• HOME
  • ブログ
  • レッスン
  • スイングはインパクトで終わっている…。高出力と方向性を両立させるスイングを解説

スイングはインパクトで終わっている…。高出力と方向性を両立させるスイングを解説

ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。

斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに新しい上達のヒントをもたらす!

【関連記事】人気女子プロの“バッグの中”は何が入ってる?ラウンド中の女子プロに突撃!

高出力と方向性を両立させるスイング

スイングで手首を使い切ってパワーを得ながらも、きっちり狙って打つためには、インパクト前のリラックスしたうえでの不安定さと、インパクトでの安定性(スタティックさ)、さらにはインパクト後の再度のリラックスがしっかりセットになって成立しなければならない。この緩急がわかればショットは見違えるようによくなるはずだ

スプリットグリップで不安定な握りを体験

前号で説明したインナーカウンター2のなかで、左手三指が受動力点となり、同時に左手三指(とくに左手人差し指)が支点となるという話をしましたが、まずはその補足から。

クラブを左手三指で軽くホールドしたら、イラストAのように右手人差し指と親指をつなげてリングにし、そこにシャフトを通します。その状態で左手と右手を50センチほど離していくと、自然にシャフトがテークバックしている状態になると思います。この状態から右手の指のリングを左手に徐々に近づけて、右手が左手に接したところでシャフトが正面を向くようにしてみてください。

この動作のとき、左手と右手の距離の変化に着目します。バイクなどでは前輪と後輪の距離をホイールベースといいますが、このホイールベースが短いほど不安定さが増し、自由度が最大となるのは前輪と後輪が同じポジションになる一輪車の状態となります。

ここでの右手リングの引き寄せはこのホイールベースの短縮をしているのと同じで、右手が左手に接したところで2点支持が終了し、ホイールベース・ゼロの一輪車の状態になります。

この不安定な状態になったところで、左手でクラブの進行をブロックすると左手が受動力点となり、同時に支点ともなってテコの原理で加速が行なわれるというのが前号の筋書きでした。前号、この話に今ひとつ実感がもてなかった人は、この右手リングを引き寄せて、クラブの不安定化と支点融合と手首の鞭のような動きによる加速を体験しましょう。

出力と精度をトレードオフにしない

ところで、このような手首を最大限に使う打ち方というのは、手打ちをしているようで罪悪感がある人も少なからずいるのではないかと思います。正確性も求められるゴルフでは、自由度の高さによる高出力は正確性とトレードオフの関係にあるからです。

じつはテニスでもボレーや短い距離の繊細なショットではフェースをむやみに振り回さないというのが基本なので、ビギナーに対しては攻めのラリーであっても手首は使うなと普通にいわれています。

しかし、中上級者はしっかり手首に仕事をさせてパワーを得ているのも事実です。ただ、手首を使うのは2022年11月号で説明した「タッチ」でのアジャストも含めインパクトまで。グリップ握力を増してフェースを固めインパクトを行なったあとは、脱力して惰性にまかせます。

インパクト後は手首を(恣意的に)使わないという意味では「使わない」というのは半分当たっています。しかし、インパクトをゴールとするスイングでは、パワフルなショットも繊細なボレーもインパクト直前まで量の大小はあっても、手首は必要に応じて最大限使われています。

おそらくビギナーにはこの緩急の区別がつけられないので、一律「手首を使うな」ということになっているのです。要は、インパクトですべてが完了できれば手首は使ったほうがいいのです。

そして、このことはそのままゴルフにも当てはまります。同じような説明になってしまいますが、インナーカウンターによって左手でクラブをブロック、前号で説明したように受動力点の左手三指は同時に支点となり、テコの原理で手首が鞭のようにしなり加速しますが、手首の仕事はインバースキネマティクスでゴールとしたインパクトまで。

それ以降は、脱力して腕も手首も惰性にまかせます。外から見ればインパクト後も手首を使っているように見えるかも知れませんが、すでにスイングはインパクトで終わっているのです。

インバースキネマティクスでは、インパクトの状態を担保することを強調してきましたが、これを確実にするために「どのような弾道で、着弾点はどこなのか」をはっきりさせ、着弾の様子を思い描きながら打ってみてください。

ボーリングで真っすぐ投げようと指先だけに気を払ってもなかなか真っすぐ投げられるものではありませんが、中距離にあるスパットを意識して投げる。2点で投げ出し方向を確認すると方向性が安定しますが、同じように着弾点を意識することによって方向性の検証の精度が高まり、思ったところにより打てるようになる。

当然、出球方向はインパクト時のフェース方向で一義的に決まってしまうので、インパクト後も引き続き、手首のスナップでシャフトを意識的に掌握させたり、逆に手首を固定してフェースを飛球線方向に直線的に差し出すような小細工はしません。畑に鍬(くわ)の刃が刺さったら、それで終わりだと思えばわかりやすいと思います。

ゴルフにかぎらず球技では「より速く、より強く、より正確に」ボールを「特別なこと」ではなく「普通に」コントロールできることが究極の目標となります。よくライン出しをマスターする云々のような話を聞きますが、テニス経験者の私にはライン出しも何もすべてのショットが狙って打つべきものでしかありません。

そのためには、マン振りで思いっ切り打つのではなく、レッドゾーン手前でショットする自制も必要だと思います。

いかがでしたか? ショットの際には着弾点ををはっきりとさせて正確性向上に努めてください。

文・イラスト=サンドラー博士

●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。

関連記事一覧