初優勝・女子プロ3人の“勝者のスイング”を解説!強さの秘訣とは?
2024年の女子ツアーで初優勝を飾った選手を2号にわたり解説。
今回ピックアップした3選手は、かねてより優勝が期待されていた実力派たち。
竹田麗央や岩井姉妹のように年間複数優勝をあげる強者たちを破って栄誉を手にしたスイングを、じっくりと見ていこう!
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バーディーを量産する1軸ストロングスイング
臼井麗香
●うすい・れいか / 1998年生まれ、栃木県出身。158cm。18年のプロテスト合格から6年、待望の初優勝をアクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI 2024で飾る。22年度シーズンから比べてバーディ率は50位以上のランクアップ。
アドレス〜バックスイング
スタンスは少し広めで安定感があります。体重移動をしっかりするタイプの選手に多く見られるアドレスの傾向ですね。サンバイザーを見ると頭の向きが少し右を向いていますが、これはテークバック(始動)をしやすくするための工夫。
バックスイングでは上半身がやや右サイドへ寄っており、右足に体重をかけているのがわかります。腕とシャフトがなす角度がアドレス時と変わっておらず、クラブヘッドの重みを感じながらクラブを動かしているのでしょう。
トップ
肩は深く回ったトップですが、シャフトが地面と平行にはなっておらず、ここでもアドレス時の手首の角度がほぼキープされています。切り返しではクラブの勢いに引っ張られて体が反り上がったりしやすいですが、臼井選手にはそれがまったく見られません。
体格は華奢ですが、体幹がしっかりしているからこそ、この「締まったトップ」が作れるのです。
切り返し〜ダウンスイング
左足の外旋(地面に対して反時計回りの回転)が強く入りながら切り返しているので、一瞬ですが沈み込みながらヒザが体の外を向き、ガニ股になって見える。
ハーフウェイダウンでは胸は閉じたまま骨盤は開いている。これらは、クラブヘッドに遠心力をかけ、グリップエンドをずっと引っ張り続けている証拠です。
フォロースルー
きれいに腕が伸びたフォローは、手先の動きの少なさを示しています。この瞬間がもっとも体に遠心力がかかりますが、左ヒザが曲がって体が流れることもなければ、逆に伸び切るわけでもない「ちょうどいい状態」を保っている。柔軟性とパワーの両方が必要なので、彼女の“ワザ”のひとつといえます。バーディ率が高いのもうなずけますね。
「しなやかさ×鋭さ」がミックスされた超加速スイング
安田祐香
●やすだ・ゆうか / 2000年生まれ、兵庫県出身。163cm。アマチュア時代は長らくナショナルチームの一員として活躍し、20年にプロ入りする。24年は安定した成績を残し、トップ10入り5回。ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンでは、悲願の初優勝をつかみとった。NEC所属。
アドレス
まさに教科書どおり、バランスのとれた美しいアドレスをしています。ひとつ特徴があるとすれば、あまり左ツマ先を開いていないことです。
多くの選手が体を回しやすくするために左ツマ先を開きますが、股関節の可動域が広い場合には“動きすぎ”を防ぐため、あえてあまり開かないこともあります。
バックスイング〜トップ
胸の回転が先行、骨盤がついていくようにして回転します。安田選手は最近の若手プロのなかでもとくに細身なので、回転が過度に深くなり、インサイド・アウト軌道が強くならないように気をつけているのでしょう。
「回転への制限」をかけても、トップの位置は十分に深い。右腕が頭のうしろに隠れるということは、体の正面よりもさらにうしろまで腕が移動しているということ。ここまで体を捻転しても右ヒザの向きがまったく変わらないので、股関節の可動域の広さと筋肉のしなやかさがあることがわかります。
切り返し〜ダウンスイング
写真ではわかりにくいですが、切り返しで右足から左足に瞬時に踏み替えをしています。つまり「左足で地面を蹴っている」ということ。そうすると右サイドは支えがなくなるので、自然と腕が真下へ下りてきます。ついつい手先から振り下ろそうと力が入ってしまう人は、参考にしてみるとよいでしょう。
