ベストスコア更新に「絶対に必要なこと」とは?人気コーチが解説
練習はたまにちょっと。ラウンドは月1くらい。それでもつねにスコア90を切ってくる人が結構いる。
そんなゴルファーは、知識や経験などを活かした「ゴルフ脳の高さ」でプレーしていて、状況判断や攻略ルート、番手選択が上手だから大叩きしないのだ!
その賢いゴルフをマネすれば、ベストスコアを更新できるかを検証。結果、スイングやテクニックよりもマネジメントの効果は絶大だった!
本コースでデータ収集&レッスン!
「コースが簡単だったからスコアがよくなった、とはしたくない」という今野コーチのリクエストで、広大な敷地にドッグレッグ、傾斜、池越えなどのシチュエーションがあり、さまざまなショットに挑める本格コース「サザンヤードカントリークラブ」を2日間プレーした。
●茨城県東茨城郡城里町下古内776
☎029-288-6000
●18ホール・パー72。レギュラーティーから
トータル6615ヤード
1日目 伊藤さんのゴルフ力CHECKラウンド
初日は、伊藤さんの普段のゴルフを見せてもらった。その際に、ガーミンのウォッチ型GPS距離計測器「アプローチS70」と「Garmin Golf アプリ」を使用し、ショットの結果や傾向を収集。また、上達に必要なポイントや考え方を読者にもわかりやすく解説するために、表示される画面やデータも活用する。
アプローチ S70
Garmin Golfアプリ
ベスト更新は攻守の起点!ティーショットがキーポイント
伊藤 初日のゴルフでは、とてもベストを更新できるとは思えません……。それに、コースマネジメントの仕方しか教えてくれないんですよね?
今野 それだけで十分です。ミスショットの多さを気にしていましたが、昨日のスコアはそれ以上にマネジメントの悪さによって叩いています。伊藤さんはサッカー経験者でしたね?
伊藤 はい。サッカー部でした。
今野 スタート前にまずは、14本のクラブの役割りについて。ドライバーはサッカーのポジションでいったらどこでしょうか?
伊藤 シュートを放つフォワード?
今野 いいえ。それはパターですね。「ゴールを決める=カップに沈める」ですから、フォワードはパター。ドライバーはキーパーなんですよ。
伊藤 ゴールを守る役割りですか!?
今野 一番飛ぶクラブだからそういうイメージをもちにくいですが、守備の要であり、攻撃の起点でもある。キーパーから出されたボールがディフェンダーや前線に渡る。中盤の選手がアイアンやウエッジで、ゴール前のパターへとつないでいきシュートを決めるのです。
伊藤 なるほど! キーパーがボールを出すのをミスするとピンチになる!
今野 そうです。だからアベレージゴルファーのレベルでベストスコア更新を狙うラウンドは、ティーショットの成否がとても重要。ティーショットを失敗した時点で予定していたスコアで上がるのが苦しくなってしまいますからね。
伊藤 ですが、そのティーショットもご覧のありさまでして……。
今野 それもホールの見方や狙い方でよくなります。僕は今日のスコアを48・49の97と予想します!
レイアップするか、しないか判断の決めては「タテの距離」!
ドライバーの落としどころが狭く、左右ともハザード。バンカーまで届かない飛距離では2打目以降がきつくなるパー5
伊藤 早速ですが、このスタートホール(1番)はティーショットが難しく、昨日もトリプルボギーを叩いてしまいました。1打目が大事。そして、番手を落としてドライバー以外のクラブで打つのは賢いマネジメントだと思うので、FWかUTで打ちたいです。
今野 狭いホールだから「安全に刻む」は良策ではありませんね。刻みは左右ではなく「タテの距離と飛距離」で判断するものです。FWやUTなら曲げない自信がありますか?
伊藤 いいえ。ティーショットで使った経験も少ないですし、上手な人の見よう見まねです。
今野 ドライバーで打ってもUTで打っても曲がるものは曲がります! 肝心なのは曲げてもOKなラインとエリアと距離を見極めることです。
このバンカー、じつは入れてもOK
伊藤 このホールは左右OBで、左にはバンカーが3つもあります。
今野 いや、ふたつですよ。タテ距離を測ってください。伊藤さんの飛距離だと3つめのバンカーは関係ありません。右のOBは浅いので絶対に避けたい。左のバンカー群。あれは「良性のバンカー」ですから入れてもOKです。
伊藤 バンカーに入れてもいいなら、左を向いてドライバーで打ちます。このホールは2打目からはアップヒルで、距離を残しすぎるとしんどいので。
今野 ナイスジャッジです! このホールの1打目はできるだけ飛距離を出したい。ヘタに刻まずドライバーを気持ちよくカッ飛ばしてください!
