ヘッドスピード40m/sでも「240ヤード」飛ばすテク!ポイントは“落下角”
一般アマチュアと女子プロのドライバーのHS(以下・ヘッドスピード)は「40m/秒前後」と同じなのに、飛距離は20ヤード以上もの差が出る。
その違いが何かを石井忍プロコーチに聞いてみると、弾道データをもとに驚くべき事実を教えてくれた!
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なぜ、女子プロみたいに飛ばないの?
「僕が弾道計測器の数値で注目し、選手にも理想値に近づけるように指導しているのは“ランディングアングル”(落下角)で、HS40前後がもっとも飛ばす弾道を手に入れるには無視できない数値になります。コーチをしている手束雅選手がちょうど、HSが40前半なので彼女のデータを計測して詳しく解説、レッスンしましょう」と石井。
たしかに、弾道計測器のデータ内には「落下角」が表示されているが、気にしたことはほぼないだろう。ところが女子プロとアマチュアの飛距離差が、ここにあることがわかっていく。
手束には普段どおりに打ってもらい、アマチュアのデータは、エースゴルフクラブに入会したての生徒さんの計測値を拝借した
落下角「35度前後」の“ソフトランディング”がいちばん飛ぶ!
ポイントとなる「35度前後」の落下角でランディングしていった手束の飛距離は、ランも24.2ヤードと伸びて240ヤードを超えた。
スピン量が3000回転入り、しっかり打球が高く上がったことも見逃せない
キャリーとランのバランスが大事!
上が手束選手の計測データ。HS40・7で240ヤードとうらやむ飛距離を出した。彼女のデータを見ると、計測値に詳しい人は「スピン量が多すぎるのでは?」と思うだろう。しかし、石井は「彼女のHSで2700回転未満は少なすぎ。飛距離ロスの原因になってしまいます」といい、上の表を書いてくれた。
「キャリーとランのバランスが大事で、そのバランスが崩れると飛距離ロスの原因が発生します。HS40前後のベストは、キャリー210/ラン20ヤードのトータル230ヤードが目安で、“高打ち出し・ロースピン”が正解ですが、スピン”少”は3000回転前後で十分ロースピン、適正なスピン量になります」
そして、この“HS40前後の適正スピン”が、アマチュアが目指してほしい飛び弾道のランディングアングルへとつながっていく。
ハイスピン&ハードランティング
ハイスピンで打球は高く上がったが弾道に伸びがなく、落下角もハードすぎる。
たったの「2.6ヤード」のランは、ラウンド中だと「落ちたところの地面が受けていた?やわらかかった?」と思うことがあるが、飛ばない弾道だったのが真相かも!?
低弾道でもランは意外と伸びない!
こちらのデータにも驚いた。打ち出しが低く、落下角もソフトすぎるが「この弾道はランが伸びる」と思いきや、ランの距離は20 ヤード未満(19ヤード)!
落下角35 度前後のほうがランは伸び、トータル飛距離も伸びるのか!
単にキャリーを増やすだけではダメ!
