初優勝の鍋谷プロにインタビュー!強化の秘訣は「日記を…」
ツアーで活躍しているプロたちは誰もが自分のゴルフをよりよいものにしていくために様々なことを考え、走り続けている。
どんなことを考え、どのようにゴルフに向き合っているのか。インタビューをとおして、その姿を探っていく。
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ショートゲームを強化して優勝できた
―― 昨シーズンを振り返ってみていかがですか?
鍋谷:キャリアハイの1年で、昨年の目標が優勝と最終戦の日本シリーズに出ることだったので、両方達成できたのは本当によかったです。
―― 昨年がキャリアハイになった要因は何ですか?
鍋谷:1番はショートゲームですね。シードを獲った年の部門別データは、パーキープ率が48位で、単純にボギーを打っている回数が多かった。ショットはそこまで外していなかったけど、アプローチでは初歩的なことでミスしたり、中途半端な距離が残ったりして。
連戦になるとそのことがジャブのように効いてしんどくなって、次のホールに影響してると感じていました。そこからアプローチに力を入れるようになって、昨年はパーキープ率6位になりました!
―― それが初優勝に繋がったんですね。
鍋谷:優勝したカシオワールドオープンでは、前年に32アンダーでの優勝があったせいか、セッティングがすごく難しくなったんです。グリーンもすごく固くなって、まったく違う感じでしたが、ショートゲームのフィーリングがよくなったおかげで優勝できました。
―― どういう練習をしましたか?
鍋谷:アプローチはラフよりフェアウェイのほうが苦手で、フェアウェイの薄い芝はミート率が大事なんですけど、緊張してミスをしていました。なのでフェアウェイから打つ練習をたくさんしたり、あとは、強い選手をよくみていました。
強い選手はどんな状況でもショートゲームの波が少ないんですよね。たとえば同級生の星野陸也選手とよくプライベートでラウンドしますが、彼はショートゲームがすごく上手で、1番差を感じました。自分もうまくなったほうがいいし、絶対そうならないと上にはいけない。逆にそういうふうにできればもっと上にいける可能性があるなって。
―― 分析力が高いですね。
鍋谷:分析は自分のなかですごく大事だと思っていて、自発的に分析をはじめたのが、小学生のとき。「OBや3パットがなかったら自分は今日いくつのスコアで回れたんだろう?」みたいな分析をはじめて、たとえばスコアが80だとして、3パットが3回だったら77 で、プラスOBを1回打ってしまったら75になる。3パットとOBを引くだけで、自分は75で回れる、75で回る力はもうすでにあるっていうふうに考えていました。
―― 小学生なのにすごい!
鍋谷:自分が下手だと思いたくなかった(笑)。そういうシンプルなものからはじまって、プロになってからはデータは出してもらえるけど、いまいちわかってないところもあったりして、逆にデータをほったらかしにしていた部分があった。
でも3、4年くらい前にちゃんと分析しようと思い、そのころから日記をつけはじめました。コロナで試合がなくなって考える時間も増えたし、ちょっと自分を見つめ直さないといけないなって。今も続いています。
―― 日記にはどんなことを書いていますか?
鍋谷:ゴルフのことがメインで、気づいたこととかを書いて、読み返すことも多いです。つねに持ち歩いています。
―― 日記を書く前とは変化はありましたか?
鍋谷:全然違います。試合のときは、いい結果を出したいと思ってるけど、いい結果が出るかわからなくて不安になるし、ほぼほぼいい結果なんて出ない。自分がしていることが正しいかどうかがわからなくなることもある。そういうときも日記を書いていたら、自分はこれをしたい、こういうふうになったっていう「今の自分」が見えてきて自信にもなるし、冷静になります。
―― 日記を書こうと思ったきっかけは何ですか?
鍋谷:たまたまテレビで見たプロ野球選手、ジャイアンツの丸さんが、全打席メモをつけてるらしく、それを分析して次の打席に備えると話していたのを見て、そういうのはやっぱり大事なんだと思いました。
―― いいと思ったことを即実践できるというのはすごくいいですね。
鍋谷:すごく必死だったんです。ちょうど結婚して子どもが産まれたタイミングで、自分がダメになったら家族もダメになると思っていて、責任感からくる必死さがありました。
―― その時期に結婚を決意できたのはなぜですか?
鍋谷:高校生くらいから所帯をもつのに憧れがあったんです。だから早く結婚したいと思っていました。結婚するとなると家族を養わないといけない。でもそのときはシードも獲れていない時期で、自分のことも養えないのに結婚はできないと思っていたんですけど、奥さんが思いっきりのいい人で、支えるからガンバろうっていわれて結婚しました。人生のターニングポイントですね。
―― 奥さんとお子さんがいる生活はいかがですか?
鍋谷:子どもは今3歳で大きくなってきて、僕のこともけっこう好いてくれていて(笑)、電話したいとかいってくれます。試合のときは毎日ビデオ通話します。
―― すごく元気をもらえるのでは?
鍋谷:めちゃくちゃもらえます。奥さんは当たり前にシビアなこともあるけど、子どもは、たとえば予選落ちしたとしても、帰ってきただけで喜んでくれる。お土産を1個買って帰っただけでもめっちゃ喜ぶんです(笑)。そのありのままの純粋な気持ちに癒されるし、裏がない明るさがいいですよね。
奥さんのおかげでゴルフを続けられた
―― ゴルフを辞めたくなったことはありますか?
鍋谷:あります。2017年、18年くらい。20年くらいまでQTはけっこう通っていて、前半戦は出ていたけど、中盤戦、後半戦はほとんど出たことがなかったんです。いつも春先に結果が出せない、 でもQTではある程度結果が出せるというのを繰り返していました。
全然ダメではないけど、上との差をもろに感じるときがすごくしんどくて、周りの目も気にしていました。そのとき悩みを打ち明けられる人がいなかったんですけど、そんなときに奥さんに出会いました。なぜかよくわからないんですが、自分がいいたいことを本当になんでも話せたんですよね。
―― 奥さんはどういうアドバイスを?
鍋谷:いろいろといってくれましたが、あまり覚えていないんです(笑)。でもすごく支えになって元気になったと思います。なんとかなるでしょ! みたいな。
―― 奥さんと二人三脚でやっているのですね。どういう部分が好きですか?
鍋谷:僕は関西人でけっこうしょうもないことをいうのが好き(笑)。はじめのころそれをめっちゃ笑ってくれたんです。そこがすごく好きで、でも免疫がついてくると笑えなくなってくるんですけど、月に1回あるかないかぐらいでまだ笑ってくれるんです。そういうところですね。まだまだ笑ってくれるなって。
―― 最後に今シーズンはどういうシーズンにしたいですか?
鍋谷:前半戦で優勝したいです。そこで優勝できたら、その先の1勝がまた見えてくると思います。あとは海外メジャーに出場したい! 全米オープンの最終予選は受けられるし、そういうチャンスはあるので、そのチャンスをつかめるように最高の状態に仕上げたいです!
鍋谷太一
●なべたに・たいち/1996年生まれ、大阪府出身。177cm、74kg。2023年シーズンはSansan KBCオーガスタゴルフトーナメントで3位タイ、フジサンケイクラシックで3位に入り、カシオワールドオープンで初優勝を果たした。国際スポーツ振興協会所属。
写真=ゲーリー小林
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