正しい”切り返し”のカタチはどっち…!? スイング改造で覚えておくべきこと
スイング改造の上で、押さえておきたい大切なポイントを吉本巧コーチに教えてもらいました。
まずは最初に、改善すべきポイントとタイミングについて教えていただきました。
「スコアアップのために本当に必要か?」を考える
スイング改造に取り組む理由は「自分のスイングをプロと比較すると違うから」「ゴルフ仲間からの指摘」。最近は「ユーチューブでスイングやレッスンを観て」というのが多いですね。しかしこれらは、スコアがよくなることに重きを置いた改造ではなく、単に「見た目をよくしたい」というムダな改造です。
もちろん、プロのようにカッコよく振ることでスコアがよくなる場合もあります。でも、アマチュアはカッコ悪かったとしても、それがナイスショットを打てるいいクセやオリジナリティになっていることがある。たとえばオーバースイングも、必ずしも直す必要はなく〝直すよりも活かす〟指導をすることがよくあります。
スイング改造は、見た目はよくなったけど結果(スコア)が伴わない、時間や労力のムダにならないようにしたいですね。
レベル別:スイング改造が必要なとき
「スイング改造が必要か」は、スコアカードから判断することもできます。まずは、パット数を必ずつけてください。すると、パーオンの数がわかりますが、90切りを目指すならパーオンの数は4つ以上。85切りは80切りの前に立ちはだかる壁になりますが、18ホール中1/3の6つ以上。80切りの70台は半分の9ホール以上はパーオンがほしいので、目標未満だった場合はスイング改造が必要です。
また、スコアが悪いのはスイングが原因ではなく、アプローチやパットにあるのに、そこは見ずに「スイング改造をしないといけない!」と決めつけてしまうカン違いに注意。2パットペースの36を超える37パット以上は、アプローチが寄らない、短めのパットを何度も外してしまったなど、ショートゲームに難があることが多いので、スコアアップにはスイング改造よりもアプローチ・パットの練習や上達を優先すべきです
次に、「スイング改造」の際に注意してほしいことについて教えてもらいました。
手打ちはいいクセ!必要なクセ!
スイング改造が必要だと思ったときに、注意してほしいことがあります。どんな理論を取り入れるときも、手打ちの感覚をゼロにしないでください。理論上の動きや形にこだわりすぎて、腕やクラブを振らなくなると、どんなに正しい理論であっても、振りにくい、当たらないという現象が起こりやすくなる。「マネてみた、やってみたけどダメだった」と、すぐに諦めてしまうのは、このパターンがとても多いのです。
私は、手打ちは絶対にダメなクセだとはいいません。なぜならば、手打ちは腕やクラブを振る「いいクセ(必要な悪癖)」だからです。スイング改造に取り組むときは、どんな理論であっても手打ちを完全に取ることを考えてはダメ! 腕やクラブを振ることを残しつつ、目指す動きをマスターしていくことを強くオススメします。
体の回転を重視しすぎて振り遅れ
体の回転量を上げようとしても、腕を振ることをおろそかにするのは、振り遅れや体を開いて打つ練習をしているのと同じ。ムダなスイング改造になっている
同調性を高めようとして振れていない
腕と体の動きの同調性を高めようとして、一緒に動かすスイングは「振って当てる」目的から逸脱している。「同時ではなく、回転の量やスピードを上げた体についていくように、腕やクラブを積極的に振るのが正解です」(吉本)
次に「手首の動かし方」についてです。
手首を少し変えればスイングは大きく変わる!
スイング改造は時間をかければいいものではなく、すぐに効果を実感したいですよね。すぐに、意図した動きができる、長年の悪いクセが直るポイントは手首! 変なスイングになっているのは、手首に原因があるのです。
手首は「右横(右手甲側に折る)、左横(左手甲側に折る)親指側、小指側」の4方向に動きます。みなさんが改造に苦労するのは、動きの速いダウンスイングでしょうが、切り返し時にどの方向に手首を動かす(動いてしまう)かによって、スイングの良し悪しが決まってしまいます。なので、切り返し時の手首の動きさえ直せば、なんでも直るといっても過言ではありません。手首は誰でも動きや形を意識しやすい部分ですから簡単ですよね。早速、トライしてみてください。
手首の動かし方は順序も大事!
切り返し時に手首を「右横」(右手首でいえば甲側に折る)→「小指側」(手首の角度を伸ばしていく)の順に動かして振り下ろすと、軌道やフェース向き、軸や前傾角までよくなる。ちなみにトップでの手首の形は「作りやすい形でいいですよ。切り返しでこの手首の動きができていれば、手打ちでもオーバースイングでも70台で回れる。ボディターンができている人でもこの動きができてない人は、シングル級の腕前にはなれません」(吉本)
悪い手首の動きがスイング全体を変えてしまう!
