イップスになったら試してみて!「イメージにない動きを…」プロが解説

イップスは「自分はならない」と思っていませんか?決して他人事ではなく、ゴルファーなら誰でもかかる。しかもゴルフを一生懸命やるほどかかりやすいんです!

なぜイップスにかかるのか、どんな症状が現れ、どうやって克服するのか。それを事前に知ることが、イップス予防の最善策になります。

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解決法は間違えた正解に突き進みがち

イップスの記憶がスムーズさを奪う
「イップスの記憶が残ると、思い切ったプレーができにくくなる。
ツアープロはかかっているものが大きいので、なおさらですね」(石井)

前回もお話ししたとおり、イップス解決の答えは技術のなかにあると思っています。イップスになる入口も技術的なエラーが原因となり、そこから抜け出すのもまた技術的な取り組みが必要になるものです。

ところが、これを自分で解決するのはかなり難しいことです。技術的な原因がどこにあるのかを突き止めて、それに対して、適切な練習で解決できる人は、プロゴルファーであっても、ほとんどいないのではないかと思います。「これだっ」とひらめくことは、だいたい好ましくない方法で、多くの場合、間違えた正解に突き進んでしまいがち。

真面目で熱心な人ほど、解決するためにさまざまな努力をしますが、かえって深みにハマりやすいのです。

練習器具やドリルで意識せずに動きを身につける

「ブラックジャック」という漫画では、主人公の外科医が自分の体を手術する場面がありますが、それはブラックジャックだからできること(笑)。実際に自分で自分を治すのは難しく、イップスも同様で自分がよいと思う動きをしているのに、大きなエラーが起きているわけですから、どこに技術的な問題があるのか、自分ではわからないものなのです。

一方、私のようなコーチ側も、それを教えるのは簡単ではありません。コーチという身としては恥ずかしいことでもありますが、イップスが起きている原因を指摘して、それを直そうとするのは容易くない。本人的な意識のズレは、指摘で埋めるのは難しいからです。

そこで、私は練習器具を使ったり、ドリルを行なって動きを身につけることを勧めています。腕を固定して振れる器具や片手打ちを連続でするとか、左打ちをしてみるとか、そうした取り組みによって、自分の意識のなかにない必要な動きを自然に養いたいのです。

意識や思考を今までのものからズラしてみる

イップスを修正するには、自分のイメージにない”異次元”と感じられるような動きを実践しなければいけない。自分が正しいと思っている動きをしているのに間違っているわけですから、そこに抜本的なメスを入れる必要があります。その意味では、プロゴルファーが技術的な修正をするのは難しいかもしれません。感覚にすぐれ、技術的なベースがしっかりあるプロたちほど、自分のイメージにない動きをすることに強い抵抗があるからです。

イップスによって起きる大きなミスを恐れる気持ちが潜在意識のなかに芽生えると、体も勝手に反応して、スムーズに動きにくくなります。だから、恐れを生まないようにしたいんです。たとえば「ヘッドスピードをいかに出すか?」という課題に取り組んだりして、意識や思考を今までのものから少しズラしていく作業を行ないます。

これはプロだけでなく、アマチュアにもいえることですね。ゴルファーは意外とこうあるべきだ、という思いを強くもっているものなので、別の課題でその認識を変えていくわけです。いかに早くホールアウトするかを競う、スピードゴルフに挑戦するのなんて、いいんじゃないですかね。

つまり、イップスを解決する答えは、自分自身が感じているところにはないということなんです。「自分の意識外にあることに取り組む」という発想があると、よい方向につながるでしょう。

Lesson[対策1] 左打ちで振ってみる

左打ちで振ってみるのも、自分の「意識外にあることに取り組む」「イメージにない異次元の動きをする」方法のひとつ。ミスの原因となる悪い動きが出てしまうクセやリキみが起きにくく、スムーズに振る感覚がつかめる。

[対策2] クロスハンドで打ってみる

パッティングにかぎらず、左手を下にするクロスハンドで握って打ってみよう。左手がクラブと一体化する感覚は「普段とはまったく違ったイメージ」となるので、スイング中にクラブと手の動きの大きなエラーが起こりにくくなる。

いかがでしたか? イップス克服には、思い込みを外し、次の一歩を踏み出してみましょう!

解説=石井忍
●いしい・しのぶ/1974年生まれ、千葉県出身。2010年からツアープロコーチとして活動開始。これまで、多くの選手をサポートし、優勝やプロテスト合格へと導いている。「エースゴルフクラブ」主宰。選手時代には自身にイップスの兆候が現れ、その克服法を研究中。

構成=コヤマカズヒロ
写真=竹田誉之

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