ゴルフライターが憧れのペブルビーチでプレー!ゴルフの神様に感謝した瞬間

ゴルフをやっていると、ゴルフの神様が背中を押してくれたと感じることが生涯に何度かある。私の場合はペブルビーチでプレーしたときと、68歳のとき68で回って初エイジシュートを出したときがそうだった。

エイジシュートも夢じゃない!
60歳からの再チャレンジリボーンゴルフ

憧れのペブルビーチでプレーしたのはマツダR X8が発売された年だから、2003年だったと思う。ペブルビーチから車で30分ほどのコークスクリューが名物の高速サーキット〝ラグナセカ〟でRX8の取材を終えた私は、その高揚感のままペブルビーチに乗り込んだ。当日の宿泊は18番ホール脇のロッジ。ゴルフ好きにはたまらないシチュエーションである。

ところがロッジに入って間もなく雨が落ちて来た。私はせっかくペブルビーチに来たのだからと半島の突端に向け、コースを歩き出した。すると3番ホールにきたとき、向こうから見覚えのある男がジョギングしてきた。私がクルマのライター仲間で唯一、ライバルと目する山ちゃんだった。そうか、山ちゃんも同じ思いなんだとうれしかった。

夜中に窓を叩く雨音で目が覚めた。外は横殴りの雨で、フェアウェイには水たまりができていた。やはり明日はダメか。半ば諦めかけてトイレに行こうとすると、18番グリーン脇のバンカーをクマが歩いていた。え、クマ!? そう思ったのはグリーンキーパーがバンカー均しの小型トラクターに乗った姿だった。そうか、ここは海岸沿いの砂地だから雨が上がるとプレーできるんだ。

そう思ったとたん目が冴えて眠れなくなった。翌朝は6時半集合、朝食をとって8時スタートの予定だったが案の定、業界の長老たちから拒否反応が出た。この雨じゃやめようよ。業界で長老の意見は絶対だ。私は諦めかけた。そのとき山ちゃんが声をあげた。「ボクはやります。ゴルフは雪と台風以外はやるもんです。健二さんもやるでしょ」 干天に慈雨。地獄に仏とはこのことだ。

「うん。やるよ。山ちゃんをひとりだけで回らせるわけにはいかないからね」 その後、ほかにも5人が参加を表明し、ラウンド組の7人と、ロスの航空博物館に行く組に分かれて行動することになった。別れ際に長老のひとりが皮肉っぽく言った。「この雨でもやるとは、きみも好きだね」 ところがスタート直前になって雨は小降りになり、3番ホールでは太陽が顔を出してピーカンになった。

しかもキャディについたのがナイキツアーに出ていたプロで、グリーンの読みがまさにプロ。名物の7番ホール106ヤードの打ち下ろしでは、私がPWを持つと、首を振って9Ⅰを渡し「きっちり打て」と指示した。結果はピン奥2メートルにつけ、下りの緩いスライスラインを入れてバーディ。なんと38・41、という望外の快スコアで回ることができた。 

もう2度とやることはないだろうが、毎年ペブルビーチのトーナメントが巡ってきて、テレビを見るたび、脳裏に鮮やかに蘇るこの日のラウンド。つくづくゴルフの神様に感謝しないではいられない。

高橋健二
●たかはし・けんじ/1948年生まれ。ゴルフライターとしてレッスンやクラブ情報などを執筆。 HC8。

イラスト=丸口洋平

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