「良性バンカー」なら入れてもよし!
OBや林に入ってしまうのを止めてくれる仕掛けになっているのが良性のバンカー。罰打や大トラブルを防いで次につなげることができる。また、今野はそれぞれのバンカーの飛距離を測り、3つめ(一番奥)のバンカーは伊藤さんの飛距離(ドライバーで225ヤード)では越えないが、入ることもないことを確認。
「バンカーは自分のドライバーのMAXの飛距離が出ないと越えないなら避ける。また、越えるとしても入口までの距離を測り、出口から10ヤード以上あった場合は少し薄く当たったら入ってしまうので〝入口〞と〝出口〞の両方の距離を測って判断します」
ドライバーで打った1打目は、バンカー方向狙いから持ち球のスライスがかかってフェアウェイへ。前日トリを打ったホールをボギーで上がり、最高のスタートが切れた
コレは悪性バンカー
ホールの難易度を上げるためにあるバンカーは悪性。それぞれのティーマークからプレーするゴルファーのドライバーの飛距離に合わせて配置されているので、いい目印にもなるが入りやすい。たとえば、写真のホールはIPフラッグの右横、230ヤード地点にあるバンカー。左の林を嫌がると入りやすく、入るとパーオンが難しくなる。こういうときは「バンカー手前に刻む」など、入らない確率を上げるマネジメントが必要になる。
今回のレッスンではガーミンのウォッチ型GPS距離計測器「アプローチS70」と「Garmin Golf アプリ」を使用してマネジメントを行った。
アプローチ S70
「刻むエリア」+「ルート」が大事!
今野 ティーショットは今の感じで、基本ドライバーを打っていきましょう。
伊藤 最低限、打ってはいけないところを見極めつつ攻めていくスタイルですね?
今野 そのとおり! 守るだけではベスト更新は見えてきません。ですが、セカンド以降は刻みを多用していきたいと思います。これも「タテ距離」を重要視しながら組み立てていくのですが、「刻むエリア」+「ルート」を気にしましょう。
伊藤 昨日痛感しましたが、僕は残りが160ヤード以上になると精度が極端に落ちますよね。
今野 お気づきでしたか! 昨日のパー5のスコアが8、7、8、10でしたからね。ティーショットをミスして、大きく飛距離をロスしたホールでもスコアを崩していました。
伊藤 とはいえ、次打を狙った飛距離で狙ったところへ打てないんですから、マネジメントしたと
ころで……。
今野 狙ったところへ打てても打てなくても、その次のショットが安全に、楽に打てるルートを探すのです。将棋や囲碁と同じで打つ手によって、2手、3手目までイメージするのがマネジメントです。
伊藤 計画どおりあそこに飛んだ次はこんな状況、想定外でもこうなったあとはこうする、と予測をする?
今野 はい。その予測で困難な状況が生まれそうなら、別のプランを模索する。残り250ヤードに対して、100ヤードしか打たない刻みもアリ!
伊藤 150ヤードも残す?
今野 大きく残しても、その次を絶好のライとルートから打てるなら、伊藤さんが得意な7番アイアンでピンを攻めていける。刻みのショットは「攻めに転じる前の準備」なんですよ。
次打のことまで考えて、ドライバーで右サイドを狙うケース。狭い間を通るが、次打はバンカー越えを避けて花道を広く使えるので大きなチャンスが生まれやすい
花道を広く使うセーフティルート
刻んだあとのルート
木の手前の広いエリアへ安全に刻んだが、次打は林のすぐ右側狙いでバンカーも越えなくてはいけない。「短いホールだからといって策に溺れたケースですね」と今野。実際のピンまでの景色(写真左上)もプレッシャーがかかる状況になってしまった
「何ヤード残すか」まで考える!
