菅沼菜々のインパクトの形を解説!「両足で地面を蹴る…」
ズラリと並べた女子プロ50人のインパクト写真。眺めるだけでも楽しいが、その1枚に隠された上達のヒントをすぐれた観察眼をもつ横田英治が解説。あなたが目指す理想の形は、あの選手のインパクトかも!
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青木瀬令奈 3大チェックポイントは「左足、右ヒジ、頭」!
まずは、インパクトで見てほしいポイントを紹介します。「左足、右ヒジ、頭」の3カ所、「左足は体重がしっかり乗っているか」「右ヒジは体の近くにあるか」「頭は右に残っているか」を見てください。これらができていると、下半身は先行して開いても胸は開かない。ボールを強く押せる形ができるので、この3大ポイントはマストでチェックしましょう。
山下美夢有 全身でボールを打っている
写真だけを見て「この子、完璧だわ!」と声を上げたインパクト。前出の3大ポイントを含めて非の打ちどころがありません。パワーを解放し、ボールに強く伝えるだけでなく、力が凝縮されたゴム毬のような全が、ひとつの塊としてボールに向かっている印象を受けます。実際は胴体から手足がはえてクラブを持っていますが、ひと塊で動くスイングは精度も高い。選手名を聞いて「年間女王を獲るわけだわ」と納得しました。
馬場咲希 ポテンシャルが高いなら全部を出し切る必要はない
右ヒジが体から少し離れているなどやや粗削りな部分もありますが、まだ高校生なんですよね。成長途中、発展途上で、今以上に飛距離も精度も上がる可能性は大です。馬場選手のようにツアートップクラスの恵まれた体格をもった選手は、小柄な山下選手ほど理想形にしなくても長身や筋力で補えるので、現状ではこれがベストなのかもしれません。ポテンシャルが高い人は、すべてを出し切ってしまうと逆にスイングが悪くなる。みなさんもそんな心当たりがありませんか?
原英莉花 低く長いインパクトゾーンは左ワキの締まりも大事
ヘッドはインパクト後でもこの位置。低く長いインパクトゾーンでボールをとらえています。これは、左ワキが締まっていないとできない形ですね。少し右ツマ先に体重がかかりすぎているので、もっと左足に乗っていけるといいですが、原選手は170センチを超える長身に長い手足と、体格のよさは折り紙つき。馬場選手と同様に、すべてを理想形にしないほうが好結果も成績も出せる、という見方もできます。
2023 Impact Collection
変則でもビジネスゾーンはみな同じ、を証明
金田選手のスイングは個性的で、本人もそれを自覚しているそうです。しかし、インパクトの形はトッププロとまったく同じ。インパクト前後は変則でも、ビジネスゾーンでは理想形にアジャストする能力に長けていて、左ワキからヘッドまでが一直線にそろい、左のカベがきちんとできている。ビジネスゾーンさえよければ細身でも飛ぶし、方向性もよくなることを証明していますね。
地面反力を使うなら上体はできるだけリラックス
3大ポイントに加えて、両足で地面を蹴る地面反力を使って飛ばすインパクトです。菅沼選手は愛嬌たっぷりの仕草が人気ですが、トレーニングをしっかり行なっていて筋力がある。そのパワーで地面反力を使って打つなら、上体はもっと脱力するといいですね。もっているものを全部使っちゃいけないのがゴルフといいましたが、下半身を強く使うなら上体はできるだけリラックスさせるというバランスが大切です。
すごく似ているようで調子の違いが出ているふたり
このふたりの形はそっくりですよね。でも、よく見ると手元の高さが若干異なり、川﨑選手のほうが手元とヘッドが低いポジションにあります。昨年後半から調子を落としている西郷選手は、まだ少し不安があるのでしょう。ボールを上げたい気持ちがあるせいか、手元がやや浮いてしまっている。フェースやボールをコントロールするなら、川﨑選手のインパクトのほうが理想形です。プロレベルだとこの程度の違いで調子の差が出てしまいますが、本当にちょっとの違い。西郷選手が完全復活する日も近いと思います。
質のいいドローヒッターの鏡
上田選手との付き合いは長く、見慣れたインパクトですが、今の桃子はドローが狙ったところに打てるストレート弾道だと感じているはずです。持ち球のドローボールは進化し続けていて、フェースターンは昔ほどきつくない。クラブの軌道でドローを打つので、精度が高く安定感も出る。また、頭とクラブヘッドを遠ざけることでエネルギーを増やすスイングの代表格でもあります。
体の回転を増やせばスピン量も増える
50選手のなかで、もっとも体の回転量が多かったのが吉田選手です。まだインパクト前なのに腰は完全に目標を向いている。肩や胸まで開いているように見えますが、腰の回転量と比較すると適切なラグができています。体の回転量が多いと、ボールにタテ回転のスピンが多く入ります。固いグリーンでも止まるし、端に切ったピンも狙える。超タフなコースセッティングだった、サロンパスカップを制したのも頷けますね。
ダイナミックな姉 大人しく見える妹
姉妹で優勝、しかも双子と話題の岩井ツインズですが、プロ入り前は姉の明愛選手のほうが飛んでいて成績もよかった。そんなふたりは双子だけあって体格はほぼ一緒。「なのに、なぜ私は姉より飛ばないのか」と悩んでいた千怜選手は、持ち前の長所である理想とされる形を崩さずにスピードアップを図り、成功したそうです。ツアーという毎週、数日間行なわれる試合では、理想形のほうが波やムラがない。これがプロ1年目の差だったと思います。しかし、明愛選手のような躍動感に溢れたスイングがダメということではありません。とくにアマチュアはもっと振れるのに振れていない人が多い。ダイナミックに見えるインパクトを目指すのも、レベルアップの過程のひとつです!
いかがでしたか? 女子プロインパクトコレクションでした。ぜひ理想の形を見つけてみてください。
解説=横田英治
●よこた・えいじ/1971年生まれ、広島県出身。96年プロ入り後、卓越した知識と経験を活かし指導者の道を進む。多数のメディアにも出演し、現在は千葉県千葉市の「クラブハウス」の代表を務め、岸部桃子らツアープロやプロの卵、アマチュアを指導。
写真=ゲーリー小林
取材トーナメント=ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ
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