“やさしいクラブ”ってどういうもの?石井良介プロが解説!
最新クラブには適した最新の打ち方がある。それによってクラブがもつやさしさを引き出し、やさしくプレーするのが最先端のラウンド術! 最新クラブの代表的な性能をもつドライバーとアイアンを集め、石井良介が打ちこなし方をレクチャーするラウンドレッスンを行なった。
「自分にとってやさしい」最新クラブを上手に打ちこなそう!
ゴルフクラブは日々進化していて“やさしさ”が増していることは間違いありません。プロもやさしさを活かしてスコアメイクをしていて、その結果、ひと昔前では打てなかった飛距離や球筋、スコアを叩き出しています。
アマチュアも最新クラブの恩恵にあずかってほしいのですが、その前に「やさしい」の定義と選びが変わったことを知ってください。ひと昔前は、プロ、アマチュア問わず、球が「つかまりやすく、高く上がりやすい」クラブがやさしいとされてきました。
しかし、今はモデル数やモデルごとのテクノロジーも多様化してきて、求める球筋をより絞って選ぶことができる「自分にとってやさしい」クラブを選べる時代になりました。人によっては球がつかまりすぎたり、高く上がりすぎたりするクラブが“やさしくプレーできる道具”とはかぎりません。
求める弾道が打てるクラブはやさしく、逆に望まない結果が出るものはやさしくないのです。みなさんも「こういう球が打ちたくてこのクラブにした」という狙いがあって購入したと思います。
しかし、ラウンドではそれが頭から消えていませんか? そこで今回は、近ごろの代表的な最新テクノロジーを搭載したドライバーとアイアンを使ってラウンドレッスンを実施。参加してくれた2人のアマチュアは、平均スコアは90後半、ヘッドスピードも出がちなミスもアマチュアゴルファーに多いタイプだったので、飛距離や方向性の向上に定評のある5モデルを用意。
それぞれのクラブ性能を前提としたレッスンをした結果、2人とも申告した平均スコアから10打は縮まりそうなプレーをしてくれたので、みなさんもぜひ自分のクラブに置き換えて上達に役立ててください。
フェース向きが変わると元に戻しにくい
ヘッドの慣性モーメントは、ドライバーからパターまで高く(大きく)なっています。その長所は一方向に対してのヘッドのブレにくさ。そのためブレてしまうと戻しにくいという反面もあります。
この反面が悪い部分となっているゴルファーは多く、渡邊さんもそのひとりで「スライサーなのでヘッドを返してボールをつかまえたいから、バックスイングの時点でフェースを開く」。
フェースを閉じながらインパクトするための準備をしていましたが、高慣性モーメントの最新クラブではフェースが開いたままになりやすいので×。スクエアなフェース向きをキープしたまま振るのが○です。
「トップでフェースは上を向く」のも、スクエアなフェース向きで振り上げられたかのチェックポイント
使いこなせない高慣性モーメントのクラブで弾道がブレる
つかまりがいいはずなのにまた右!
1度開いてしまうと開いたままになりやすい(×)。バックスイングでもダウンスイングでも、体の回転に対してスクエアなフェース向きをキープするのが真っすぐ飛ばすコツ(○)
「閉じている」ではなく前傾姿勢なりの「スクエア」
「フェースを下に向けるということは、シャットですか?」との質問に対して、「シャットに見える向きですが“上体の前傾に対してスクエアな向き〞です」と石井。直立したままハーフウェイバックまでスクエアフェースで振り上げたフェース向き(写真上)が、前傾して振り上げると自然と下を向くだけで、閉じながら上げてはいない(写真下)
「球をつかまえようとしなくていいのか!」
「高慣性モーメントのドライバーは重心角が大きく重心深度も深い傾向にあるので、ダウンスイングでは球をつかまえようとしなくていい」と石井プロ。バックスイングでのフェースの向きを直してもらい、スクエアなフェースを意識するだけで真っすぐ飛ぶようになりました!(渡邊)
手を使って大きくは× 胸が左右を向くまで回して振るが○
最新の軽量ドライバーは、軽くても年配の人や非力な人の専用モデルではなく、レベルや年齢を問わず「ドライバーを楽に振りたい」ゴルファーに合う設計になっています。丸山さんも試打して、使用中のドライバーよりも楽に飛ぶことを実感。
しかし、安定感に欠けることを心配していましたが、これも即解決。軽めのクラブを打ちこなすポイントは“体の運動量を上げる”です。クラブが軽くなると手打ちの傾向が強くなりやすい。
軽いからといって強く振ってしまうのもNGです。テンポをゆっくりめにして胸を回しながら大きくバックスイング。ダウンスイングでも胸を回してクラブの遠心力を感じて振ると、再現性とミート率を上げられます。
積極的に動かす胴体は「胸」+「お腹を縮める」で前傾キープ
積極的に動かす胴体は、胸に加えてお腹も意識。切り返しから、みぞおちとヘソとの距離を縮めるようにすると前傾角が保てる。クラブもインサイドから下りてくる。伸び上がるクセがあり、クラブが軽くなるとなおその傾向が強くなってしまう丸山さんには、この意識がとても有効だった
大きくゆったり、というと手だけを動かしてしまい、胸が回っていない人が多い
キャロウェイ パラダイム
Ai SMOKE MAX FAST
使いこなせない軽いクラブだとミート率が落ちてしまう!
