正しいグリップはどれ…!? ドライバーで簡単にOBをなくす方法
ゴルフは多くの道具とさまざまな打ち方を組み合わせてプレーする。「何がうまくなればスコアアップできるのか」と迷うこともあるだろうが目澤秀憲コーチは「80を切るまではドライバーが最重要」という。
【関連記事】ミスしても寄る!入る!“AI設計”の最新パターを鹿又芳典が解説
すべてのショットで少しでもピンに近づける
私はスコアが80を切るまでは、ティーショットが大きなポイントになると考えています。ドライバーがある程度飛んで安定感がある。具体的には50から60%の確率でフェアウェイに運べるのが、常時80台まわれるようになる目標といったところでしょう。
クラブのなかで一番難しいドライバーが半分以上の確率でうまく打てたら、アイアンはなんとかなっているはずなので、そこはすごく大事。カバーしていくならティーショットからです。
昔は「パット・イズ・マネー」という考え方があり、パットがもっともストロークに貢献すると言われてきました。
もちろんツアーで優勝しているプレーヤーたちは、勝つ試合ではパットがめちゃくちゃ入っています。ですが、安定して上位にいるプレーヤーたちは、ドライビングとアプローチでカップに近い位置にボールを運べており、ランキングとも相関関係があります。すなわち、世界ランキング上位の面々はもれなくそれができているのです。
わかりやすいのはブライソン・デシャンボー。ドライビングでとことん距離を稼ぎ、次打でウエッジを使えればピンの近くへ打っていける。そんな理想型を具現化させようと取り組んできたひとつの結果が、彼をトッププロへと押し上げました。
同じ林でも180ヤード先より250ヤード先がいい
目標が100切りでも80切りでも、グリーンに近くて打ちやすい場所からアプローチできれば最高で
す。300ヤードのパー4で、ドライバーで240ヤード先のフェアウェイに運べたら、次はウエッジで打てるでしょう。ピタピタ寄ることはないかもしれませんが、グリーンオンする確率は確実に上がります。パットが苦手でも、さすがに5パットとかはしないでしょうから、悪くてもボギーという世界が見えてきます。
ティーショットが曲がって180ヤードくらいしか飛ばず、林のなかからロングショットを強いられたら、プロでもボギーで上がるのは困難です。でも、曲がっても250ヤード飛んでいればグリーンには近い。同じ林に入るなら250ヤード飛んで林のほうがずっといい。1回で出してパーを拾えるチャンスがあるのは圧倒的に後者で、これもスコアに対するティーショットの貢献度です。
つまりは、ティーショットのみならず、ショットはピンの近くにいったほうがいい。であれば、広い
ホールのティーショットは割り切って振りきるべきです。それが通用しないシチュエーションもありますが、日本のコースでプレーするアマチュアゴルファーなら、そう考えたほうがスコアアップにつながります。
インパクトで強く叩けるグリップになっているか
グリップで一番大切なことは、「もっとも力が出やすい握り方をしているか」です。では、どう握れば
いいか説明していきましょう。
そのポイントとなるのが、インパクトで一番強く叩ける「左手の向き」を知ることです。それがわか
れば自分に合ったスタイルが見つかります。
自分にどんなグリップがあっているかを見つけるためには、左手1本でクラブを持ってインパクトバッ
グなどを叩いてみること。細い棒状のものでクッションや座布団などを叩いてもいいでしょう。利き手でなく、器用さに欠ける左手で強く叩けるインパクトの形は、自ずと次の3種類に集約されます。
❶ 左手甲がターゲット方向を向く
❷ 左手甲がやや正面を向く
❸ 左手甲が❶と❷の中間を向く
これが確認できたら、インパクト時の左ヒジの向きもチェックしてください。左ヒジが外側を向いているか、内側を向いているか。左手甲がターゲット方向を向いていれば、左ヒジは内向き。やや正面方
向を向けば外向き、両者の中間になる方もいます。
この左手甲と左ヒジの関係をそろえてから右手を添えてグリップすれば、フィットして力が出やすく、
インパクトでの再現性も高くなります。
また、通常グリップは左手甲の向きにより、スクエア、ストロング、ウイークの3つに分かれるとされますが、これらもインパクト時の力の出し方と相関関係があります。
たとえば、タイガー・ウッズはスクエア、ダスティン・ジョンソンはストロング、ブライソン・デシャ
ンボーはウイークグリップですが、3選手ともグリップありきではなく、力の出しやすさありき、のグリップだと考えられます。
インパクト時の左ヒジの向きもチェック
左ヒジの向きが外側か内側か。左手甲がターゲット方向を向いていれば内向き。正面方向を向けば外向き。両者の中間になる人もいる。左手甲と左ヒジの関係をそろえてからグリップする
ティーショットの傾向を正確につかむ
