クラブの重さを感じて“持つ”とは…?稲見萌寧のコーチが解説!

2020-21年の賞金女王・稲見萌寧が昨年、復活優勝を成し遂げた要因のひとつに新コーチ・柳橋章徳の存在があった。その柳橋が“ゴルフスイングの本質に迫る”チームを結成!

体やクラブの使い方の原理原則を追求し、個人の潜在的な能力の限界を突破(ブレイクスルー)するメソッドを毎月紹介しよう。

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クラブの重さに“負ける”ところからはじめよう

前傾せずにクラブをお腹の前で持つ。手首をゆるめてクラブの重さに負ける重さを感じながらヘッドの位置を戻す。そのまま前傾してアドレス完成

直立してクラブを持ったところから、手首をゆるめてクラブを垂らし、重力に「負けた」状態を作る。そこから再びヘッドを持ち上げ、勝ちも負けもしない拮抗した状態にすると、クラブを下から支えるように持つ感覚がわかる。

クラブの重さと拮抗した力で下から支える

――前回はアドレスの姿勢について教えていただきました。「いい姿勢」で構えようとせず、もっと腹筋を使うということでしたが、ほかにもこういった「力の使い方」に関するカン違いはあるのでしょうか?

柳橋:たくさんあると思います。代表的なところでは「クラブの持ち方」ですね。

――グリップですか?

柳橋:いえ、グリップの握り方というよりももっと根源的な「クラブをどう持つか」ということ。

安岡:アマチュアはグリッププレッシャーが強すぎる人が多いですが、それはそもそもクラブの「持ち方」が悪くて余計な力が入ってしまっているのが大きな原因のひとつだと思います。グリップを握るというよりも、下から支えてクラブの重さに拮抗させる感覚が必要なんです。

――拮抗させる。バランスをとるという感じでしょうか?

安岡:それに近いですね。腕や手にクラブの重さと同じだけのテンションをかける感じ。

――どうやったらそれを感じられますか?

柳橋:まずはクラブの重さに「負ける」ところからはじめるのがいいと思います。直立して手元がおヘソの前くらいにあり、クラブは水平よりちょっとヘッドが上がるくらいの位置でクラブを持ってください。軽くワキが締まったアドレスに入る前の姿勢をイメージすればいいと思います。そこから手元の位置を変えずに手首をゆるめて、ヘッドを下に垂らしてください。これがクラブの重さに「負けていてる」状態です。

――重力に負けているという感じですか?

柳橋:そうですね。このとき手元の位置を保ってヘッドが地面に落ちないようにすると、クラブを下から支える感じが出てくると思います。そしてこの下支えのテンションを維持しながらヘッドを持ち上げていき、元の位置で静止させた状態がクラブの重さとそれを支える力が拮抗している状態です。

安岡:形は最初の状態と同じですがワキの締まり方やヒジのテンションなどに変化を感じられるはず。こうやってクラブを持てば、余計な力が入ることはありません。

クラブを下から支える感覚でグリップするには、両親指や右手の人差し指は離してみるとよい。下の「重さに負ける」4ステップも、右のような7本だけのグリップでやってみるとより感覚がつかみやすい。

ゴムバンドのテンションを感じながらクラブを持つ

引っぱるというよりゴムの長さを保つテンション。クラブを持ってもこの感覚を残しておきたい

ゴムバンドを背中に通して体にかけ、両端を持ってアドレスする。クラブを持っても、このときと同じような背中の張りや腕の力感、テンションを感じられていれば、リキまずにクラブを持てる。

肩甲骨の間を開いて適正なテンションを保つ

――こうやって下からクラブを支えられれば、リキまずに構えられるんでしょうか?

山縣:大事なのは、クラブの重さを正しく感じること。リキむっていうのは、出力のエラーなんです。たとえばベンチプレスで40キロのバーベルを持ち上げるのに、置かれているバーベルを80キロだと思ってパワーを出しているようなもの。最初から40キロという重さを正しくイメージできていれば余分な力を出さずにジワッとバーベルを押し上げられますが、80キロだと思っていたらガン! と一気に行ってしまってコントロールできませんよね。

安岡:アマチュアは、クラブの重さに見合わない力でクラブを持っているからリキむ。クラブの重さに見合った力感で、この拮抗しているテンションをつねに感じていることが大事なんです。

――なるほど。

山縣:このとき、肩甲骨のポジションもとても大事です。左右の肩甲骨が寄って肩がうしろに引かれた状態では、このテンションは感じられません。肩甲骨の間が開いて腕にも一定のテンションがかかった状態でクラブを持ちたいですね。

――「前へならえ」のように腕を前に突き出す感じですか?

山縣:形は似ていますが、「前へならえ」のようにピンと強く突き出すと、やはりリキみになってしまいます。ゴムバンドを背中に回して両端を手で持ち、軽く引っぱるようなテンションをかける感じが近いと思います。

安岡:このゴムバンドの張力を「クラブの重さ」だと思ってください。腕を突っぱるわけでもなく、引きつけるわけでもないちょうどいいテンション。まさに「拮抗」です。

柳橋:スイング中も、このテンションが変わらずキープできれば、アークが安定していい軌道で振れるんです。プロが「腕の長さが変わらない」などと表現するのはこの感覚なんです。

――この感覚がわかれば、ヒジがひけたりするのも防げますね。

山縣:デスクワークなどで背中が硬くなっていると、肩甲骨の間が開きにくくなってリキみの原因になります。肩甲骨のストレッチもお教えするので、仕事の合間やゴルフのスタート前などにやってみてください。

ゴムバンドに引っぱられる張力と、それを維持する腕のテンションが拮抗しているのが理想的な力感。ゴムのテンションをクラブの重さに置き換え、過不足なくバランスがとれていることが大事。

スイング中も背中のテンションをキープする

ゴムバンドを持っているようなイメージで背中の適度な張りと腕のテンションをキープしたままスイングできれば、ヒジが引けたり腕が縮こまることなく、大きくキレイなアークでスイングできる。

いい構えを作る肩甲骨ストレッチ

手のひらを外に向け、腕を腰のうしろに回してヒジを体に近づけながら背中を丸めて前かがみになる。次に天井を見るように顔を上げながら背中を大きく反らす。腕は親指をうしろに向けるように外旋する。

肩甲骨の間が硬いと構えも悪くなります!

安岡幸紀
●やすおか・ゆきのり/1988年生まれ、高知県出身。高知高校ゴルフ部で活躍。卒業後、指導者の道に進み、日本プロゴルフ協会のティーチングプロA級を取得。現在はCHEERS GOLFの代表を務め、柳橋らとともにゴルフの原理原則の研究を行なっている。

山縣竜治
●やまがた・りゅうじ/1982年生まれ、山口県出身。國學院大学の野球部で選手とコーチ業を兼任。運動学やチーム指導などを幅広く学び、トレーニング部門も自身の体を実験体に専門的に経験。現在はゴルフの解剖に力を入れ「太子堂やまがた整骨院」で総院長を勤める。

柳橋章徳
●やぎはし・あきのり/1985年生まれ、茨城県出身。最先端のスイングや理論を研究し、23年6月より稲見萌寧とコーチ契約を結び、1年3カ月ぶりの復活優勝に貢献したツアープロコーチ。YouTubeチャンネル「BREAKTHROUGH GOLF」でも上達に役立つ斬新な情報を発信中。

構成=鈴木康介
写真=相田克己、田中宏幸
協力=GOLFOLIC中延店

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