パー4の1打目で大ミスしたり、パー5の2打目でよくある「グリーンまで届かないショット」は、30~100ヤードくらい残す選択ができる。そんな状況で「乗る、寄る確率」を現わしたのが下記のグラフ。やはり、30ヤード以内の近い距離は寄る確率は高くなる。しかし、31ヤードから79ヤードになると振り幅の調整が曖昧になるため、フルショットする80から100ヤードよりも確率が下がってしまう。30ヤード以内まで飛ばせないなら、80ヤード以上残そう。
番手選びは「ピンポジ」ありきです!
今野 マネジメントは「タテ距離」が大事と説明してきましたが、タテ距離をきちんと確認するとグリーンに乗る確率が上がります。
伊藤 それで随分助かりました。
今野 多くのゴルファーはピンまでの距離しか、見たり測っていません。ピンが手前なのか奥なのかを見ている人もいますが、ピンからフロントエッジ、バックエッジまでが何ヤードあるかまで測ると、グリーンを広く使うことができます。
伊藤 これまでは、風や高低差がなければ「ピンまでの距離に対してこの番手」という1択でしたが、今野コーチがいうように「ピンポジ」に対して3つの選択肢がある。
今野 そうです。ピンが手前でバックエッジまでが長ければ、1番手アップでピンの奥を狙う。ピンが奥でフロントエッジまでが広ければ1番手下げて、ピンの手前を狙う。
伊藤 この狙い方のおかげで、ピン奥でもグリーンからこぼれて寄せにくい状況からアプローチを打たなくていけないピンチが回避できました。僕の場合はとくにピンが手前のときに、グリーン奥を広く使う番手アップが、薄当たりでピンハイにつく、というのが多くてラッキーでした。
今野 ラッキーではなく、ピンポジから最良の番手を選んだ賜物ですよ。ビンポジとその前後の距離は、全ホールチェックをお忘れなく!
[ピンが手前の場合]
ピンまでの距離は151ヤードだが、自分がいる地点からバックエッジまでの距離は、174ヤードまで打ってもグリーンに乗る。手前に外してからのアプローチよりもパットのほうが楽で、計算どおりのスコアで上がれるケースが多い
[ピンが奥の場合]
ピンから奥のカラーまでわずか5ヤード。ピンまで打つとグリーンからこぼれてしまう可能性が高い。ピン奥のグリーン奥からは寄せにくい状況になることが多いので、1番手下げた届かない距離でもピン手前にオンが賢い狙い方になる
上の画像のピンが手前のグリーンを拡大した図。ボールからカップまでとその先の距離を見ると、カップの奥からカラーまでは23ヤードもある。1番手上げて距離が出てもグリーンには乗る
ピンまで151ヤードは、いつもなら7番アイアンだが、ピンが手前だったので6番で打った伊藤さん。予定どおりややピン奥にナイスオン!
「FWキープ・パーオン・パット」の数でウィークポイントと課題がわかる
トーナメント記録の「スタッツ」(部門別データ)で、アマチュアも必ず記録してほしいのが「フェアウェイキープ・パーオン・パット」の数です。今回、伊藤さんが使用したウォッチ型GPSの距離計は、スコアや使用番手を入力すると、連動するアプリで3つのデータを見ることができました。
ティーショットが曲がっていない=飛んでいるとフェアウェイがキープできる。すると、次打はいいライから打てるのでパーオンの数が増えやすくなる。つまり、パーオンは今回の伊藤さんのスコアアップでも重要視した、ティーショットの出来がカギになるのです。逆にパーオンが増えるとパット数は増える傾向にあります。
それぞれの回数を知ることで、今の自分のウィークポイントと課題を見つけ出し、上達に取り組んでください。
FWキープ・パーオン・パットの数は、スコアカードに記入するだけでも簡単に数えられる。フェアウェイをキープしたら○をつけ、スコアからパット数を引けばパーオンしたかわかる
自分のリアルな飛距離、知っていますか? 最大飛距離でのマネジメントはNG
打った番手の入力でアプリに記録される「クラブセット」のデータはおもしろい、というか多くのゴルファーが「こんなに飛んでいないのか」と落胆してしまうかも(笑)。しかし、これが本当のリアル。番手ごとの飛距離を“最大”で考えているのは理想で、“平均”が現実の飛距離です。
伊藤さんにもこの傾向やデータを加味して、狙う方向や持つ番手を替え、ショートしないマネジメントを多用しました。しかし、コースではこれが当たり前。練習場と違い、コースではラフ、傾斜など「普段よりも飛ばないシチュエーション」に遭遇する。このコースでの飛距離を自覚するだけで、スコアは簡単に縮まります。
ショットのズレの傾向は練習場とコースでは意外と違う!
