飛距離を出すコツは?ツアー初優勝の女子プロ3人のスイングを解説!

2024年の女子ツアーで初優勝を飾った選手を解説。今回開設する3選手には「2021年プロテスト合格者」という共通点がある。

若手選手がツアーのレベルを上げる今、スイングにはどのような変化があるのか、連続写真でじっくりと分析していく。

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体重移動を使ってビッグアークを描く安定スイング

アドレス~バックスイング

Point
手元が体から遠いところを通っている

とてもオーソドックスな構えです。最初から右足に体重を多めにかけているのは、バックスイングで体が流れないようにするため、そしてインパクトでクラブヘッドの入射角をアッパーにするための準備。

ここをマネするだけでも「打球の高さ不足」で悩んでいる人には効果テキメンです。バックスイングでは、クラブヘッドや手元が体からとても遠いところを通っている。やや小柄な体格なため、ビッグアークで飛距離を最大化する狙いがあります。

トップ~切り返し

Point
スクワットのように沈み込み振り下ろす力をチャージ

トップではほとんどの体重が右足にかかっていて、全身の形は漢字の「入」のような姿勢に。右ポケットのシワを見ると、股関節にしっかりと“乗っている”ことがわかります。

切り返しの直前、クラブヘッドにバックスイングの勢いが残っている状態で、スクワットのような沈み込みをするので、この瞬間にバックスイングがもっとも深まる。この上半身と下半身の「入れ違う」動きによってパワーが増大します。

ダウンスイング

左足が地面を踏み込む力によって、体幹がターゲット方向に開かれます。力の方向がすでにインパクトの先へ向かっているため、ボールに「合わせる」ことよりも「振り切る」ことに集中できている。これもショットの安定性が高く、フェアウェイキープ率上位を維持する阿部選手の特徴といえるでしょう。

インパクト

Point
右ヒジのゆとりがフェースの動きを安定させる

右ヒジが曲がったまま迎えるインパクトゾーンが、阿部選手の安定したショットのポイント。右ヒジが伸び切ったあとではフェースは閉じていく一方ですが、ヒジが曲がっているということは、まだ少しフェースが開いていることを示します。この状態からジワジワと閉じていく時間帯にインパクトすれば、わずかに開いたまま当たることはあっても、閉じすぎて当たることはありません。

手元はすでにボールの上まで進んでいるので、通常であればインパクトロフトが減って打球が低くなりますが、アドレスで作った軸の傾きがあるぶん、ボールの高さを確保できています。

阿部未悠
●あべ・みゆう/2000年生まれ、北海道出身。155cm。ツアー3年目の24年シーズンは「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」で優勝。精度の高いドライバーショットを武器にした安定感が持ち味。24年シーズンのフェアウェイキープ率は18位。ミネベアミツミ所属。

フットワークと柔軟性が可能にする強靭な1軸スイング

アドレス

Point
ボールポジションはスタンスの中央寄り

体重配分はほぼ左右半々、ボール位置もややスタンス中央寄りです。ドライバーのアドレスとしては「教本どおり」とはいえませんが、桑木選手のようなその場で回転する「1軸スイング」のタイプには効果があります。

スイング中の左右方向への体重移動が苦手な人は、桑木選手のアドレスを参考にしてみましょう。

バックスイング~トップ

Point
上半身の回転が下半身に比べてとても深い

バックスイング中、まったくといっていいほど骨盤が右サイドへ流れず、右股関節が捻転をしっかりと受け止めています。そして、骨盤と肩の「回転差」がとても大きいのが桑木選手の特徴。

一般的には骨盤と肩の両方がそれぞれ回転しますが、桑木選手の場合は骨盤の回転量の倍ほど肩が回っていく。これによって体幹部に強い捻転がかかり、ダウンスイングで大きなパワーへと変換されます。

切り返し

Point
左足に瞬時に踏みかえてその場で回転

切り返しでは、フットワークを使って右股関節に乗った体重を即座に左足へ踏みかえ、体をターゲット方向へ向けていきます。このときも骨盤の左右方向への移動はなく、トップポジションからその場で回転するような切り返しです。

