“スライス”は武器になる!プロコーチが教えるスライスを活かす方法とは…?
アマチュアがスコアアップする近道は「ドライバーの上達」にあると目澤秀憲は言う。とくにコースでは、ドライバーのOBをなくすことが好スコアに結びつくポイントだ。今月は、飛ばしを意識したセットアップとスイングについて解説していこう。
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日本のコースではスライスのほうがスコアをまとめやすい
スライスは飛ばないと言われますが、そんなこともありません。多くの場合、飛ばないのはスライスだからでなく、当たり損ねているだけなので、スライスで飛ばせばいい。意に反して出てしまったスライスはミスを生みますが、イメージどおりにスライスが打てれば、それは使い勝手のいい武器になります。日本のコースでプレーすることを考えても、フックよりスライスのほうが有利と言えます。
私が知るかぎり、日本のゴルフコースでクラブチャンピオンになっている方はスライスの使い方がうまい。低いスライスを打って左へのミスを消したり、なるべく早く着弾させて打球が左右に大きくブレるのを防いでいます。全体的にホールがタイトでグリーンが小さく、ターゲットがピンポイントに絞られる日本のゴルフコースでいいスコアを出すには、フェアウェイキープが必要条件と言ってもいいのですが、そんなコースに合わせた球が打てている。
フェアウェイの幅が20ヤードだとしたら、左サイドを狙って20ヤードをフルに使う、というように。もちろんプロでも、スライスを度外視しているプレーヤーは少数派です。
日本のゴルフは地上戦 アメリカのゴルフは空中戦
プロでもアマチュアでも、いいスコアを出せるのは、コースに合わせた球が打てているからにほかなりません。片山晋呉プロなどはその典型のようなプレーヤーで、自分のディスタンスを完璧に理解されていると思います。350ヤードは飛ばなくても飛距離を出せないわけではありません。270から280ヤードを8割くらいの力感で打てるので、コントロールが利いてベストポジションにボールを運べます。
ドライバーで350ヤードくらい打つ人は、3番アイアンで270から280ヤード飛ぶのですが、ちょっとアゲンストになると影響を受けてティーショットが手前に落ち、セカンドショットが難しくなります。かといってドライバーを振っていくとOBのリスクが出てきます。つまり、日本のコースでは飛びすぎるのも問題。片山プロのようにロングショットをコントロールできたら無敵です。
これに対し、アメリカのコースは広くて距離があります。ターゲットはそれなりに絞られるとしても、基本的に飛ばさないといけないので空中を広く使うことになります。日本が地上戦なら、アメリカは空中戦のような違いがあるわけです。そう考えると松山英樹プロは本当にすごい。地面に打たなきゃいけないコースばかりの日本でゴルフを覚え育ったのに、空に打っていかなければならないアメリカで結果を出しているからです。
アメリカではキャリーで300ヤード打てたほうが、そのあたりのエリアが広くなったりしていてリワードがあるのですが、日本のコースでそれはないので、打球を抑えるほうがうまくなる。「自分がこう振ったら絶対に右(左)には曲がらない」という打ち方で、曲がる度合いをコントロールしているのです。
MEZAWA METHOD 1 バックスイングで手を遠くへ移動させる
飛ばしを意識したセットアップとスイングについて説明しましょう。 飛ばすにはボールに当てに行かずクラブを振り切るのが大前提ですが、曲がってくると怖くなって振れなくなってきます。これを防ぐための練習方法と考え、実践してみてください。
飛ばすには、普段よりもアッパー軌道でボールをとらえ、高弾道で低スピンのショットを打ちたいところですが、それには気持ちスタンス幅を広めにとり、右6に対して左4くらいの体重配分でアドレスします。これにより、ノーマルなアドレスよりもボールを右から見るスタイルになります。
スイングアークが大きくなる
バックスイングでは手をなるべく遠くへ運びながら、右の股関節を上に引っぱるように動く。体の捻転量が増えてスイングアークが大きくなる