「軽いと暴れるのは自分のせいだった!」
ツアープロも最近はクラブを軽くしていると聞いて、アマチュアの自分だったら今のクラブは重すぎなのではと思っていたけど、軽いクラブは暴れるイメージがありました。でも、軽いクラブに合ったスイングをすればいいんですね! その効果と結果に驚きつつ喜んでいる表情を写真に撮られていました。笑(丸山)
ヘッドの返りは返りやすくしたヘッドにまかせる
ウエイトで弾道を調整するモデルは、活用したほうがいい、というよりもついているならぜひ試してみてください。ウエイトはヒール寄りを重くするとヘッドが返りやすくなり弾道はドロー傾向に。トゥ寄りを重くするとフェード傾向になります。
渡邊さんはスライサーなので、ウエイトをヒール側にスライドして打ってもらいましたが、ここでもアドバイスしたのは「スクエアなフェース向きをキープする」のみです。ウエイトの調節によってヘッドが自然に返りやすくなったのに、無理に返して打つと意図した好結果が出なくなってしまいます。
球をつかまえるのは、つかまりやすくしたウエイト設定まかせでインパクト(○)。つかまえにいくとヘッドが返りすぎてしまう(×)
ヘッドが返りすぎないように、スクエアなフェース向きを意識してスイング&インパクトしてください。
スクエアなフェース向きをキープし続けるには、トップでできた「甲側に折れた右手首」と「たたんだ右ヒジ」の角度を変えずに振り下ろす(○)。右手首と右ヒジが伸びてしまうとフェースがかぶりやすくなってしまう(×)
グローブライド オノフ
ドライバーAKA
「ウエイトは大きく動かしたほうが違いを感じやすい!」
移動は気持ちヒール寄りにしようとしたら「まずはMAXヒール寄りで!」と石井プロ。スライド式のウエイトはミリ単位で動かせますが、変化を求めるときはまずは大きく動かし、そのウエイト位置によってのヘッドの挙動や弾道を見たり感じたりするがいいそうです。それで球がつかまりすぎるようなら、少しずつニュートラルな位置に戻していく。僕の場合、MAXヒール寄りのウエイトポジションがピッタリでした(渡邊)
高慣性モーメントのドライバーと同じくフェースの開閉を抑える
アベレージゴルファー向けのキャビティアイアンはヘッドサイズが大きめで、トゥとヒールに大きく重量を配分し、慣性モーメントも大きい。これらによってミスヒットの強さを発揮しますが、高慣性モーメントのドライバーと同様にフェースを開閉させないことがポイント。
ヘッドを操作しにくいものを無理に動かすとズレたままになりやすいのです。とくに重いトゥ側が動いてしまうと、フェースが大きく開いてミスショットにつながってしまうので、ラージサイズのキャビディアイアンもスクエアなフェース向きをキープすることが鉄則で、上手に打ちこなすコツになります。
水平素振りでスクエアを体感
スイング中のフェース向きを安定させるには、クラブを腰の高さまで持ち上げて水平素振りを行なう。そのときにフェース面がねじれずに、体の回転とクラブが同調する感覚を養い、この感覚を本番のスイングに活かそう
三角定規をイメージ&崩さない
各アングルをキープするには、体の正面に三角定規をイメージするのが効果的。上の写真のように、実際のクラブのほかに「ヘッドとみぞおちあたりを結んだ三角定規」をイメージして、三角の形を崩さずに振り続けよう
三角定規を崩さずスイング。ヘッドのトゥをつねに上へ向けながら、手元を下げる力を加え、ヘッドが落ちる力と拮抗させるのがポイントだ
手元やヘッドの位置がズレて三角定規が崩れると、インパクトもズレてしまう
グローブライド オノフ
アイアンAKA
「最新クラブはスクエアが共通ポイント!」
このキャビティアイアンは、球が高く上がるし、つかまってくれる。ミスヒットにも強いやさしさは、私にとっての「やさしい」ですね。高慣性モーメントと軽量のドライバー、そしてこのアイアンもそうですが、最新クラブは「体を積極的に回してスクエアなフェース向きをキープする」のが共通ポイント。手先では何もしない、無理もしない、シンプルなスイングがクラブの性能をフルに発揮してくれると感じました(丸山)
ヘッドの座りが最適なボール位置を教えてくれる
最近の飛び系は単に飛ぶだけではなく、球も高く上がる、スピンも入る、操作性もある、といった進化を遂げています。これらの機能で「操作性も兼ね備えている」モデルは見た目もスマートで、ソール幅の厚さも抑え気味。
