
22歳・女子プロが感じた違和感とは?「パットはずっと好調だったのですが…」
ツアーで活躍しているプロたちは誰もが自分のゴルフをよりよいものにしていくためにさまざまなことを考え、走り続けている。どんなことを考え、どのようにゴルフと向き合っているのか。インタビューをとおして、その姿を探っていく。
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「パットはずっと好調だったのですが、ショットが……」

2023年7月、北海道で開催された「ミネベアミツミレディス」。地元北海道出身の3人が4日間同じ組で優勝争いをするという、めずらしいシーンがあった。優勝した小祝さくら、菊地絵理香と戦ったのは、当時JLPGAツアー本格参戦1年目の宮澤美咲。いつも笑顔のさわやかなプレーで、その
名前を全国区にした大会だった。それから1年あまり、2024年シーズンを終えたばかりの彼女の現在地に迫ってみた。
──まずは、お礼をいわせてください。いつもコースで素敵な笑顔をいただきありがとうございます。私たちはとても癒されています。
宮澤:そんな、こちらこそありがとうございます(笑)
──2024年シーズンを振り返って、開幕前はどんな目標を?
宮澤:目標はシード権を獲ることでした。
──スタートはよい感じのように見えました。このあたりは思うようなプレーができていましたか?
宮澤:そうですね。思う以上のプレーでした。なんだかうまくいきすぎているような感じで。
──スタートダッシュに成功した理由は?
宮澤:2023年シーズンの最後にパターを変えたんです。これをオフの間に自宅のパターマットで練習していたら、開幕戦でけっこうタッチが合って、長いパットでもカップをかするように。これでバーディが獲れるようになったおかげだと思います。
──序盤の好調は変えたパターにあったわけですね。
宮澤:はい。2024年は終わりまでずっとパットの調子はよかったです。
──ところが、夏場に少し予選落ちが続くようになってしまいましたね。
宮澤:ショットが全然寄らなくなってしまって。4月のバンテリンレディスのときに少し違和感があって、それがずっと続いている状態でした。
──その違和感、何か心当たりはありましたか?
宮澤:2024年の開幕を迎える前に、ハンドファーストになりすぎていたので、グリップを少し戻してみたんです。すると、それまで打てていたドローが出なくなり、フェード気味になってしまいました。ドローのイメージでずっと打っていたものが、急にフェードになったことで、少しずつショットのイメージがつかめなくなっていく。そんな感覚でした。
ーー7、8月の予選落ちが続いていたのは、それが原因だったんですね。
宮澤:8月最後の「ニトリレディス」では、もうドローはあきらめて、フェーダーとして試合にのぞみました。すると、いいスコアが出て4位に入れたんです。
ーーそこでフェードに転向、とはならなかった?
宮澤:それがならなかったんです。それまでずっとドローでやっていたので、フェードへの違和感がやっぱり完全に消えませんでした。「このままフェードでやればうまくいく」と確信がもてなかったんです。
ーードローが出ていたスイングには戻せない?
宮澤:もうフェードとかドローというより、今までどうやって振っていたかを思い出せなくなっていたみたいです。
──そのショットの状態を考えると、2024年は踏みとどまったシーズンだったともいえますね。
宮澤:後半はギリギリで予選通過した試合が続きました。最後の10試合で予選落ちは2試合だけだったと思います。バーディであがらないと予選落ちというパットもいくつかあり、おかげでメンタルは強くなったかもしれません。
──それまでメンタルは、それほど強くなかった?
宮澤:そうですね。少し崩れるとそのまま一気にダメになってしまうことが多かったです。でも2024年は最後まであきらめないように、ってガンバれたので強くなったのかなと思っています。
「シード権を獲るために」

──ちなみに、プレー中にスコアボードは見ますか?
宮澤:じっくり見ます。見ないで気にしちゃうより、見てスッキリしたほうがいい。逆に見るのをガマンしないようにしています(笑)
──見ないことでストレスをためたら意味がないですね(笑)。さて、2024年ツアーは終わりましたが、すぐにQTファイナルがはじまりました。一時は(試合に出られる目安と言われる)30位台をキープしていましたが……。
宮澤:最終日は早いスタートで、風が強くなかったので前半はバーディが先行しましたが、だんだん風が強くなって、そこからスコアを作れませんでした。今季はステップ・アップ・ツアーでガンバります。
──今年の目標は?
宮澤:まず、ステップ・アップ・ツアーで優勝を目指します。優勝すればQTはファイナルから出られますから。そしてもっとガンバれたら、ステップ・アップ・ツアー賞金ランキング2位までに入って、JLPGAツアーの前半戦出場権を獲れたらうれしいです。
──ガンバってください。では宮澤選手の理想のゴルフスタイルとは?
宮澤:ピンを真っすぐに狙っていくスタイルです。今は外してはいけないエリアに打ち込むことが多いですが、おかげでそこからの脱出はうまくなりました(笑)
──少し厳しい2024年シーズンでしたが、よかったことはありましたか?
宮澤:スコアがよいとき、北海道のじいちゃんばあちゃんや、仲よくしてくれる人たちがすごく喜んでくれるんです。それがとてもうれしかったです。
ある大会の初日、ティーイングエリアに向かう彼女に「美咲ちゃん、ガンバって」と声をかけると「ありがとうございます」と返してくれたあの満面の笑顔が忘れられない。シーズン開幕までにスイングの不調から脱出していることを祈りつつ、今季は表彰台からあの笑顔が届くのを期待したい。
いかがでしたか? 宮澤選手の活躍から目が離せませんね!
宮澤美咲●みやざわ・みさき/2002年生まれ、北海道出身。2021年プロテスト合格。プロ1年目のステップ・アップ・ツアー「SkyレディースABC杯」で優勝。翌2023年はJLPGAツアーでメルセデスランキング5 2位。2024年もほぼフル出場で健闘するもシード獲得とはいかず、25年はステップ・アップ・ツアーやリランキングで再起を図る。HESTA大倉所属。
文=ひよこきんぎょ
写真=小林 司
撮影トーナメント=NEC軽井沢72