「手束選手とアマチュアのデータを比較するとキャリーが大きく違います。そこもポイントではありますが、ランの違いにも注目してください。女子プロはランで飛距離を稼げるのです」
石井の解説どおり、手束選手のデータはキャリーだけでなくランもアマチュアデータより伸びているが、その決め手となるのがランティングアングルなのだ。
「落下角は上から落ちるのがハードランティング、低い角度で落下していくのがソフトランディングになります。目指すのは後者で“落下角35度前後”のソフトランディング。すると、HS40前後でも230ヤード以上飛ばせます」
スピン量2700回転未満はハードヒッターの適正値。HS40前後なら「3000回転はOK!」という認識にあらためよう。
意図的なアッパーブローはミスのもと
「35度前後の落下角を作り出すには、アッパーブローでのインパクトは不可欠です」と石井。ただし、それは意図的に作り出すものではないともいう。正しい作り方は左肩からヘッドまでを一直線にするインパクトで、シャフトのしなり戻りを使ったアッパーでヒットする。「これも数値でいえば“3度アッパー”が理想です」。
その「一直線」の作り方も切り返しからインパクトまでのシークエンス(一連動作)が大切で、下半身から上半身、クラブの順で動かすことで正しい軌道や入射角、打点が安定する。トップから動かす順番を意識しながら一直線を作ろう。
スイングをアッパーにするとヘッドが早く落ちてダフったり、ボールに届かずトップしてしまう
トップからインパクトまでのシークエンスは「脚→腰→胸→腕→シャフト→ヘッド」の順
インパクトまでに動かす順序が大切。
順序が反対になると、クラブが外や上から入ってしまい、飛ぶ落下角が作り出せない
肩からヘッドまでを一直線にするイメージ「シャフトのしなり戻り」でアッパーを作る
ヘッドをかち上げるのではなく「一直線」のイメージで、しなり戻るシャフトでアッパーブローを作り出す
スクエアグリップの人は「体の真ん中で一直線」でいいが、フックグリップの人は「体の左寄りで一直線」を作る。
これはハンマーでモノを強く叩くときと同じ。ハンマーをフックグリップのように左手を上からかぶせて握ったときは、体の中心で叩いても力を出し切れない(×)が、左手を体の左寄りにすると強く叩ける
原因はロフト不足かも!?
近ごろはドライバーもボールもロースピン化が進んでいるが「プロ並みにスピン量が減った」とよろこぶ一方で、飛距離は実際に伸びているだろうか?前述したようにHS40前後は、スピン量2700 回転未満はロースピンすぎる。その解決方法として「スピンを増やすのにダウンブローでロフトを立てて打つのは絶対にNG !」と石井。
プロ、アマチュア問わずインパクトロフト(または、ダイナミックロフト)の理想値は、設定されたロフトよりも3から4度寝て当たっているので、ドライバーでのディロフト(ロフトが立つ)はご法度だ。
スピンを増やす、打ち出しを上げる、落下角を適正にするのも“ロフトを増やす”がいちばん簡単で間違いない。「3000回転までスピンが増えないドライバーはオーバースペックです。弾道調整機能つきでしたら、ロフトを増やして打ってみてください。スイングを変えなくても飛ぶ弾道に変わる可能性が高いです」。これも試してみる価値は大いにありそうだ。
〇:アッパーブローも手伝って、設定ロフトよりも3、4度寝て当たるのがインパクトロフトの理想値。10度のドライバーなら13度くらいでヒットするイメージをもっても○
✕:設定ロフトより立って当たるのも×だが、アタックアングル(入射角)が上から入り、インパクトロフトがさらに立ってしまうのはもっとダメ!
石井にスイングは変えずに、ロフト9.5度とロフトを10.5度に寝かせたドライバーをHS40前後で打ってもらった
ロフト9.5度は、あきらかな打ち出し角とスピン不足で、キャリー・トータルともHS 40 前後によくある飛ばない飛距離に。弾道が低いのにランも伸びていない。
ロフトを1度寝かせた10.5度は、適正なスピン量で落下角も◎。ランも9.5度よりも10 ヤード近く伸びて230ヤードを超えた
いかがでしたか? 石井プロのレッスンを参考にして、落下角度を意識した練習をしてみてください!
計測モデル=手束 雅
●てづか・みやび/2000年生まれ、徳島県出身。22年日本女子オープン出場やマイナビネクストヒロインゴルフツアーでの優勝経験のある選手。石井忍に指導を受け、次なる目標のプロテスト合格に向けて邁進中。
レッスン=石井忍
●いしい・しのぶ/1974年生まれ、千葉県出身。プロゴルファーから指導者への道と進み、エースゴルフクラブを主宰。ツアープロコーチとしては政田夢乃や都玲華らを指導。ほかにもトーナメント解説者、ジュニア育成などゴルフ界で幅広く活躍している。
写真=相田克己
協力=エースゴルフクラブ 千葉
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