タイガー・ウッズの最新スイングを解説!ケガしても“飛距離が落ちないワケ”は?
世界イチのツアー、PGAのトーナメントも毎週熱戦が繰り広げられている。たくさんのスター選手のなかから、今季絶好調と復活を遂げた選手たちをピックアップ。好成績をあげているスイングのポイントにスポットを当てた解説は、みなさんの上達やスコアアップにも役立ちます!
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マスターズ覇者の飛んで曲がらないスイング!ジョンラームのドライバーを解説
マスターズを制した飛んで曲がらないスイング
ジョン・ラーム
●1994年生まれ、スペイン出身。188cm、100kg。プロ21勝。昨年の全米オープンでメジャー初優勝を遂げると、今年も開幕から3勝をあげて絶好調でマスターズに挑み、下馬評どおり見事優勝。世界ランキング1位に君臨する、今もっとも勢いのある選手。
非常にコンパクトでシュア。ドライバーショットでさえ、ライン出しやコントロールショットのように見えます。いわば飛ばそうとしていない精度重視のスイングなのですが、彼の体格とパワーなら、これで軽々と300ヤード以上の飛距離を出せる。今まさに絶好調で、マスターズを制しただけでなく、今季はまだまだ勝ちそうな予感がします。
スイングテンポが速く、クラブフェースをシャットに使うのがジョン・ラームのスイングですが、腰を非常にシャープに回転させてインパクトではベルトのバックルがターゲットを向くくらい回っています。深い前傾角を保ち、肩のタテ回転が強いのも特徴のひとつです。
最近は、以前よりアドレスの重心位置を右寄りにしたようですね。以前はかなり左寄りでしたが今はほぼセンター。バックスイングでの右への移動量を増やしつつ、そこから左にスピーディに戻すことができており、飛距離と精度を両立させています。
これは体を揺さぶったりしているわけではなく、足の裏を前後方向に使って垂直軸での回転を上手に取り入れていたスイングです。
次は、ローリー・マキロイです。
ローリー・マキロイのスイングを徹底解説!
地面反力を使った効率のいい美スイング
ローリー・マキロイ
●1989年生まれ、北アイルランド出身。175cm、73kg。プロ34勝、メジャー4勝。海外ツアーのなかでは小柄ながら、美しいスイングと大きな飛距離でファンが多い。初優勝を目指した今年のマスターズは、無念の予選落ちだった。
理想的といえる美しく効率のいいスイングです。もともと強い筋力と柔軟性があるうえに地面反力をうまく使ってさらに大きなパワーを生み出しているので、飛んで曲がらないのも納得です。
地面反力の使い方のうまさは、フットワークを見るとよくわかります。バックスイングでは、始動時に右足を踏んで地面に圧をかけ、その反力でトップでは少し伸び上がっているように見えます。しかし、そこから切り返しで強く左に踏み込み、スクワットのように沈み込みつつ地面を押し、その反力を使って一気に回転している。トップとインパクトでは、頭半分くらい沈み込んでいるのがわかると思います。
これだけパワフルなのに、上半身を見るとじつは静かで、腕を振り回しているようには見えません。腕は体の動きで受動的に「振られている」ことがよくわかります。
好調さがありありと表れていて、何ひとつ直したり変えたりする必要を感じない完成されたスイングといえますね。
次は、タイガー・ウッズです。
タイガー・ウッズのスイングを解説!
クラブに仕事をさせて体への負荷を軽減
タイガー・ウッズ
●1975年生まれ、アメリカ出身。188cm、84kg。プロ107勝、メジャー15勝のグランドスラマー。21年に交通事故で大ケガを負うが今春ツアーに復帰。今年のマスターズは予選通過したが、最終日に棄権。完全復活が望まれる。
事故による大ケガからついに本格的にツアー復帰を果たしたタイガー・ウッズ。両足を骨折したそうですが、とくに重傷だった右足にはその影響が見られ、全盛期のような力強さはありません。
切り返し以降、右足で地面を押す圧が弱まっていて、インパクト前後では右足を引きずるようにスライドさせる動きがあり、若干体が左に流れているようにも見えます。そのせいかフォロースルーが少し窮屈で左ヒジのたたみも以前より早くなっています。
しかし、ケガをした割に飛距離が落ちていないのは、体の運動量が減った代わりにクラブの運動量を増やしたためでしょう。タイガーは従来、圧倒的にクラブよりも体の運動量が大きいタイプのスイングでしたが、その比率をかなりクラブ寄りに変更したことで、体の問題を補っています。
身体能力で飛ばしてきた選手は誰しも、年齢による肉体の衰えに伴い、遅かれ早かれこういった方向転換が必要です。タイガーはケガを機に、少し早めにそれに取り組んだと考えてもいいでしょう。
まだ体も様子見でしょうし試合勘も戻っていないので、すぐに成績は出ないかもしれませんが、復活の兆しは十分に見て取れると思います。
次は、スコッティー・シェフラーです。
“世界ランク2位”のシェフラーのスイングを徹底解説!
大きな左へのスライドを右足の動きで抑える
スコッティー・シェフラー
●1996年生まれ、アメリカ出身。190cm、90kg。プロ6勝。昨年フェニックスオープンで初優勝を遂げると、その勢いのままマスターズを制し、年間4勝と大ブレイク。今年もすでに2勝をあげており、世界ランキングは2位。
スイングは少し荒いというか、切り返し以降で大きく左にスライドするクセの強い動きが特徴です。しかし、ボウリングのように右足を寄せるフットワークで、体が左にスライドしすぎてスエーになるのをうまく防いでいます。
フェースの開閉量は大きく、腕のナチュラルなローテーションを使って球をつかまえるタイプ。右腕の感覚を生かしてボールをコントロールしているのでしょう。
次は、ウィル・ザラトリスです。
米ツアーのニュースター!ザラトリスのスイングを徹底解説
最新技術てんこ盛りのダイナミックなスイング
ウィル・ザラトリス
●1996年生まれ、アメリカ出身。188cm、75kg。プロ1勝。全米ジュニアを制するなどアマ時代から活躍し、大学在学中にプロ転向。2021年にはPGAツアー・ルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、昨年初勝利をあげた新星。
バックスイングはアウトサイドに上げて高いトップを作り、切り返しでループさせてインサイドから下ろしてくる軌道が特徴です。
インパクト以降もクラブをリリースし切らない体主体のスイングで、スクワットのように深く沈み込む切り返しや大きな腰の回転量、足がめくれるようなフットワークなど非常にダイナミック。地面反力も上手に使っていて、とても現代的。いかにもショットメーカーという迫力のあるスイングです。
解説=吉田洋一郎
●よしだ・ひろいちろう/1978年生まれ、北海道出身。海外に出向き、名コーチのメソッドを学んだり、ツアーで選手のスイング観察・分析を行なうプロコーチ。レッスン活動のほか海外ツアー中継の解説も務める。日本ゴルフスイング研究所主宰。
構成=鈴木康介、編集部
写真=田辺JJ安啓、田中宏幸
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