そのソールは形状もきちんと考えられていてヘッドの座りもいい。この座りのよさは各番手のヘッドとボールの適した位置を教えてくれます。ソールを地面に置いたときに、フェースが真っすぐ向いて座りも安定する位置が番手ごとにあるので、その位置に合わせてヘッドとボールをセットしてください。
インパクトは急角度で打ち込まず、ゆるやかなダウンブローで打つのが基本ですが、各番手のボール位置の違いによって、番手ごとの高さやスピン量が安定。飛距離差もきちんと出せる入射角でヒットできるようになります。
ゆるやかなダウンブローは1タイプでOK。ボール位置が変わることで、短いアイアンは鋭角気味、長いアイアンは払い打ちに近い“番手ごとの適正な入射角〞でヒットできる
ソールの座りのよさを頼りにヘッドをセットすると、短いアイアンほどボール位置は体の近くの右寄りに。長いアイアンほど遠く離れて左寄りになる。じつは、全番手が同じ位置ではない!
「左手の位置はつねに一定」でさらに安定!
「ヘッドの位置は変わりますが、左手のポジションはつねに一定です」と石井。アドレス時と同じ前傾をとり、両手をダランと垂らしたら、その左手の位置でクラブを握り、右手は軽く添えてグリップする。この左手の位置がナチュラルなポジションなので、スイング中に動かしても元の位置に戻しやすいのがメリットだ
ピン i530アイアン
「ボール位置が違うとは盲点でした」
ボール位置はドライバーとアイアンでは変えますが、アイアンはすべて同じ位置で構えていました。ボール位置を石井プロのレッスンどおりに直すと、ショートアイアンもロングアイアンも精度が高くなり、とくに球がつかまりすぎたり、つかまらなかったりするミスがなくなったので、ゴルフ仲間にも教えてあげたいです!(渡邊)
「飛ぶ」と「飛ばさない」2つを覚えておくのが最先端の有効活用法
各メーカーの最新の飛距離自慢のアイアンは、素材や製造技術の進化によって、これまでの飛び系ではできなかったことができるようになりました。その代表的なテクノロジーが「番手別設計」で、ロフトピッチを等間隔にせず、重心の深さや高さも番手ごとに変えて作られています。
それによって、短いアイアンは番手間の飛距離差が大きくなってしまうなどのデメリットを解消。きれいな飛距離の階段を作れるようになりました。しかし、それを台無しにするのが「飛ぶならもっと飛ばしたい」と無理に飛ばそうとする打ち方で、リキむとフェースが閉じて引っかける。
インパクトロフトが減るのでバックスピン量にもバラつきが出るなど、飛距離が安定しない現象が起こってしまいます。そもそも飛ぶ機能は存分に備わっていますし、軽量シャフトを装着した飛び系も同様で、その飛距離性能を活かすには、自分で飛ばすことよりもミートを重要視。
そして、1本のアイアンで「飛ぶ」と「飛ばさない」の“最低2種類の飛距離を出すスイング”をマスターしておくのが、最先端の使いこなし方になります。
飛距離性能の高いアイアンをもっと飛ばそうとしてマン振りするのは×。スリークォーター(〇右)とハーフショット(〇左)のふたつのスイングと飛距離でコースを攻略するのが○。「振り幅を抑えても、力感はフルショットに近いままにするのがポイントです」(石井)
スリークォーターがコース内でのフルスイング。もうひとつハーフショットでの飛距離を作っておくと、単純に「打てる距離」が増えるのでコース攻略にとても役立つ。コース内でフルショットはご法度だが、トレーニングとしては有効なので練習ではOK
ピン G730アイアン
「ハーフショットの飛距離を多用したい!」
もっと飛ばそうとしたのが使いこなせない原因でした……。コース内でのフルショット「スリークォーター」ならミートできて、ミートすればいつもより飛んでくれる。また、飛び系アイアンでのハーフショットは、ハーフでも結構飛んでくれるし、私の場合、そのハーフショットが番手間の飛距離だったので、中途半端な距離が残ったときに積極的に使いたいと思いました(丸山)
新作は“叩ける”AKA! 「球の強さ」も魅力のひとつ
弾調整機能も充実幅広いゴルファーにフィットする
これまでのオノフのAKAといえば「上がる・つかまる」が最大の特徴でしたが、今作のAKAは前作までの特徴は引き継ぎつつ、新たに「球の強さ」が加わったという印象を受けます。
