横に転がる“究極のロブショット”の打ち方!研究者が徹底解説
ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。
その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。
レベルアップを目指すゴルファーに新しい上達のヒントをもたらす!
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テニスでの弾まないアンダーサーブに学ぶ
前号では、打球が落ちてから左へ転がるロブショットの説明をしました。今回もテニスを例に説明すると、ソフトテニスにはアンダーカットサーブという技があります。薄くカットするように打ちながらソフトテニスのやわらかいボールを潰し、フェースにへばりつかせて強い回転をかけるもので、落ちてから鋭角に曲がってほとんど弾まないボールになります。硬式テニスではボールが硬いので厚く当て押し出しながらローテーションを加える必要がありますが、ソフトテニスほどではないもののかなり似たボールを打つことができます。
その打ち方を詳しく説明しますと、テークバックではラケットを立てた状態からアウトサイド・インの軌道でインパクトに向けてラケットを振り下ろし、厚く当てにいきます(イラストA参照)。実際のインパクトは一瞬ですが、ボールがフェースに乗っている接触時間をかせぎながら、同時に手首を右に捻って時計の文字盤でいうところの6時半から8時くらいまでの領域をラケットの角度を変えて舐めるようにJ 字型に振り抜いていきます。(ちなみにこのアンダーサーブは卑怯なイメージがあり、テニスではほとんど使われることはありません)
ここでのゴールはボールに水平方向のジャイロスピンをかけるイメージになりますので、適宜調節してみてください。南極部分を下にして地面に着地したボールは一気にエネルギーが減衰するため、落ちてからあまり弾まない打球になる、と私は解釈していますが、これは実際にスピン方向を解析しての結果ではないのであくまでも目安となります。
落ちて転がらないアプローチを目指してみる
さて、テニスのアンダーサーブをゴルフのアプローチで再現してみたいと思います。スイング軌道はロブショットのときとは逆で、少し強めのアウトサイド・イン軌道です。ターゲット方向に意識を向けながらクラブヘッドを手前に横スライドさせて、いつものインパクトのように厚くとらえにいきます。ロブショットではローテーションが終わったインパクト位置でのフェース状態をゴールに設定していましたが、このショットではインパクトで方向性を確保したうえで、インパクト直後にボールをフェースに乗せながら徐々にローテーションしてスピンをかけるイメージとなります。
アウトサイド・イン軌道でボールを厚くとらえてしっかりボールにパワーをかけながらイラストのようにフェースをトゥダウンし、リーディングエッジを少し立てながらボールの左方向、時計の文字盤でいえば、おおよそ8時の方向へなめるように振り抜きます。このときのスイング軌道は、イラストと同じで上から見るとJ字型に振っていると思います。クラブはシャフトからフェースが張り出している構造のため、ラケットのように縦にするのは制限があるのですが、ここでの縦にするというのは「心意気」ということにしておきます。なお、このヘッドの動きというのはボールをつかまえにいく動きとは逆になるので、ここではインナーカウンターは使いません。
本来、ボールはフェースの向いている方向に飛び出すという話はさんざんしてきましたが、このようにインパクト方向をまず確定したうえで、フェースにボールを乗せた状態で間髪を入れずローテーションを加えてやると、出球方向を維持したまま右方向のスピンをかけることができる。このときのタッチの感覚ですが、フィーリングとしては京都などの橋の欄干にある擬宝珠(ぎぼし)のうしろ側から手を触れて、腰を左回りに徐々に開きながら擬宝珠の左側をなでるようにすると、わずかですが接触時間を延ばすことができると思います。
今回のやり方では、アウトサイド・インのスイングから入ってJ字型に振り抜きます。窮屈にならないように腰を開きながら自然にフェースを横に回転させてボールの左脇を抜いていくシームレスな変移をしてください。私はテニス経験があるためか、ほんのわずかの接触時間でも状態を把握してその時間内で仕事ができる自信があるのですが、最初うまくいかなくてもまずは気楽に遊ぶ感覚で試してみましょう。
また、距離の打ち分けは、これまでどおり手の平でボールの存在を感じてインパクト圧のコントロールで自信をもって行ない、振り幅で距離を推し量るようなことはしません。とくにこういった繊細なショットでは、ストロークの長さはリズムにも関係して安定性につながりますので結構重要です。ボールが落下後、右に転がってスライス回転が確認できればとりあえずOKです。
ストレスなく打てるようになったら、振り抜く方向を遊び半分でいろいろ変えてみて、さまざまなバウンドや転がりのパターンを試してみましょう。テニスでの経験からいえることは何より大切なのは、まずは遊んでみることです。遊び心が新たな可能性の扉を開き「一を知って十を知る」的ないわゆる知識の連鎖効果が働いて、いつの間にかいろいろなことができるようになり高度な技も普通のことにすることができるのです。それこそが本当の習得といえると思っています。
イラスト・文 = サンドラー博士
●ゴルフ好きの研究者 。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。
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