右の股関節を上に引っぱるように動かす
大事なのはバックスイング。飛距離を伸ばす最大のポイントは、クラブがインパクトに戻ってくるまでにどれだけエネルギーを蓄えられるかですが、そこで重要な役割を担うのが腰の動き。バックスイングでは、右の股関節を上に引っぱるように動かします。右のお尻の筋肉をキュッと締めるようにするのです。
こうすると結果的に、手が右腰の高さあたりにきたときに肩が深く入って、手が体から離れた位置に移動する。つまり、バックスイングで体の捻転量が増え、スイングアークを大きくすることができるのです。腰が右にスエーするのはもちろん、股関節をうしろに引くのもよくありません。引いたぶん回転量は多くなりますが、回し戻す動きも大きくなって腰が引けやすくなるからです。
胸にドライバーをあててバックスイング
テークバックからバックスイングでこのように動くには、次に紹介するドリルが効果的ですのでぜひやってみてください。ドライバーのグリップエンド側が左にくるように腕のあたりにドライバーをあて、両腕を交差させて固定したら、右足6対左足4の体重バランスで広めにスタンスをとってアドレスの体勢を作ります。
そのまま前述した要領でテークバックし、グリップエンドがボールに向くところまで体をひねりましょう。足は動かさず、肩を回すイメージが大事。素早く動かなくてもいいので、しっかりひねって動きを確認してください。
足を動かさずに肩を大きくひねる
グリップエンドがボールを向くところまでバックスイングで体をひねる。足は動かさず、ゆっくり肩を回す
切り返しで上半身と下半身の捻転差を作る
切り返し以降は、逆さ素振りのイメージで腕を振って〝ビュン!〞とクラブを振り下ろしますが、蓄えた力をインパクトで爆発させるにはちょっとしたコツがあります。上半身がトップに至るタイミングで、下半身を目標方向に戻しはじめることです。具体的にはトップの位置で手を残したままのイメージで左に踏み込みます。
こうすることで体がひねれます。体をひねることがパワーの源になることはご承知のとおりですが、アマチュアの方はバックスイング側で一生懸命ひねります。もちろんひねらないよりはいいですが、本当に必要なのは切り返しでひねること。すなわち、下半身を先に目標方向に戻して上半身との捻転差を作る。これによって体にもクラブにも大きなトルクが生まれて、インパクト時のパワーをアップさせることができます。
トップの位置に手を残したままのイメージで左に踏み込む
上半身がトップに至るタイミングで、下半身を目標方向に戻しはじめる。ダウンスイングで上下の捻転差が生まれてパワーが蓄積される
目とボールとの距離感が変わらないようにする
ダウンスイングでクラブがゆるやかな角度で下りる、いわゆるシャローイングにもなります。ただ、はじめは誰しもスエーしがち。また、左に踏み込んだ反動で、早いタイミングで左ヒザが伸びることもあります。後者ではインパクトでヘッドが届かなくなり、体も腕も伸び切ってしまいます。
こうならないよう、はじめはゆっくり行ない、徐々にスピードアップしていきますが、その際に、目とボールとの距離感が変わらないようにして前傾角度をキープしましょう。テークバックの段階からこれができると、トップのあたりで下半身と背中側の筋肉が張ってきます。ある部分の筋肉が伸ばされることでこうなるわけですが、切り返し以降では伸ばされた筋肉が一気に縮むことで下半身が先行、上半身、腕、さらにはクラブへと力が伝わっていきます。
左足を踏み込みながら振る
切り返しで下半身を先行させて上半身との捻転差を作るには、次のドリルをやっていただくのがおすすめです。ボールを左寄りに置いた状態で両足をそろえて立ちます。はじめにアドレスし、右足の位置に左足を寄せて両足をそろえてもOKです。
その場で両足をそろえたままスイングを始動、クラブがトップの位置に上がり切る直前に左足を左に踏み込んで下半身を先行させ、その勢いでスイングします。ボールを打ってもいいですが、はじめはこの要領でテンポよく素振りを繰り返しましょう。ねじれを解放しながらパワフルに振る動きが身につきます。
