「シャケの一生のように…」ベテラン女子プロの藤田さいきが語る!

ツアーで活躍しているプロたちは誰もが自分のゴルフをよりよいものにしていくためにさまざまなことを考え、走り続けている。

どんなことを考え、どのようにゴルフと向き合っているのか。インタビューをとおして、その姿を探っていく。

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「この時季は体力がなかなか回復しなくて」

「(大山)志保さんと約束があるのでしばらくやめられません(笑)」

今季7月いっぱいで20戦を終えたJLPGAツアー。優勝者の年齢を見ると、現在、30代の選手は鈴木愛だけ。その鈴木も優勝時は29歳だった。ベテランの奮起を期待するなか、好調を維持しているのが日本人選手最年長の藤田さいき。

彼女が今も第一線で戦い続けていられる秘けつや、今後どのようにゴルフと向き合っていくのかについて聞いてみた。

──今季ここまでの手応えは?

藤田:それほど調子がよいというわけではないんです。ただ、少しずつアプローチとパットは向上していて、ショットも兄(コーチの勇樹さん)にちゃんと見てもらうようになってから、ブレの範囲が狭まりコントロールできるようになったかなと。その結果、今のところうまくまとめられている感じですね。

──今、とくに気をつけていることはありますか?

藤田:体調管理です。オフの合宿中は、トレーナーさんに朝昼晩と食事を管理してもらっていました。そこまでしても”つねに絶好調”とまではいきませんね。とくに夏場は、体力回復に時間がかかるので、たとえば消化の悪いラーメンなんかは食べられません。大好きなんですけど(笑)。”食”へのブレーキは大きなストレスですが、上質なプレーをするためには仕方がないので、ここ数年トレーナーさんや主人に協力してもらって一生懸命やってきました。体が元気じゃないと何もできませんから。

──今季、具体的な目標を立てていますか?

藤田:出場する試合はつねに優勝を目指す、というのが目標です。ただ現実的にはまず、なるべく早めにシードを決めて、気持ちに余裕を作ってから、そのときに合った課題をクリアしていく感じです。

──今の位置だったら、シード確定にもみえますが(7月末の時点でメルセデスランキング17位)

藤田:そうですね。まだ安心はできませんが、これからはまず夏バテを秋へ残さないようにしていきます。

──ゴルフを続けるモチベーションになっていることは?

藤田:まだ自分自身、ゴルフがうまくなる伸びしろを感じることですね。あとは海外メジャー出場のチャンスがあれば、今度は上位で戦ってみたい。それと(大山)志保さんが”さいきちゃんと一緒にコースを回る夢をみたよ”といってくれたので、志保さんが戻ってくるまではガンバっていないといけないし(笑)

──クラブを置くのはまだ先になりそうですね(笑)。そういえば先日、桑木志帆選手に話を聞いたときに「私は40歳までは現役を続けたいのですが、できればさいきさんみたいに第一線に居続けたい」といっていました。若手は藤田選手の背中を見ていますよ。

藤田:えー、40歳まで?すごいなあ。私は当初こんなにゴルフを長くやるつもりはなかったので、今の自分にびっくりしています。でも、じつは最近どんどんゴルフが好きになっているんですよ(笑)。ケガとかで体が動かなくなったら仕方ないですが、この先もゴルフに関わり続けていこうとは思っています。もうツアーでは私より上は全美貞さんくらいしかいません。彼女は今でもしっかりトレーニングをしていますし、とても上手に戦っていますよ。「疲れませんか?」と聞いてみたら「適当にやってるから(笑)」って。

「”釣り”と出会ってメンタルが安定してきた」

「最近どんどんゴルフが好きになっていくんです」

──気分転換はどんなことを?

藤田:釣りです!今週もお仕事で太刀魚を釣りにいってきます。先週も大会はありましたが、しっかりサバやイカを釣ってからコースに入りました(笑)

──釣りとゴルフって共通点が多いですよね?

藤田:似てますね。前日から天気を見て、潮見て、風を見て、道具を選ぶ。当日はどこに船をつけてどこに投げるのか、落としどころはどこにするか、などを考えたりするところは、まさにゴルフだなと。それと何より、釣れるまでひたすらガマンなところは、バーディがこなくても流れがくるまでガマン!とまったく一緒ですね。釣りをはじめてから、メンタルコントロールがうまくなってきた気がするんです。そうか、釣りはメンタルのトレーニングなんだ、って(笑)

──楽しいトレーニングですね(笑)。さて、最後に「藤田さいきのゴルフ」をひと言でいうなら?

藤田:私のゴルフのスタイルというより、私のゴルフ人生のこれまでとこれからを、せっかく先ほど釣りの話をしたので魚でたとえて表現すると”シャケの一生”のようだといえます。

──シャケですか!?

藤田:あ、鮭(サケ)ともいいますけど、私は”シャケ”といいます(笑)。それでシャケは川で生まれて稚魚になると海を目指します。海で何年か過ごして大きく育つと、また生まれた川に戻り、産卵をして生涯を終えますが、卵を産むことで新しい命にバトンタッチするんです。私も生まれてからゴルフをはじめて、しばらくして海を目指しました。海にたどり着いて気持ちよく泳いでいたら、病気やケガ、シード落ちなどを経験し、1度深い海の底に落ちたんです。

──興味深いお話ですね。

藤田:でもそこからはい上がって、いま再び生まれた川に戻ろうとしている。シャケが産卵をするため川の流れに逆らって、また元の場所に戻ろうとする姿は、体力やいろいろな衰えに対して、それに抗おうとしている私の今の姿そのもの。これまで私の通ってきた道が、将来のゴルフ界や私のプレーや生き方に共感してくれる、たとえば桑木さんのような若い選手たちの役に立ってくれたら、それが私の”産卵”にあたるのかなと思っているんです。

自身の技術にまだまだ伸びしろを感じるという。
この好調が続けば後半戦での優勝は十分ありそうだ

はじめて話すはずなのに、まったく垣根を感じさせないその人柄に、インタビューのあと、なんだかうれしい気持ちになってきた。彼女は、試合のあった日曜の夜には自身のSNSに必ず、関わってくれた人や応援してくれた人にそれぞれ感謝の言葉を述べる。また、優勝した選手へのお祝いの言葉も忘れない。

そして人柄だけではなく、藤田選手自身に忍び寄る”衰え”に打ち勝つための妥協なき振る舞いに、多くの賞賛が集まるのだろう。

「今夏の優勝はありそうですか?」とたずねた。すると「暑くて無理ですよ〜」と笑っていた。

シャケは今どのあたりを泳いでいるのだろう。川を上っているとしたらゴールが近づいていることになってしまうが、じつはまだ海にいるのだとしたら……。

シャケの挑戦はこれからも続く。

いかがでしたか? 藤田プロのこれからの活躍にもぜひ期待しましょう!

藤田さいき
●ふじた・さいき/1985年生まれ、静岡県出身。2006年プロミスレディスでツアー初優勝。その後、2011年までに国内メジャーを含む5勝をあげる。以降はシード権に届かない年もあったが、2022年大王製紙エリエールレディスで11年ぶりに優勝。2024年シーズンは出場した試合はすべて予選通過、メルセデスランキングは17位(7月末時点)と安定した成績を残している。JBS所属。

文=ひよこきんぎょ
写真=ゲーリー小林
撮影トーナメント=ニチレイレディス

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