簡単なクラブに飛びの要素が加わり「クラブの機能には頼って、まだまだゴルフをガンバりたい!」というアマチュアにピッタリのモデルです。また、今作では新たにスライド式ウエイトが搭載され、弾道の調整幅も拡大。
つかまりを少し抑える方向にもカスタムできるので、しっかりボールを叩いて飛ばしたい競技志向のゴルファーも使用できる1本に仕上がっています。
弾道調整機能が充実していて、理想をより追い求める調整が可能。フィッティングを受け、客観的に調整してもらうのもひとつの手だ
飛ぶ・上がる・つかまる
「全芯主義」でやさしさがパワーアップ
打てばすぐに感じるトップクラスのやさしさ
まず好印象だったのは、打音が非常によくなっていること。前作のAKAから比較するとかなり〝落ち着いた〟打音になっています。何も小細工をしなくても「普通に構えて、普通に打つ」だけで「飛ぶ・上がる・つかまる」といったAKAシリーズを通しての特徴を体感できるのもグッドポイントですね。
キャッチコピーである「全芯主義」の名の通り、オフセンターヒットにもめっぽう強く、飛距離のロスが少ない。スピンはやや少なめですが、ボールに十分な高さが出るので、グリーンでもしっかり止まる球が打てます。
「やさしいながらもスタイリッシュな見た目が、キャディバッグのなかで存在感を出してくれますね」(石井)
AIフェースの新境地
どこに当たっても真っすぐ飛ぶ!
トータルバランスにすぐれた軽量モデル
これまでのAIフェースは、ある程度、フェースをスクエアに近い向きでインパクトできた場合を前提に設計がされていましたが、今作のPARADYM Ai SMOKEシリーズはそこからさらに進化。打点位置だけでなく、フェースの向きも考慮し設計がされていて、まさに「どう打っても曲がりにくいクラブ」になっています。
同シリーズのなかで「MAX FAST」はもっとも軽量なモデルで、「クラブをラクに振って飛ばしたいな」というゴルファーにオススメ。ただ軽量化しているのではなく、ネックを可変スリーブではなく接着式にして余剰重量を最適化するなど、クラブとしてのトータルバランスを丁寧に整えているあたりは、さすがキャロウェイですね。
100万以上のスイングデータをもとに設計されたAiスマートフェースが打点ミスをカバーする。どこに当たっても飛ばしてくれるという安心感はアマチュアにはうれしい
デメリットをとことん払拭したニュータイプの飛び系2モデル
バランスがとれた飛び系のi530 やさしさ全開のG730
i530は「ツアープロでも使えるのでは?」と思うほどバランスのとれたアイアン。ロフト設定以上にボールが上がりますし、番手間の飛距離差も等間隔に近く、非常にきれいな“飛距離の階段”が作れます。
前作から打感のよさも向上し、フィーリングの面でも上級者が好むようなアイアンに進化しています。
G730は、やさしさが全開! ソール幅が広く、バンスも強いので、ダフりのミスへの補正能力がとても高い。
ヘッドサイズはそこまで大きすぎず、重心距離も極端に長そうには見えません。プレーヤーの「扱いやすさ」まで考慮された、やさしい飛び系アイアンです。
飛距離が出ることに加え、球の高さが十分に出るのがi530の特徴。上級者は長い番手だけをチョイスする〝コンボセット〟での使用もオススメ
G730の幅広ソールはダフりのミスを大幅に軽減してくれる。「実戦(ラウンド)に強いアイアンとはまさにこういうアイアンですね」(石井)
いかがでしたか? ぜひ、i530とG730を手に取って、各特徴を体感してください!
レッスン=石井良介
●いしい・りょうすけ/1981年生まれ、神奈川県出身。PGAティーチングプロ資格をもつプロゴルファー。アマチュアのリアルなスイングや感情に訴えかけるアドバイスが多くのゴルファーを開眼させ、全国で行なうレッスン活動はつねに満員。レッスンの日程はインスタグラム(@ryosuke.ishii.214)などで開示中。
[アマチュア代表]
丸山雄史さん
●38歳●ゴルフ歴15年●平均スコア96.7●ヘッドスピード43m/秒
[アマチュア代表]
渡邊一郎さん
●23歳●ゴルフ歴3年●平均スコア100前後●ヘッドスピード42m/秒
写真=田中宏幸
協力=日神グループ 平川カントリークラブ