ゴルフに“統一球”がないのはなぜなのか?その理由を考察してみた
ゴルフをしない近しい友人から、ある質問をされた。「なぜプロのゴルフでは統一球がないの?異なる種類のボールで“一番飛んだ”って言われてもピンとこない」
【関連記事】原英莉花のフォローのフェースに注目!どこを向いているかで球筋を操作できる
ゴルフには統一球がないのはなぜ?
長年、ゴルフを専門に取材してきた筆者にとっては、各選手が自分に合ったブランド、自分の好きな種類のボールを使用することは当然だと思っていたので、即答できずにいた。そこで、今回は自らの考えも整理する意味で、ゴルフとボールのスポーツにおける性格を分析してみた。あくまでも筆者個人の考えなので、読者の皆さんの指摘があれば、ぜひ同欄で共有したい。
ゴルフ以外のメジャーな球技では、試合で使用されるボールは統一されている。野球、サッカー、バスケットボール、テニス、バレーボール、ラグビー、ハドミントン(*ボールではなくシャトルだが)と、五輪でも採用されている主な競技でボールは1種類だ。ところが、メジャーな球技であるはずのゴルフでは、統一球はない。厳格な製造基準はあるものの、多くのメーカーからさまざまな種類のボールが製造販売されており、試合でも多くのブランドのボールが見られる。ゴルフは直接相手とボールを打ち合う競技ではないので、個人競技だとしてもボールを打ち合うテニスなどともフォーマットが異なる。
球技ではないスポーツでゴルフに似ているものとすれば、陸上競技やF1などのモータースポーツが近い。決められた長さのコースを誰よりも早く完走することを目指す陸上競技やF1は、決められたコースを最小スコアでホールアウトするゴルフと競技の性格が似ている。
従って、球技として捉えられるゴルフのボールは、陸上でいうシューズや、F1でいうタイヤやエンジンとして捉えるべきなのかもしれない。厳しい製造・性能規制が設けられている中で、多くのメーカーが製品を作って提供するという部分が、初速やサイズなど規制の多いゴルフボールに似ている。たまたま道具の一つがボールであるため球技に捉えられるが、その本質は相手と対戦するための野球ボールやテニスポーツとは異なる。“ゴルフは球技ではない“と言っても過言ではないかと考える。ひとまず、ゴルフボールに関しては、こんな結論を得た。
そんなことを考えながら「ファーマーズインシュランスオープン」を取材していると、ブリヂストンやナイキでボールの開発を担当していたロック石井氏(石井秀幸氏)に遭遇した。石井氏はすでに引退はしているものの、2028年からのUSGAによる大幅なゴルフボールの規制作りをアドバイスするために、2023年までUSGAのアドバイザーを務めていた。
「詳細までは言えませんが、ボールのコアを柔らかくすることと、ディンプルの構造規制が主な課題でした。飛ばなくするための規制なので、メーカーが持つ特許にもあまり干渉しませんね。でも大変なルール変更なので、選手は対応が大変だと思います」
規制はさらに厳しくなるが、そんな中でどんな魅力的なボールが登場するのか、一ユーザーとしてはそれも楽しみだ。
フォトグラファー 田辺安啓 (通称JJ)
●たなべ・やすひろ/1972年生まれ、福井県出身。ニューヨーク在住。ウェストバージニア大学卒業後、ゴルフコース、テレビ局勤務を経験し、ゴルフを専門とするフォトグラファーに転身。ツアーのみならず、コースやゴルフ業界全般に関わる取材も行なっている。
【あわせて読みたい】
人気女子プロの“バッグの中”は何が入ってる?ラウンド中の勝みなみに突撃!
「7番アイアンで200ヤードも飛ぶ」ってマジ!?“飛距離”に特化したアイアン4選
7番ウッドを選ぶ時の「4つのポイント」!最新15モデルを試打解説