“インパクト圧”で飛距離をコントロールするとは…!? ゴルフ研究者が解説
ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに新しい上達のヒントをもたらす!
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ヘッドスピードを痛点情報に置き替える
今月は、距離の打ち分けに関して説明していきます。ゴルフでの飛距離調節は、フルショットの何割という計算で振り幅を調節し、飛距離を割り出すというのが一般的です。しかし、キャッチボールでは腕の振り幅で飛距離は調節しませんし、テニスでも基本はフルストロークです。では、フルストロークでどうやって初速をコントロールするのかというと、指先のリリース圧、ラケットのインパクト圧のみです。スイングが小さく見えるときがあっても、それは小さくしているのではなく、逆にそのインパクト圧に見合ったものなのです。
そもそも、人間は「速度」という抽象的な量を把握するのが苦手。何かに置き替えなければ正確な再現はできないのですが、振り幅に置き替えるというのは、じつは感覚ではなく「視覚情報に置き替える」ということなのです。これに対してリリース圧、インパクト圧というのは痛点の記憶なので具体的な記憶となり、これと距離を紐づけることで正確な記憶・再現が可能になるのです。
ちなみに、パッティングの名手・青木功プロはパターヘッドのトゥを上げ、かなり手首を使ってヒール付近で打つ打ち方なので、とても私たちにはマネできるものではありませんが、ある番組で「なぜ?」と理由を聞かれて「あの場所で打つと音がいいんだよ」といっていたことにハッとしたことがありました。つまり、青木プロは、距離感を音(打感)に置き替えて打っていたということになり、そこの部分はすごく納得できたのです。
そこで、前号の7番アイアンで60から80ヤードのコントロールショットを打つというミッションに戻ってみましょう。インナーカウンターでのブロックで加速されたヘッドは、事前に設定されたフェース状態でインパクトをむかえます。ヨコ方向のコントロールはこれでほぼ解決するはずなのですが、タテ方向のコントロール、飛距離の調節はヘッドスピードに依存するので、何球か打ってみてイメージどおりの飛距離が出たときのインパクト圧を右手の平の感覚として記憶しておき、そのインパクト圧を再現することで、初速の決定、飛ぶ距離の打ち分けをしてみてください。テニスでは、ロビング(ロブ)といってネットに出てきたプレーヤーの頭上を越してトップスピンでベースラインを狙う守備から攻撃に転じるショットがあります。上に打ち上げるボールなので感覚的に難しいはずなのですが、インパクトでのフェース角度と上方スライド量がイメージできていれば、あとは適切な初速(インパクト圧)さえ与えてやれば意外と正確にベースラインを狙えるものです。
私のなかでは、7番アイアンでの60から80ヤードのコントロールショットは、やはり最後はインパクト圧の調整で打っていて、ベースラインを狙ってロブを打つのとほとんど同じ感覚だと思っています。
自宅で作るマイショートコース
インパクト圧の感覚を磨く練習は、自宅で簡単に行なえます。ボールが少し浮くような毛足の長いラフ仕様のゴルフマット、または低めにティーアップできるゴルフマット、そしてピンポン球を用意してください。ピンポン球はウエッジで打ちます。ウエッジはロフトが大きくプル角も大きいので、ここはオープンスタンスで構えて、フェースがターゲットに無理なく向くようにし方向性を担保します。前号で、ボールは宙に浮いているものと考えましたが、ここでも同じように妄想します。
インパクトの際のスライド方向ですが、アプローチショットではボレーボレー(ノーバウンドで打ち合ってラリーをする)の要領でバックスピンをかけて軌道を安定させたように、スイングの流れのなかで(手打ちにならないように注意して)気持ち下方向にスライドさせるようにしながら打ちにいってください。上半身リードで自重を利用して振り下ろし、フェースでボールを直接拾いにいくことを意識しながら、左ワキをわずかに引き寄せるインナーカウンターでインパクトを作ります。ローボレーと一緒で、インパクト後は手首を返さず左手のブロック位置で固定してターゲット方向を維持し、腰の回転で緩やかに押し出します。ピンポン球なのでカチンッといい音がしてボールが飛んでいくと思いますが、下方スライドを意識しているのでインパクト後にズルッとフェース上をボールがずり上がるような感触があって「バックスピンがかかった。コントロールされた。いいボールが打てた」と思うでしょう。
せっかくなので遊び心を出して、部屋のなかにマイコースを設定。たとえばテーブルの向こうにソファーが置かれていたら、テーブル越しにソファーをグリーンに見立てて狙ってみます。障害物が出てきたことでより正確なショットが求められるのですが、ここで重要になってくるのが、振り幅はいじらず気持ちはフルストロークでカチンッという音・インパクト圧だけで狙った飛距離を出すことです。このやり方ではインパクト圧を感じることがゴールなので、振り幅に迷って緩んだり、ザックリすることもなく確信をもって打てるはず。繰り返し、同じ弾道で打てるように練習してみてください。
文・イラスト=サンドラー博士
●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。
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