一見すると左サイドへ体重移動していないようなルックスではありますが、スイング中の重心・圧力を解析する計測器で測ると、こうした動きでもしっかり左足に圧力がかけられることがわかっています。

インパクト~フォロースルー

インパクト直前になってもまだ肩は開いておらず、右ヒジは曲がったまま。正確にはただ曲がっているだけでなく、右上腕が外旋(自分から見て時計回りに回転)した状態です。クラブへッドを最後の最後まで体のうしろに残すことで、ヘッドスピードのピークをインパクトの瞬間にもってこられるようにしています。

インパクト直後の瞬間には体の左サイドが伸び切り、クラブヘッドが体から最大限遠ざかって強い遠心力がかかる。柔軟性が高いので、ここでも右ヒジを伸ばし切らずにゆとりをもたせることができています。ヒッカケを防ぎ、持ち球である強いフェードボールを放てるポイントです。

桑木志帆
●くわき・しほ/2003年生まれ、岡山県出身。163cm。23年の「資生堂レディスオープン」ではプレーオフで惜敗するが、その経験をバネに24年の同大会で優勝。「ニトリレディス」「JLPGAツアー選手権リコーカップ」とさらに優勝を重ねた。大和ハウス工業所属。

流れるような動きとキレのある出力でロケット加速するスイング

アドレス~バックスイング

Point
骨盤はやや右へスライドする

バランスのとれた美しいアドレスです。打球の高さを確保するため、わずかにボールポジションを左寄りにしていますが過剰ではありません。左足のツマ先をターゲット方向に少し開いておくのは、ダウンスイングでの回転をスムーズにするため。

これは股関節が硬くなったアマチュアにも効果的な工夫です。バックスイングでは骨盤が右サイドへわずかにスライド。その場で回転するよりも体重移動を感じられるので、スイングのリズムをとりやすいというメリットがあります。注意点は、ヒザが流れてスエーしないようにすることです。

トップ

Point
体幹で回転しているため腕にはゆとりがある

竹田選手のトップポジションでの特徴は2点。ひとつは腕がピンと張っておらず、軽くヒジが曲がるくらいゆったりとしていることです。このほうがダウンスイングで腕がしなやかに動いてスピードを稼げます。

また、これは体幹を使ってしっかり回転している証拠。腕で引っ張るように体を回した場合は、腕が真っすぐになってしまいます。ふたつめの特徴は体重配分。右足に体重がほぼ100%乗っているので、左足は地面についてこそいますが、どこにでも踏み出せるような状態です。

切り返し

先ほどまでリラックスしていた左足に一気に荷重し、左ヒザのポジションはほとんどアドレスの位置まで戻ります。これだけ下半身が先行しているにもかかわらず胸はまだ開いていません。この驚異的な体幹の柔軟性と強さが、竹田選手のロケットのような加速感のあるスイングの源泉となっています。

24年シーズンのドライビングディスタンス1位にも納得です。

ダウンスイング

Point
左足の踏み込みがクラブヘッドをさらに加速させる

シャフトが地面とほぼ平行になったタイミングで左足が伸びています。左足で地面を強く蹴った反動(地面反力)を受けた結果、このような体勢になるのです。体を貫くような上向きの力がクラブリリースの力へ転換され、インパクトゾーンで最大の加速を与えます。

体幹部分はわずかに右へ傾いていますが、これによってしっかりと打ち出し角度も確保。とにかく飛ぶ条件がそろったパワフルスイングです。

竹田麗央
●たけだ・りお/2003年生まれ、熊本県出身。166cm。22年のツアーデビュー後、着実に力をつけて今季大ブレーク。年間8勝を上げて年間女王の座を勝ち取った。「TOTOジャパンクラシック」の優勝により、25年シーズンの米女子ツアー出場権を獲得。ヤマエグループHD所属。

いかがでしたか? このレッスンを参考に、スイングをよくしていきましょう。

解説=アッキー永井
●ながい・あきふみ(永井研史)/1987年生まれ、神奈川県出身。”アッキー”の愛称で親しまれている人気コーチ。人体解剖学や物理学の視点を取り入れたわかりやすいレッスンに定評がある。

写真=ゲーリー小林
撮影トーナメント=ワールドレディス サロンパスカップ、ニチレイレディス、アース・モンダミンカップ

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