「ダウンブロー」の本質とは?ゴルフ好きの研究者が解説

ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに新しい上達のヒントをもたらす!

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ローボレーとゴルフのコンタクトの類似性

前号では、厚く当てながらも強烈なスピンをかけるテニスでのトップスピンの打ち方を説明しました。ゴルフでのバックスピンはロフトのあるヘッドがクサビのようにボールと地面との間に入って生じていると考えている人もいると思いますが、ボールとフェースの物理学は同じ。今月は、インテンショナル(意図的)バックスピンについて考えてみます。

テニスでのスライスショット(テニスではバックスピンのことをスライスと呼ぶ)のフェースの挙動を示したのがイラストAです。トップスピンとはスライドの方向こそ逆ですが、スピンをかける原理は一緒でフェースに厚く当てながらインパクトの際に下方にスライドさせることでバックスピンをかけています。イラストCは、そのバックスピンを有効に使ってボールをコントロールしているローボレーを示したものです。ローボレーというのはネットより下に打たれたボールを処理するボレーの総称で、ローボレーの基本はイラストのように上向きのフェースを作り、ボールの弾道の真うしろから厚く当てながらも、フェースを下方にわずかにスライドさせて勢いを殺しバックスピンをかけてボールをコントロールするものです。

ボレーというとバレーボールのブロックのように飛んでくるボールをたたき落とすような力強いものを想像する人もいると思いますが、ボレーのほとんどは体幹・腰と腕を一体としてボールを受け止め、柔らかく適度なバックスピンをかけて、狙ったところに置きにいくコントロールショットなのです。連載の第4回(2022年8月号参照)で、インパクトの一瞬のほんのわずかな時間、手首を背屈させてフェース方向を維持する「タッチ」の話をしましたが、ここではそのタッチで方向性を維持するとともに、衝撃を吸収させてキャッチするようにボールコンタクトを行ないます。

この柔らかいフェースタッチのフィーリングを習得するのに効果的なのは、至近距離(3~4メートル)で向かい合ってノーバウンドでできるだけボレーのラリーを続ける「ボレーボレー」と呼ばれる練習法です。脱力させながらもインパクトの一瞬でグリップをキュッと握ってフェースを作り、腕とラケットを上半身(体幹)と腰の大きな回転に乗せて下方にわずかにスライドするような感じでバックスピンをかけてボールをコントロールします。当然この動作では、手首およびラケットは体幹のゆっくりとした旋回に乗っているだけなので、手首で振り回して加速するような作業は行ないません。これで安定して何十回もラリーを続けることができるのですが、私はこの感覚がゴルフのコンタクトに非常に役立っていると感じています。

ゴルフのバックスピンは、ロフトによって生じるという認識が強い。しかし、テニス式の厚く当て、下方スライドさせる能動的(インテンショナル)なバックスピンのかけ方を一度経験すると、スピン量はもとより、その直進性、打感、打音が忘れられなくなる。この打ち方はイラストEのように、ロフトを立てて直接ボールをフェースでとらえるコンタクトイメージにこだわりたい

フェースでボールを当てにいく意識が重要

スライスをかける際に絶対にやってはいけないのが、イラストBのようにフェースがボールの侵入軌道を横切る「切り下ろし軌道」で、ボールを擦って強いスピンを掛けようとすることです。この打ち方ではしっかり擦れれば強いスピンがかかるのですが、薄い当たりのために前に推し出す力がほとんどなく、コントロールの効かない再現性の乏しいフラフラっとしたボールになってしまいます。さらに、このスイングイメージではフレームエッジにボールを当てないように意識がいってしまって、ボールにパワーをかけることがないがしろにされてしまうのです。

そして、同じことがゴルフでも起こっていることを忘れてはいけません。よく、ボールの赤道と南極側の間にリーディングエッジを入れればいいので簡単だといいますが、このとき私たちはダフらないように、またはトップしないようにと、リーディングエッジを入れる場所のことで頭がいっぱいです。そして、結果的にリーディングエッジを差し込んで打つことになるのですが、これは「切り下ろし軌道」でボールを打つことにほかならず、薄いコンタクトになり弾道が安定しないのです。

厚く当ててスピンをかけるためにはしっかりフェースに乗せて打つ必要があるのですが、そのためにはインパクトイメージを変える必要があるのです。ゴルフクラブはロフトがあるのでフェースから当てにいくのは無理だと思うかも知れませんが、イラストDのようにロフトを少し立てて北半球の中緯度地域にフェースを直接当てにいくようなイメージでフェースを意識して打ち込みます。このときハンドファーストな状態で上からフェースを当てることによってフェースは自然な下方スライドが行なわれ、これによってロフトとは別の自然なバックスピンが生じて弾道を安定させることができます。

恐らく、これこそが「ダウンブロー」の本質なのだと私は考えています。よく、練習場でドンッ、ドンッとソールを叩きつけるようにダウンブローの練習をしている人を見かけますが、あれは切り下ろし軌道で打っているのを公言しているようなもの。あれでは、いくら練習しても本当の意味での上達にはつながりません。意識改革が必要なのです。

次号ではアプローチショットに的を絞って、テニスのローボレー並みの精度でボールを打つことに挑戦してみたいと思います。

いかがでしたか? 理論的にゴルフを考えてみることで新たな発見があるかもしれません。ぜひ参考にしてみてください。

文・イラスト=サンドラー博士

●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。

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