左の写真は「左横→親指側」に動かしたパターン。タメができているように見えるが、吉本は「この形のままうまくボールに当たると思います? 当たらないから『当てるための修正本能』が働いてしまうのですが、それが頭が突っ込んだり伸び上がったりする動きを引き起こす原因になっているのです」
次は、悪い癖として語られがちな“カット軌道”について教えてもらいました。
カット軌道は悪癖なのか?
アウトサイド・インのカット軌道ですが、飛球線後方から見てハーフウェイダウンでのヘッドの位置が「頭の頂点とボールを結んだ線」よりも外(右)側だったら直しましょう。フェード系が持ち球の人はややカットにヘッドを入れますから、基準といわれる「首の付け根とボールを結んだ線」より少し外でもOK。ドロー系が打ちたい人でも許容範囲内です。
ヘッドが大きく外回りをしていたら、直し方は、切り返し時に手首を「右横→小指側」に動かすのは、カット軌道にかぎらず必須! そして、クラブをインから下ろす、フェースを閉じながらインパクトするためには、片手ずつの形を意識してください。左手は「招き猫」、右手は「パチンコのハンドルを回す」形を作って振り下ろすと、スライスしないスイングに変わります。
左手は「招き猫」右手は「パチンコ」の形で振り下ろす
左手の「招き猫」は、左手首が手のひら側に折れてフェース面が閉じる。右手の「パチンコ」は、小指側に動くことでヘッドが体から離れずインサイドから下りる。このふたつが組み合わさることで、ダウンスイングの軌道はフェースが開かずにクラブがインサイドから入るため、スライススイングが直る
次に、悪い癖として語られがちな“アーリーリリース”について教えてもらいました。
手首が早くほどけてしまうアーリーリリース
ダウンスイングで手首が早くほどけてしまうアーリーリリースも、切り返し時に手首を「右横→小指側」に動かすことでほどよいタメが作れるようになります。ただし、その前に腰が回っているかをチェックするのが先。上の写真は同じ手首の運動量でスイングしていますが、右はアーリーリリースに見える。しかし、左のように腰をきちんと回せばアーリーリリースには見えません。つまり、問題は手首ではなく腰の回転量なのです。
この欠点に気づかず、無理に手首でタメを作ろうとすると、前述した正しい手首の動きとは逆の「左横→親指側」に動いてしまう。ガンバってタメを作っているのに、飛ばない、右に飛ぶ、すくい打ってしまう人は、手首より腰の回転に要注意ですよ!
最後に、悪い癖として語られがちな“あおり打ち”について教えてもらいました。
あおり打ちを直すには?
あおり打ちは、直したほうがいいです。ティーアップするドライバーはまだしも、地面の上のボールをうまく打てない原因になりますからね。
あおり打ちというと頭の位置や軸の傾きに目が行きがちですが、飛球線後方からのヘッドの入り方もチェックしてください。体が伸び上がりながらインサイド軌道が強すぎるあおり打ちは、ヘッドが早く落っこちてしまう(写真右)ので即改造が必要。
ダフリが多発する人は、体が突っ込むなどでボールに近づいてダフるのではなく、あおっていることが原因になっているケースが多いのです。
「右横」&「小指側」の手首を作ったら形をキープしたままボールを打つ
あおり打ちも正しい手首の動きの崩壊が原因。これを直すには、バックスイングをとらずにトップからスイングをスタートし、「右横→小指側」に手首を動かす正しい形を作ったままボールを打つドリルがオススメ。手首の形をキープしたまま、腕→肩→腰の順で動かしてインパクトへ(〇)。
体の回転が止まってしまうのはNGだ(×)
トップでの両ヒジの間隔を広げずにヒット!
あおり打ちになる人は、トップでできた両ヒジの間隔がインパクトでは広くなってしまう(×)。トップでの間隔よりも狭くするとすくい打ってしまう動きが防げる(〇)
いかがでしたか? 吉本巧プロのレッスンを参考に、スイングを改造してみましょう。
レッスン=吉本巧
●よしもと・たくみ/1980年生まれ、兵庫県出身。14歳で米国フロリダに渡り、2000年に米国でプロの資格を取得。現在は、東京都の品川ゴルフアカデミーで多くのアマチュアをレッスンしている。
写真=田中宏幸
協力=取手桜が丘ゴルフクラブ(アコーディア・ゴルフ)