
柚月裕子さん、カノマタさんに会いに行く!セッティングを変えれば100切りできる!?
ゴルフを始めて約5年。人気作家・柚月裕子さんの目の前には「スコア100の壁」が立ちはだかっている。越えられそうで越えられないその壁を、どうすれば乗り越えられるのか!?
クラブセッティングにヒントを求め、カリスマクラブフィッター・カノマタを訪ねた。
実測飛距離は自己申告より10%~20%飛んでいた

まずは柚月さんの番手ごとの飛距離をひととおりヒアリングし、レンジで実際に打ってもらう。最近のミスの傾向や苦手な番手についてなど、カノマタに話しながら打つ柚月さんの様子は、悩んでいるようでどこか楽しげ。柚月さんが立派な「ゴルフ好き」であることが伝わってくる。
各番手の飛距離を計測器で測ってみると、ナイスショット時は自己申告よりも10%から20%ほど飛んでいることがわかった。「身体能力(戦闘能力)がとても高い。自己申告の飛距離に”合わせる”ためにスイングを加減しているので、そこでミスが生まれています。まずはもっと気持ちよく振り切っていきましょう」とカノマタ。そのアドバイスだけでも少しずつスイングがダイナミックになり、かつ精度も向上。「意識ひとつでここまで変わるものなんですね」と柚月さんは驚きを隠せないようであった。

各番手の飛距離を記録しながら、自己申告値と比較するカノマタ。100切りに必要な考え方として「番手選び」についてもアドバイス。「ライに対する判断も重要。“打ちたい飛距離”の番手ではなく、そのライから“確実に打てる”番手を選択することが大きなミスを防ぎます」

柚木さんのクラブセッティング
ウッド:ドライバー、5w、7w
ユーティリティ:5UT(ロフト23度)
アイアン・ウェッジ:#7~9、PW、AW、50度、56度、58度(バンカー専用)
立ちすぎたアイアンのロフトがミスショットを誘発している

「まずはしっかりと振る」というアドバイスを意識しただけで、柚月さんが打つボールの飛距離はどんどん伸びていき、表情も一段と晴れやかに。「100切りに必要な条件のひとつとして、セカンドショットの飛距離・精度が挙げられます。柚月さんの場合、飛距離は十分に足りているので問題は精度ですね。”精度”といっても、100切りにおいてはグリーンオンするというよりグリーンの”周り”まで運べれば問題ありません。柚月さんはセカンドショット以降で大きなミスをしてしまうことがあるとのことですが、その原因はクラブセッティングにあるかもしれません」
カノマタがいうには、とくにアイアンのロフトに問題があるとのこと。柚月さんのアイアンは比較的ロフトが立った男性用のモデル。7番アイアンで26度となっており、女性が打ってボールの高さを十分に稼ぐのはかなり難しいとのこと。それが原因で、さまざまなエラーが出てしまっているようだ。

ヘッドを操る感覚には秀でている柚月さん。ボールにコンタクトすることには長けているので、しっかりと振り切ることで“圧”をかけられれば、さらなる飛距離アップが望める

「自分が打ちこなせるロフトの限界値というものを初めて知り、目からウロコ。クラブセッティングをどのように変えればいいか教えてください!」と柚月さん。
クラブを「合わせれ」ば100切りどころか90切りもすぐにできる!

カノマタによれば、柚月さんのヘッドスピードで、アイアンでボールの高さをしっかり確保するためには、32度以上のロフトが必要とのこと。柚月さんの7番アイアンはロフト26度なのでこの条件を満たさない。
そこでカノマタはロフトが30度ある”ハイロフト”のUTを柚月さんに手渡した。「こんなにロフトが寝たUTは打ったことがありません」と最初は少し不安げな柚月さんであったが、実際に打つとその不安はすぐに解消されたようだ。「何球打ってもキャリーが安定しているし、飛距離も簡単に出ますね!これはとてもラクで驚きました」。
「まずは7番アイアンとUTを入れ替えてあげて、将来的には全体的にもう少し”寝ている”ロフト設定のアイアンセットに変えていくのもいいかもしれません。柚月さんのポテンシャルなら100切りどころか90切りもすぐですよ!」と太鼓判を押すカノマタであった。

7番アイアンの上は5番UTという柚月さんのセッティング。アイアンからUTへの流れを崩さないまま、「 高さ・キャリー不足」という柚月さんの課題を解決するためにカノマタが選んだクラブとは……?

柚月さんのヘッドスピードはドライバーで35メートル/秒前後。これは一般的な女性ゴルファーよりも速い数値だ
ゴルフも小説も「もっと上手になれる」と思えたときが一番楽しい

「今回のフィッティングで、自分のゴルフがもう一段階レベルアップできる可能性を感じることができました。小説もそうなのですが『もっと上手になれる』と思えたときが一番ワクワクします。まずは早くハイロフトのUTを使ってみたいです」と語る柚月さん。
「同じロフト設定でも、重心位置が深く作られているUTはアイアンよりも圧倒的にボールを上げやすい。ボールの上げやすさはやさしさに直結しますから、間違いなくゴルフがラクになるはずです。さらに長期的な目標として、アプローチの距離感を高めていくことができれば、80切りもまったく夢ではないですね」とカノマタ。2025年は柚月さんの「ゴルフ急成長イヤー」になるかもしれない。

アイアンとFWをつなぐ番手であるUTの選び方は、シャフト選択も含めてクラブセッティングづくりのもっとも難しい部分のひとつ。信頼できるフィッターやショップ店員さんに相談しながらクラブ選びをするのがオススメ

フィッティングを終えて、カノマタの説明を聞く柚月さん。わからないことはその場で質問して、「理解できました」とこたえる。ゴルフに対する真剣さが、上達につながるはずだ
いかがでしたか?鹿又さんのアドバイスを参考にクラブ選びをしてみましょう!

柚月裕子
●ゆづき・ゆうこ――作家。岩手県生まれ。2008年『臨床心理』で『このミステリーがすごい!』大賞、12年『検事の本懐』で大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で日本推理作家協会賞をそれぞれ受賞。

鹿又芳典
●かのまた・よしのり――多くのゴルフメディアで活躍する人気クラブコーディネーター。現役ツアープロのクラブ調整やサポートだけでなく、ジュニアゴルファーの育成にも注力している。
構成=石川大祐
写真=小林 司
協力=ジャパンゴルフスクール