ダウンスイングでは右腕が体の側面に近いところに下りています。基本的にはこのポジションにヒジがあるとスイングはインサイド・アウト軌道になり、つかまった球が打ちやすくなります。
フォロースルー
腕がよく伸びていて、クラブと体が“引き合う”関係がしっかりとできています。また、左足を見ると「地面を蹴る力」をうまく利用していることがわかる。通常、フォローでは左足のツマ先寄りがめくれやすいですが、安田選手の場合は、カカトが浮いて内側へ入っています。つまり、プレーヤーから見て反時計回りの方向に地面を蹴っている。この地面にかけた力の反作用として、下半身が強く回転していきます。
シャローアタックから繰り出す
ビッグドローで飛ばすアスリートスイング
佐藤心結
●さとう・みゆ / 2000年生まれ、神奈川県出身。161cm。22年にプロ入りし、ツアー参戦3年目。24年の前半は予選落ちも多かったが、徐々に調子を上げてスタンレーレディスホンダで初優勝。ドライビングディスタンスは12位、ツアーを代表する飛ばし屋のひとり。ニトリ所属。
アドレス
一見、普通のアドレスに見えますが、ボールポジションに少し特徴があります。ややスタンスの中央寄りにセットされ、球筋を低いドロー系にしたいという意図が感じられる。
また、このボールポジションには、肩が左を向いてしまうのを防ぐ効果もあり、これもボールをしっかりつかまえるための準備といえるでしょう。
バックスイング〜トップ
テークバックでは手元や腕の動きは少なく、下半身の体重移動から始動しているので、少し体が右サイドへスライドします。このとき、シャフトに負荷がかかるのでしなりが発生する。最近の選手には多い傾向ですが、佐藤選手もトップポジションが低いタイプです。
しかし、形だけ見てマネをしてはいけません。これはバックスイングで振り上げたクラブの勢いを、しっかりと体幹の筋力で受け止めているからコンパクトなトップになるのであって、決してパワーを抜いているわけではないのです。
切り返し〜インパクト
現在ツアーで活躍している選手のなかでも、とくにアスレチックなスイングではないでしょうか。切り返しでこれだけ骨盤が先行しても胸が閉じているので、体幹の捻転差はすさまじいです。このとき腕が体幹から外れてしまいやすいですが、背中側の筋肉でしっかりとコネクションを保っています。このコネクションがあることによって、回転の力を100%クラブに伝えることができる。
インパクト手前では軸が少し右うしろに倒れることで入射角がアッパーになりやすく、スピン量の抑えられた強い球が打ち出されます。
フォロースルー
左ヒザが伸びきっておらず、まだ踏み込む力にゆとりが見られます。シューズがめくれていないところを見ると、左足の内側にしっかりと体重がかかっていますが、この体勢は左股関節の可動域の広さがなせるものでしょう。
両腕は体の正面にありますが、こちらについても肩甲帯(肩まわり)の柔軟性の高さがポイントとなっています。顔を早めにターゲット方向に向けることでスムーズに回転できるようにしているのは、アマチュアも参考にできるポイントです。
いかがでしたか? 臼井選手、安田選手、佐藤選手を参考に美しいスイングを身につけましょう。
安田祐香
●やすだ・ゆうか / 2000年生まれ、兵庫県出身。163cm。アマチュア時代は長らくナショナルチームの一員として活躍し、20年にプロ入りする。24年は安定した成績を残し、トップ10入り5回。ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンでは、悲願の初優勝をつかみとった。NEC所属。
解説=田中 徹
●たなか・とおる / 1988年生まれ、千葉県出身。「1兆個のドリルをもつ男」と名乗り、インスタグラムのリール(動画)が大人気。「Bull Golf」など都内でレッスンも行なっている。Bull Golf代表。
写真=ゲーリー小林
撮影トーナメント=ワールドレディス サロンパスカップ、ニチレイレディス、アース・モンダミンカップ
※選手の成績やデータは11月9日現在
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