバランスがいい。左サイドを開いていくことで腕の通り道が確保され、ヒッカケのミスも出にくいです。

【山下美夢有プロ】曲がる要素がひとつもないフェアウェイファインダー

アドレス~バックスイング

【Point】体重移動で始動するのでヘッドが少し遅れて動き出す(写真右)

アドレスはリキみがなく、ややカカト側に重心がある構えです。小柄な体格からか、ドライバーのトゥが上がっており、シャフトプレーンはかなりフラットになっています。ここからバックスイングをすると、クラブはインサイドへ入りやすくなる。体重移動で始動するので手元に対してヘッドが遅れて動き出し、フェースがボールよりも手前の地面を向く「シャット」な状態でクラブが上がっていきます。

トップ

【Point】左手首が真っすぐでクラブがオンプレーン(写真右)

胸が90度回ったタイミングでは手元よりもヘッドが高い位置にあるので、少しずつコックが入っているのがわかります。このとき、ヘッドが垂れたままだとドライバーのような長いクラブはインサイドへ入りすぎてしまうので、フックやプッシュアウトになりやすい。山下プロは「ヘッドを手元より高い位置」にもってくることでこのリスクを軽減しています。

トップポジションではクラブは左腕の延長線上にあり、ほぼオンプレーンです。左腕は真っすぐ、左手首も真っすぐですので、この時点でフェースはやや閉じていることになります。

切り返し~インパクト

【Point】両足が浮くほどの地面反力を使っている(写真右)

切り返しでは手元がグッと下がるため、シャフトが垂れることはない。インパクト直前の写真を見ると、クラブにかかる遠心力と体の引っ張り合う関係がよくできています。左のお尻がしっかりと引かれていて、クラブはオンプレーンを保ったまま前方へ加速。このポジションにクラブがくれば、ボールが曲がることはあまり考えられません。インパクト後を見ると両足が少し浮いていますが、これは地面反力を強く使っている証拠。ヘッドの“最後のもうひと加速”を生み出します。

フォロースルー~フィニッシュ

フォローではフェースが地面を向いており、アームローテーションが入ることがよくわかります。フィニッシュではシャフトがターゲット方向を向くほど肩が深く回っていますが、これは一般人の可動域ではとても成し得ない動き。アマチュアがマネるのは難しいでしょう。

ココを比べてみよう!

山下美夢有プロ(写真左)と岩井千怜プロ(写真右)

フォローでフェースターンを抑えた千怜プロと比べると、山下プロのほうがフェースを返しているのがわかる。とはいえ、手でこねているのではなく、あくまで「自然な範囲で」だから曲がらない。

【竹田麗央プロ】加速のテクニックが集約されたパワフルスイングが持ち味

アドレス~テークバック

【Point】ヘッドが手元よりも外へ向かう(写真右)

とても自然体で体のどこにもリキみがなく、すぐにでも動き出せそうなアドレス。上体の前傾は浅く、手元はやや高い位置からスタートします。テークバックでは腕のローテーションや手首の動きは抑えられていますが、手元よりもヘッドのほうが外側を通っている。この動き出しをすると、切り返しでヘッドをループさせられるので、スイングのエネルギーをより増幅させることができます。

バックスイング~トップ

【Point】トップに到達するころには体の沈み込みがはじまっている(写真右)

左腕が地面とほぼ平行になったタイミングでシャフトがかなり立ってくるのは、ヘッドの重さをしっかりと手のなかのテコで支えながら、バックスイングしているため。トップへ向かいながら、徐々にヒザが曲がって体の“沈み込み”が発生。静かではありますが、この時点で切り返しがはじまっていると考えてよいでしょう。トップでシャフトが地面と平行になったタイミングで沈み込みはピークを迎え、すでに左足に荷重がかかりはじめています。

切り返し~インパクト

【Point】すさまじい捻転差(写真左)

注目してほしいのは、左腕が地面と平行になったときの上半身と下半身の捻転差です。両腕が右サイドにあるにもかかわらず、骨盤はすでにターゲット方向へ向きはじめています。これだけの捻転差を作ると上半身の軸が崩れてしまうことがありますが、竹田プロの場合はそこに「体幹の強さ」が加わり、力強さと安定感をキープ。インパクト直前ではまだ手首にタメが残っていて、まるで男子プロのスイングを見ているかのようです。

骨盤は完全にターゲット側を向き、右腕のヒジはやや曲がっているので、インパクト時に手元はハンドファースト気味になり、ローテーションが抑えられてフェースの動きが安定するでしょう。

フォロースルー

フォローでのヘッドの動きを見ると、山下プロ同様、ナチュラルなローテーションがされています。これは、積極的にクラブを動かしていく明愛プロとは対極的な動き。フィニッシュに向かう途中でもクラブの遠心力と体の引っ張り合いを継続しているので、前傾がキープされる時間が長くなり、クラブの挙動が安定する。これも、打球の方向性アップにつながっています。

ココを比べてみよう!

竹田プロと千怜プロは、フェースの使い方が似ているが、竹田プロのほうが自然なリリースが行なわれていてヘッドスピードを稼げている。

いかがでしたか。4選手のスイングをぜひ参考にてしてください!

解説=石井秀昌
●いしい・ひでまさ/1989年生まれ、埼玉県出身。学生時代にティーチングプロライセンスを取得し、いち早く初心者専用ゴルフスクールの立ち上げなどに携わった。インスタグラムのフォロワー数は4万人を超える。恵比寿のインドアゴルフスクール「Bforcegolf academy」代表。

岩井明愛
●いわい・あきえ/2002年生まれ、埼玉県出身。161cm。双子の岩井姉妹の姉。妹とともにプロ入りし、23年の「KKT杯バンテリンレディス」で初優勝。以後、着実に勝利数を重ね、2シーズンで6勝をあげている。Honda所属。

岩井千怜
●いわい・ちさと/2002年生まれ、埼玉県出身。162cm。ジュニアのころから天才双子姉妹としてその名をとどろかせ、21年にプロ入り。ツアー通算7勝。姉妹でアメリ
カのQT(予選会)を突破し、米女子ツアーに参戦 。Honda所属。

山下美夢有
●やました・みゆう/2001年生まれ、大阪府出身。150cm。小柄な選手だが、ショットの精度はさながら“マシン”のよう。JLPGAツアーでは通算13勝をあげており、パリ五輪での活躍も注目されるなど、紛れもなく日本を代表する選手のひとり。

竹田麗央
●たけだ・りお/2003年生まれ、熊本県出身。166cm。22年プロ入り。昨シーズン一気に8勝をあげ年間女王に。ダイナミックなドライバーショットの平均飛距離は260ヤード以上。アメリカで戦ううえでも大きな強みだ。ヤマエグループHD所属。

写真=ゲーリー小林
撮影トーナメント=ニチレイレディス

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