植竹希望、試合の練習で“優勝予告”していた「今週いける気がする」

ツアーで活躍しているプロたちは誰もが自分のゴルフを「よりよいもの」にしていくために様々なことを考え、走り続けている。「どんなこと」を考え、「どのように」ゴルフに向き合っているのか。インタビューをとおして、その姿を探っていく。 今回は、植竹希望プロです。

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スイングは感覚も理論も大事

――22年シーズンが終わりましたが、どういう1年でしたか?
植竹:KTT杯バンテリンレディスで初優勝できたことはとてもうれしかったのですが、終盤は予選落ちをすることもあって、まだ波がありました。
――優勝した試合を振り返るといかがですか?
植竹:一番頭に残った試合でもありますし、自分のプレーというよりは一緒にラウンドした吉田優利選手のプレーがすごく印象的でした。吉田選手はショートゲームがすごくうまくて、パー5のセカンドで2オンを果敢に狙いにいって、池に入ってしまってもパーで抑えたりと、とてもガマン強い。パットもすごく上手で、バーディもたくさん獲ってくるので怖い選手でした。そんな吉田選手と回るなかで、自分自身もいいプレーで戦えたのはよかったと思います。


――大会の前に優勝できそうな予感はありましたか?
植竹:私自身は覚えていないんですが、練習ラウンドのとき、キャディさんに「今週いける気がする」っていっていたらしいんです(笑)。気持ち的に勝てそうな予感があったみたいです。
――有言実行ですね!植竹:調子が特別よかったわけではありませんが、ボギーを打たないなど、ミスがあまり出なかったし、いい集中力でプレーができました。
――今年は2位になった惜しい試合も多かったですよね?
植竹:開幕2試合目の明治安田生命レディスは、2日目にトップに立っていたのに、最終日に逆転されて優勝を逃してしまったのはかなり悔しかったですね。NEC軽井沢72ゴルフトーナメントとニトリレディスはケガからの復帰明けで、まだ調子が万全ではない状態での2位でしたが、優勝した後で、シード獲得も決まっていたから気持ち的に雑念がなかった。いい緊張感で試合に挑めていました。


――シーズン後半、調子が悪かったのは何か原因が?
植竹:休みがあまりとれなかったからですかね……。練習を休むなど、体と頭の中をリセットする時間がありませんでした。それが原因のひとつだったと思います。
――オフ期間に入りましたが、どう過ごしていますか?
植竹:12月はトレーニングメインで、1月以降に合宿などに行く予定です。
――どのようなことに取り組みたいですか?
植竹:ここ4、5年、アプローチが一番の課題なので、少しでも克服したいと思っています。あとは、ショットの基礎をもう一度たたき入れ直して、1年間崩れない安定したショットを打てるようにしたいです。


――自身のプレーの持ち味は?
植竹:ティーショットの安定性と、アイアンのショットです。
――ショットが得意になったきっかけはありますか?
植竹:仲のいい同級生の男子プロに、ドローとフェードの打ち方を教えてもらってから得意になりました。
――小誌では、コーチがプロのスイングを解説する企画があるのですが、植竹選手のスイングを見せると、すごくきれいだとよくいわれます。スイングのきれいさについてはいかがですか?
植竹:スイングのきれいさでいえば、自分自身ではきれいではないと思っています。見栄えに迫力はあるかもしれませんが、粗はたくさんある。ですが、理にかなったスイングができていると思います。ドローボールを打ちたいのであれば、ドローボールを打つアドレスをしているか、スイングプレーンはどうかなど、理論や物理的な部分は意識しています。


――感覚派ではなく、理論派ですか?
植竹:感覚で振っているほうが大きいと思います。でも感覚ばかりに頼っていると、試合が続き、疲れなどが溜まったときに、体のバランスが崩れて、アドレスの向きや肩の開き具合などが変わってしまう。感覚だけだとその少しのズレに気づけなくなってしまうので、感覚と物理的な部分、たとえばトラックマン(弾道測定器)などで数値を測って、合わせていくのが大事だと思っています。

大山志保選手に憧れていたジュニア時代

――今までのゴルフ人生で、この人がいなかったら今の自分はいないなと思う人物はどなたですか?
植竹:たくさんいますが、一番は母ですね。子どものうちは、母に運転してもらわないとレッスンにも試合にも行けなかったから、母がいなかったらゴルフができていないと思います。一番応援してくれていますし、すごく感謝しています。もし私に子どもができて、同じことをしろといわれても絶対に無理ですね(笑)。マネできないです。


――今までゴルフを辞めたいと思ったことはありますか?
植竹:昔は父や母とケンカして「もうやらない!」となったことはありますが、結局は泣きながら続けました。プロになって3年目くらいまでも少ししんどかった時期がありましたけど、応援してくれる方々に「ガンバってね」と毎回いってもらえると、ガンバらなきゃって気持ちになりました。応援が一番の力になると思います。
――ゴルフを長く続けられているモチベーションは?
植竹:好きなのが大前提ですが、私はプロゴルファーとして活動し、ゴルフで食べているので、仕事という思いが強いです。
――ゴルファーとしての理想像はありますか?
植竹:「植竹希望みたいになりたい」とジュニアの子たちにいってもらえる選手になりたいです。誰かになりたいというよりは、オリジナルでいたいですね。


――植竹選手がジュニアのころに憧れていた選手はいますか?
植竹:大山志保選手です。一番好き。プロになってツアーで一緒にラウンドさせていただいたことがあるんですが、そのときにジュニアのころから好きです、とお伝えしたらすごくよろこんでくれました。たまたまですが、私がお世話になっていたゴルフ場が、大山選手が大学生のころに練習していたところで、共通点もあってうれしかったです。2006年に大山選手がフジサンケイレディスの最終ホールで、20メートル以上のロングパットを決めて優勝したんです。それをテレビで観ていたのですが、あのときのガッツポーズが今でも忘れられません。
――圧巻の1打でしたね。
植竹:フジサンケイの会場の川奈ホテルゴルフコースに行くたびに、大山選手のパットを思い出します(笑)。40歳を過ぎても現役なのも本当にすごいですし、私もそのくらい長くゴルフを続けられるようにガンバりたいです。


――植竹選手はメンタル面も強いイメージがありますが、いかがですか?
植竹:メンタルトレーナーさんにいわれたんですが、メンタルに強いや弱いはなく、脳の使い方がうまいかどうからしいです。運動神経みたいな感じ。それが集中力の切り替え方や持続時間の長さにつながっているので、その使い方をトレーニングしています。人間は1日で120分しか集中できないといわれていますが、最近は、1日中集中できるという研究データがアメリカで出たそうで、今はそれがすごく気になっています。
――勉強熱心なのですね。
植竹:ゴルフに関することであれば勉強できます(笑)
――では最後に2023年の目標とファンに向けて、ひと言お願いします。
植竹:目標は、全英女子と全米女子オープンに出場することです。国内ツアーでは3勝以上したいです。23年はドライバーの飛距離がかなり伸びる予定なので、迫力のあるティーショットをお見せできればと思っています!

いかがでしたか? これからも植竹プロの活躍から目が離せないですね!

Profile
植竹希望
●うえたけ・のぞみ/1998年生まれ、東京都出身。170cm。22年シーズンは、KKT杯バンテリンレディスでツアー初優勝を果たした。年間のトップ10入りは6回で、メルセデスポイントランキングは22位に入った。サーフビバレッジ所属。

写真=小林司、田中宏幸

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