❶ボール位置を想定してスタンスを広く取ったあと、右足に合わせて足をそろえる
❷クラブを振り、トップに上がったな、という瞬間に左足を踏み出す
❸そのまま勢いよくクラブを振り切る。これをテンポよく繰り返
フォローの位置からスイングをスタート
ドライバーは飛ばすクラブですが、飛ばそうとするあまりリキんでしまう方が多いと思います。リキむと上半身主導になり、ダウンスイングでクラブが上から入る、あるいは右肩が突っ込んでインパクトが窮屈になります。アッパーブローで打てないのはもちろん、スイングパスが極端なアウトサイド・インになったり、フェースが開いてミスの温床になります。
そうなったときに、スイングパスやフェース向きに手をつけるのは逆効果。ラウンド中であればなおさらです。なにをすればいいかと言うと、スムーズにクラブを振る感覚を呼び戻すこと。それには素振りが効果的です。なかでもフォローのポジションからスタートする素振りがおすすめです。クラブが静止した状態からスタートすると、その瞬間に力が入りがち。でもフォローから振りはじめるとクラブヘッドの重さを使ってスタートできます。
助走がつくことにより力が抜け、クラブに振られる形でスムーズに動く感覚が得られます。ただ、グリップをギュッと握ると腕とクラブが一緒に動いてフェースが開いたり、シャフトのしなりを使えないので、クラブの重さを感じられる程度に手や腕の力を抜いておきましょう。素振りなので大胆に抜いてください。これをやると自然にクラブパスやトップのポジションなどがそろい、自分のスイングが形作られていくので普段の練習でも取り入れるといいでしょう。
スムーズにクラブを振る感覚を呼び戻す
フォローのポジションからスイングをスタート。クラブヘッドの重さによって振られる感覚を味わう。手や腕からは力を抜いておく
MEZAWA METHOD 4 両手の小指と薬指の4本だけしっかり握る
参考までに、実戦でこのようにドライバーを振れる条件をお伝えしておくと、まずはフェアウェイ、もしくは安全なエリアの横幅が60ヤード以上あること。OBがなければなおよし。さらにフォローの風なら言うことなしです。風がフォローだと打球が曲がりづらくなります。右利きの方なら右からのフォロー、左利きであれば左からのフォローでよりいい条件になります。
飛ばすにはボールを高く上げてキャリーを出し、スピン量を適正にしてランを出したいのですが、ティーアップを高めにするとこの弾道が打ちやすくなります。目安はボールの半分が、ヘッドの上から出るくらいです。アドレスしたら左肩がかぶっていないか確認しましょう。かぶったまま振るとインパクトでヘッドが上から入ってエネルギー効率が悪くなります。
ボールを右から見るようにすると左肩のかぶりを修正できます。最後にグリッププレッシャーもチェック。飛ばそうとすると、ほぼ全員がグリップをきつく握ってしまいますが、これはヘッドを走らせるうえで百害あって一利なし。とはいえ、ゆるゆるすぎてもクラブが安定しないので、両手の小指と薬指の4本だけをしっかり握ってください。
いかがでしたか? ぜひ、目澤メソッドのスイングをレッスンに取り入れてみてください!
ゴルフコーチ 目澤秀憲
●めざわ・ひでのり/1991年生まれ、埼玉県出身。5歳からゴルフを始め、プロゴルファーを目指す。日本大学法学部卒業後、「TPI」(タイトリスト・パフォーマンス・インスティテュート。アメリカのインストラクター養成プログラム)を知り、セミナーを受講して感銘を受ける。24歳で指導者に転身後は、ボストンでの語学留学を経て、TPIの5つの資格のうち「ゴルフ」と「ジュニア」の最高水準であるレベル3を取得。一般ゴルファーへのレッスンをしながら、2021年には松山英樹と専属コーチ契約。松山のマスターズ日本人初制覇に貢献した。ゴルファー個々の身体的特徴に合った動きを教える「コーチング」をベースに指導。昨年から河本力のコーチも務め、ツアー優勝へと導いた。
文=岸和也 写真=高橋淳司
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