有村智恵がツアー会場で見つけた“ネクストブレイク女子プロ”とは…?
有村智恵プロの連載第六弾。「恩師である坂田信弘プロに報告したい」そう語った安田祐香プロ悲願のツアー初優勝に沸いたミヤギテレビ杯ダンロップトーナメント。
同門の先輩でもあり、同トーナメントの優勝経験もある有村智恵プロに語っていただきました
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期は熟していた、優勝する覚悟が見えていましたね
こんにちは、プロゴルファーの有村智恵です。
ミヤギテレビ杯ダンロップトーナメントでの安田祐香プロ初優勝、感動しましたね。同じ坂田先生の教え子として、私もとても嬉しかったです!安田選手としては、もっと早くに優勝している姿を直接見せたかったと思いますが、きっと先生に届いているんじゃないかな。
それにしても、安田選手は初日からずっと良い集中が出来ているように見えました。悪天候で、土曜日の中止や相次ぐ中断など非常にメンタル的なマネージメントが難しい大会だったと思いますが、自分のプレーに徹している印象が強かったです。元々、力のある選手でしたが、首や腰などの痛みと戦っていることが多かったと思います。でも、最近はトレーニングなどで不安が無くなってきているようでしたので、前以上に練習量が確保出来ているのではないかと思います。
昨年ぐらいから特に体に強さが出てきて自信を持ってショットを打てていましたし、その影響でパッティングやコースマネージメントに集中できているように感じました。今回見ていても、各選手が苦しむ水を含んだ重いラフにも対応していましたし、その集中が終始途切れませんでした。心技体とはよく言いますが、体の不安がなくなったことが、プレーやメンタルを、こんなにも安定させるんですね。最終日、序盤に上位選手達がスコアメイクに苦しむなか、11番のバーディーパットを決めれたことで差が開いたことも、流れとしては非常に大きかったと思います。
でも優勝する時って、選手はそういうことよりも自分のやるべきことに集中出来ているんです。そこで、変にまわりを見てしまうと流れが逃げて行ってしまいます。15番で難しいアプローチを残しているタイミングで最後の中断が入ったときに、2位との差はありましたが嫌なタイミングだなと思っていました。でも、安田選手を見ていたら、変に気負っている印象もなくて自然体でいられていました。もちろん、調子も良かったのだと思いますが、悔しい思いをたくさんしてきたこと、そこからウィークポイントを少しづつ改善して、最近は上位争いを安定して出来ていました。本人も優勝するタイミングが近いと感じていたのではないでしょうか。「期が熟した、このまま優勝する」そんな印象でした。
実は私も2009年にこの試合で優勝させて頂いているのですが、コースの印象が全然違いました。利府ゴルフ倶楽部は、それほど距離が長いコースではないのですが、その分グリーンが止まらなくて難しいコースです。ピンポジションによってマネージメントをしっかりして、正確なショットを打っていかないとトラブルになる難コースというイメージが強いです。今回は大雨の影響でティーショットのランが出ませんでしたから、セカンドショットで残る距離が例年よりも長くなっていました。そして、たくさんの水を含んだラフは屈強な選手ですらチョロみたいになるほどまともに打てないくらい重たくなっていました。でも、その分グリーンでは球を止められていたので、ショット力のある選手が上位に集まった印象でしたし、その中でも安田選手のショットは最後までピンに絡んでいましたね。
敗れた選手の中では、佐久間朱莉選手に注目しています。今シーズン何度も優勝争いをして敗れていますが、今回も手が届きませんでした。しかし、彼女のショット力は、本当にレベルの高いものがありますし、安田プロと同じように、あと一歩を探しているところだと思います。諦めないで優勝に近づいていって、掴みとってほしいなと思いますし、そう遠くない日に彼女の優勝する姿が見れると思っています。
いかがでしたか、厳しいプロの世界で一歩ずつ自信を積み上げて優勝の夢を叶える瞬間に立ち会えるのは、とても感動的ですね!
有村 智恵
●ありむら・ちえ/1987年生まれ、熊本県出身。159cm。通算14勝(メジャー1勝)4月に双子の男の子を出産。
構成=岡田豪太
写真=田中宏幸
協力=取手国際ゴルフ倶楽部