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クラブのセッティング、難しく考えてない?クラブごとに振りやすさを求めてOK!
ゴルフはスポーツの中でも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。
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「振り感合わせ」は本当に正義なのか?
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グリップエンドにカウンターバランスをつければ、重心が手元に移動し、トップライトになって振りやすくなる。反対にウエイトをヘッド近辺につければ、トップヘビーになって力感が出てくる。
ヘッドを削ってバランスを合わせるのは論外だが、ウエイト付加の位置によって振り感をカスタマイズできることは覚えておきたい。
スチールシャフトのドライバーをDIYしてみた
今でも意外と評価が高い2007年製のドライバーヘッドがあったので、打ってみたくなったが、カーボンシャフトは高価。しかし、ドライバー用のスチールシャフトを自分で挿せば2000円台で済むことを知り、DIY気分で組み立ててみることにしました。
いま使っているカーボンシャフトのドライバーが45.5インチ、304グラム、バランスはD3.1。スチールシャフトのドライバーはシャフト重量が重いため短尺で組むのがよいといわれるが、シャフトカットせずに組み上げました。
結果、365グラム、バランスE4.1のやや重ドライバーが完成。テークバックしてみると少し重たく感じたので、前号で説明したように、グリップエンドにカウンターバランスを当てて重心点を手元方向に移動させ、トップライト(手元側が重い)にして振り感を軽くしてみることにしました。
粘土をグリップエンドに10、15、20、25、30グラム……と重量を変えながら貼りつけ、振りやすさの変化をチェック。かなり感覚的ですが、50グラムくらいにするとカーボンシャフトに近い感覚でテークバックができることがわかり、バランスを測ってみるとD2.9でした。「感覚合わせ」にも関わらず、バランス的にもいいところに収まっていて、バランスもひとつの基準としては有効性があるのかもしれません。
最近、スプレー式のパーツクリーナーを使い、グリップを簡単に抜くワザをものにしたので、早速グリップを抜いて、スチールシャフトのバットエンド内側に50グラムほどのウエイトを仕込み再度グリップを装着。結果、総重量が415グラムになって、ドライバーにしては重たいが、粘土でシミュレーションしたとおり比較的ラクに振り上げられます。
実際に打ってみると問題なく打てますが、サンドウェッジほどの重量はさすがに重たく感じます。しかし、切り返しからのフォワードスイングでは、スイングに重力を利用することができるため、逆にもっとヘッド側が重いほうが振りやすくなると考えました。
テニスラケットではハードヒッターがトップライトを好むと前号で言いましたが、これは咄嗟の反応が必要なネットプレーも加味しての話であって、つねに重力を使えるゴルフスイングでは慣性モーメントの大きなトップヘビー(先端側が重い)のほうがいいのかもしれません。
そこで、再度グリップを外してカウンターウエイトを取り除き、トップヘビーの最初の状態(総重量は365グラム、バランスE4・1)に戻してみました。すると、適度なハンマーバランスとなって重力を利用して加速が容易に。案の定ヘッドが効いて、シャフトのしなりを使った力感のあるスイングができました。「軽いラケットをトップヘビーにすると軌道を安定させられる」と言いましたが、まさにそれです。
ここでよく考えてみると、使用中のカーボンシャフトのドライバーを基準にし、それに合わせようとしたわけですが、そもそもドライバーのバランスD2やD3などは標準的なバランスに合わせて出荷されているだけで、それに何か根拠があるわけではないのでは、と思ったのです。スチールシャフトという別材質の物を挿しているのに、それでバランスをD3あたりに合わせようとしたこと自体が正しかったのかどうか。さらにヘッドに鉛をつけて、もっとトップヘビーにすることも考えましたが、「これ以上の重量増はしない」ということで、スチールシャフトを挿した素の状態のバランスE4・1で決着させました。
クラブごとに振りやすさを求めていい!?
話は変わりますが、3番アイアンの一番手上のクラブとして、同じメーカーの中空構造のアイアン型UT(18度)の中古を購入したのですが、3番アイアンとバランスはほぼ同じでも振り感が軽く、打音は金属的で別ものでした。そこで、ここでもバランスの常識は無視して、ヘッドのバックフェースに鉛を6グラムぶん貼ることに。
結果、バランスはD2からD5・4にはなってしまったものの、打音もソリッドなものに改善され、振り感もハンマーウエイトになったことで、ヘッドの存在を感じながら打てるように激変しました。
これも「可能なかぎり同じバランスで整えたい」というこれまでの常識からは外れたものですが、振り感を数値でコントロールするのはミイラ取りがミイラになっている状態、さらにはもしかすると我々ユーザーサイドだけでなくメーカー側もバランスにこだわりすぎて、クラブの設計の自由度を失うようなことになっているのかもしれません。
私たちの脳は柔軟で、ドライバーを持てばドライバーの、アイアンを持てばアイアンのモードに自然とスイッチが切り替わるもの。つながりなどは考えず、クラブごとに自由にセッティングを詰めてもいいのでは、と今回の経験を得て、個人的には割り切って考えるようになりました。
みなさんもバランスなどスペックにとらわれすぎず、ご一考されていかがでしょうか?
いかがでしたか? 自分に合ったクラブ調整を楽しんでみてください!
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文・イラスト=サンドラー博士
●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。
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