パリ五輪のエース・松山英樹のドライバーを解説!ボールを強く叩ける要素とは?

パリ五輪のゴルフ競技には、日本代表4選手が出場。その選手たちの情報や最新のゴルフ理論に精通した石井忍がスイング解説。

日本とパリの時差は日本が7時間進んでいて、たとえば試合日の終盤の現地17時だと、日本は深夜0時だが、アメリカのように早朝になる時間帯より観やすい!

このコーナーを読んで、ワンランク上の目線で観戦を楽しもう。

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曲がらない要素をもちつつ「安定してボールを強く叩ける」スイング

日本男子のエースとして、メダル獲得の期待がかかる松山選手。肩幅より広いワイドスタンスの構え(1)が特徴的で、回転や蹴り上げによるタテへの出力を使うタイプではなく、ヨコ移動の2軸スイングで飛ばすタイプです。

テークバックは体でクラブを振り上げていくので、お腹と手元が同調しながら動いていく(2)。ハーフウェイバックでは右腕を伸ばし気味にすることで右の肩甲骨が押されていきますが、回転量が多いタイプではないので骨盤の回旋は45度くらい(3)。この腰は、これ以上回らないのではなく意図的に制限をかけて回りすぎを防ぎ、上半身だけを深く捻転させています。

松山選手は、トップで「間」をとるのも特徴ですが、クラブが上がり切る前に左方向へ移る動きがはじまっている。腰のヨコ移動によって、松山選手のうしろの右側にいる女性ギャラリーの右ヒジが(6)よりも見えなくなっています(7)。これによって上半身と下半身の捻転差が最大になりますが、その差はじつは決して大きくなく、上半身と下半身のタイムラグを少なくすることでルーズさをなくしています。

その切り返しからインパクトまでが、松山スイングの真骨頂。右側のサイドベントが極めて少ないので(10)、曲げずにボールを強く叩ける。正面から見て体が逆「く」の字に曲がらないダウンスイングは、日本ツアーのフェアウェイキープ率を無双していて「日本一曲がらない男」といわれる稲森佑貴選手と同じ。右肩が下がらないのはフェードヒッターの生命線で、右サイドの高さをキープしながら右腕を伸ばすと安定してボールを強く叩けます(11)。

タテよりもヨコ移動の力を使ったスイングでも、決して回転しないわけではなく、小さい範囲内で鋭い回転は行なわれています。両肩は地面に対してレベルではなく、スピーディにタテ回転しているので(12)、フェースのローテーションが抑えられるのも、強く叩こうとしても安定性を担保できるポイント。これを習得するには「パターをフルスイングして真っすぐ飛ばす」イメージが有効です。

いかがでしたか? パリ五輪での松山選手のメダル獲得に期待しましょう。

松山英樹

●まつやま・ひでき / 1992年生まれ、愛媛県出身。180cm、90kg。日本8勝、米国9勝(メジャー1勝)、欧州2勝。東京五輪では銅メダルをかけて7人のプレーオフが行なわれたが、惜しくもメダル獲得ならず。その雪辱を果たす活躍に期待が高まる。LEXUS所属。

解説=石井忍

●いしい・しのぶ / 1974年生まれ、千葉県出身。ツアープロからコーチに転身し、エースゴルフクラブを主宰。プロやプロの卵の指導のほか、国内外のトーナメント解説者としても活躍中で、国内外の最新のツアー情報を熟知している。

写真 = 田辺 “JJ” 安啓 、ゲーリー小林

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