アベレージゴルファーを脱してワンランク上を目指すには、ドライバーショットが大事と記しました。そこで、まずはあなたの今のドライバーショットの傾向をつかんでおきましょう。
アベレージゴルファーの多くは、たとえばスライスが出るとすぐさまインサイド・アウトに振ろうとします。でも、そのつもりで振ってもできているのかはわからないので、右にも左にも飛ぶようになって収拾がつかなくなります。こうなると進んでいくべき方向がわかりません。
繰り返しになりますが、スライスがよく出るのであれば、ちゃんとスライスが打てるようになること。打球が一定方向に曲がるほうが、スコアメイクするうえでは計算が立ちます。スコアはもちろんですが、スイング的にも同じように振れるわけですから、そのほうがずっと自然。自然体を認知することが第一段階というわけです。
見ていただきたいのは、出球と球筋。ショットの球筋には右にあげた13種類があります。できるだけ細かく分析するのが好ましいですが、まずは大まかな傾向をつかんでください。何球かに1回は左右に真っすぐ突き抜ける球や急角度で左右に曲がる球が出るかもしれませんが気にせずに。それをなくして出球と球筋をそろえることが当面の目標です。
打ち出し方向はフェースの向き
曲がり方はスイングパスが影響
出球の方向と打球が曲がるメカニズムについても正しい認識が必要です。
出球はインパクト時のフェースの向きの影響を大きく受けます。フェースが右向きなら右、左向きなら左に飛び出します。一方、ボールの曲がりはスイング方向(スイングパス)で決まります。アウトサイドからインサイドに振ると右に、インサイドからアウトサイドに振ると左に曲がります。
スライスやフックをはじめとする13種類の球筋は、すべてこの2つの組み合わせで起こります。たとえばフェースの向きがスクエアでインパクトしても、スイングパスがアウトサイドからインサイドならスライスになりますが、フェースの向きがちょっと変われば出球の方向が変わり、スイングパスが少し変われば曲がり方が変わります。
ここにヘッドスピードやヘッドの入射角なども絡んでくるので複雑極まりなく、とても文章では説明しきれません。ただ、逆に言えばフェースの向きにしろ、スイングパスにしろ、ちょっと変われば球筋が変わるということでもありますから、完璧なストレートボールを目指すのでもないかぎりスイング改善はさほど難しくないのです。
ここで知っておいていただきたいのは「スライスするからフェースを閉じる」は事実誤認であること。出球はインパクト時のフェースの向き、曲がりはスイングパスでほぼ決まるということだけ覚えてください。
スイングパスに対してつねにフェースをスクエアに保つ
出球の方向はインパクト時のフェース向きに左右されますが、この場合のフェースの向きとは、スイングパスに対しての向きを指します。「インパクト時のフェース向きはスクエアが理想」と言われますが、これはボールとフェース面にかぎったものではなく、スイングパスとの関係でもあるわけです。
アマチュアゴルファーがイメージするのは、もっぱらインサイド・インのスイングパス上でのインパクト。これでヘッドの最下点でフェースがスクエアに当たればボールは目標方向に真っすぐ打ち出されます。
しかし、ドローボールを打つには目標方向の右、フェードボールを打つには左に打ち出します。そうなると前者はインパクトでフェースが開き、後者では閉じていなければなりませんが、それでも打球は目標方向に戻る。これはスイングパスに対してスクエアにヒットできているからです。
プロがドローやフェードを打ち分けられるのは、スイングパスに対してフェースがスクエアに動いているからです。これができると理論上どこでボールをとらえても、打球はスイングパスの方向に真っすぐに飛び出します。最下点でヒットすれば目標方向、やや手前なら目標より右、やや先なら同様に左に打ち出されるのです。
このロジックがわかっていると、フェースの開閉が原因となるミスの本質がわかるはず。すなわち、スイングパスに対してつねにフェースをスクエアに保つことがミスを減らすのです。
いかがでしたか? 目澤メソッド、ぜひお試しください。
ゴルフコーチ目澤秀憲
●めざわ・ひでのり/1991年生まれ、埼玉県出身。5歳からゴルフを始め、プロゴルファーを目指す。日本大学法学部卒業後、「TPI」(タイトリスト・パフォーマンス・インスティテュート。アメリカのインストラクター養成プログラム)を知り、セミナーを受講して感銘を受ける。24歳で指導者に転身後は、ボストンでの語学留学を経て、TPIの5つの資格のうち「ゴルフ」と「ジュニア」の最高水準であるレベル3を取得。一般ゴルファーへのレッスンをしながら、2021年には松山英樹と専属コーチ契約。松山のマスターズ日本人初制覇に貢献した。ゴルファー個々の身体的特徴に合った動きを教える「コーチング」をベースに指導。昨年から河本力のコーチも務め、ツアー優勝へと導いた。
文=岸和也
写真=高橋淳司、田辺安啓