伊藤さんが自覚している持ち球はスライス。しかし、上のデータ「ショットの概要(ドライブ)」ではティーショットはLeft(左)のほうが多い。スライサーなので左を向いてセンターに戻す弾道を打っていたので左サイドが多くはなりましたが、それでもヒッカケやチーピンなど左へのミスも出ていました。
下のデータは50ヤード以上からグリーンを狙ったときのデータです。スライサーなので右手前に外すことが多いはずが、奥に外す飛びすぎも結構あることがわかります。このようにコースでは本人の認識と違う結果が出るもの。打った弾道や飛距離を記録、記憶しておくクセをつけましょう。
上段がドライバーの結果。練習場ではスライサーなのに、コースではじつは左へのミスも多い。下段の「アプローチ(50ヤード以上から)」のデータでは、ドライバーとは逆の現象が起こっているケースもあるので“思い込み”にも注意しよう
ティーショットは基本ドライバーで攻め続ける
安全策ばかりでは、ベスト更新は狙えません。攻めるポイントをどこにするか?今回はティーショットにして、次打の距離を残しすぎないようにしました。
安全でも距離を大きく残すことは、スコアメイクが簡単にならないからです。もちろん指導したのは、状況の見極め方と狙う方向とエリアのみ。それだけでOBや池ポチャはゼロに。14ホール中、7ホールがフェアウェイ。フェアウェイキープ率50%はお見事でした。
危険エリアを「越える?越えない?」 を基準に番手を決める
キーポイントにあげた「タテの距離」の計算が功を奏しました。ときには2打目をかなり短い番手で打つときがあったり、ハザード越えでは、上の写真のように手前だけでなく、グリーンの左右を狙ってもらう戦略を立てました。
ミスショットしても次打がハザードにかからない状況にできたケースが多かったですね。
届かない距離は徹底して80ヤード残し
ドライバー以外のクラブで、狙った方向と距離を出せるクラブは、データを見ても伊藤さんに聞いてもSWから6番アイアンまで。6番アイアンの飛距離よりも長い距離は刻むことにしました。200ヤード近くあるときは徹底的に80ヤード残し。
ショートして100ヤードくらい残ることもありましたが、スイングを調節しなくていけない中途半端な距離のアプローチを打たないようにしたのもよかったです。
100切り&ベスト更新達成しました!
あと1 打の壁はマネジメントで簡単に越えられる!
伊藤さん、ベスト更新おめでとうございます!前日より11打のスコアアップは私の予想どおり。前日は5ホールあったトリ以上がゼロになり、全ホール、ダボ以下になった安定感はマネジメントによるところです。この結果は同じコースを2日続けて回ったからではなく、賢くコースを攻略したから。
今回のマネジメントは、決して100切りのためではありません。ベストが80台、70台だと「あと1打」の壁に阻まれている人は多いはず。そんな人にこそ今回のマネジメントの積み重ねが利いてくる。スコアにこだわるラウンドでは、このマネジメントを実践してみてください。
いかがでしたか? ぜひ、今野コーチのアドバイスを参考にベストスコアを更新してください!
レッスン=今野一哉
●こんの・かずや/1982年生まれ、千葉県出身。小誌連載企画「知ると得する開眼トーク」でも主にスコアアップに役立つプレーの仕方や考え方をレクチャー。その効果を6月末に自ら立証。「58」のスコアを出して自己ベストを更新した。キッズゴルフクラブ代表。
アマチュア代表 伊藤貴洋さん
●いとう・たかひろ/1973年生まれ、49歳。ゴルフ歴15年、ベストスコアは100。学生時代のサッカー部ではエースストライカーを務めるなどスポーツは得意だったが、ゴルフは大苦戦! 50歳の誕生日を迎える12月までにベストスコア更新、同時に100切りを達成するのが目標。持ち球はスライス。
写真=相田克己
協力=サザンヤードCC、ガーミンジャパン