改めて“インパクト”について考える!ゴルフ研究者が研究結果をレポート
ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに光明を射す!
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ボールコントロールとは「スピンコントロール」だった
前号は、IKによってインパクトオリエンテッドに考えると「スイングが逆算されて、勝手に作られる」という話をしました。これは、①フェースの方向(打球方向の指定)②フェースのスライド方向(スピン方向の指定)③コンタクト圧(打球の強さ、速度の指定)というインパクト三要素が決まれば打球の弾道が自ずと決まる、という物理特性を前提にしています。
インパクトの際のフェースの向いている方向にボールは飛び出すというのは容易に理解していただけると思うのですが、今回はこの三要素のうち「フェースのスライドによるスピンコントロール」を少し説明したいと思います。私のテニス歴は中学時代の軟式テニス(今でいうソフトテニス)から始まったのですが、ソフトテニスのボールは片手で握り潰せるほどの柔らかなゴム毬なので、インパクトの瞬間は潰れて長い時間ガット面に貼りつく。
その間に手首を一気に被せると、強烈なトップスピンを掛けることができます。このようなスピンの成功体験があったので、(硬式)テニスを始めても同じようにスピンを掛けるものだと信じて疑いませんでした。しかし、硬式テニスのボールはガット上に留まっている時間はほんの一瞬なので、インパクトでフェースが正しい方向を向いているときに被せればスピンがかかったいいボールが打てますが、フェースの方向が少しでも狂っていればホームランになるか、ネットに突き刺さることになり、ショットが安定しない。
成功の可能性はベストポイントのみとなるこの打ち方では、ナイスショットになるかミスショットになるかは紙一重。ラリーが始まると毎回祈るような気持ちで、楽しくはありませんでした。
「ぶ厚く当てる、スライドさせる」で確実なスピンをかける
そんなある日のこと、フレンチオープンテニスでセルジ・ブルゲラというスペインの選手の試合を見ていて目が釘づけになりました。のちに知ったのですが、彼は93年、94年のフレンチオープンを連覇、ATPランキング(テニスの世界ランキング)で最高位3位になったこともあるクレーコートの強者でした。フレンチオープンはコートサーフェス(コートの表面)が、アンツーカーというレンガの粉のようなものでできていて、バウンド後の球速がほかのコートサーフェスに比べて極端に落ちるためラリーが長く続き、プレーヤーにとってはタフなコート。
ただ、そこで繰り出されるブルゲラのボールは異常でした。どんな厳しいボールや体勢を崩しても、うめき声を上げながら満身の力で強力なトップスピンをバッコンバッコン打ち返します。持ち球はトップスピンなのですが、ある意味、卓球のカットマンのように粘って、粘って、根負けした相手のミスを誘うといういやらしいテニスだったのです。最初は、プロだから針の穴を通すように毎回ショットの精度が高いのだろう、と思っていましたが、どうもそれだけではないようです。
改めてトップスピンを調べてみるとイラストAのように、フェースは地面にやや上向きの垂直をイメージしてボールの真ヨコから厚く当てに行くのですが、その状態を保ったままラケットを上にスライドさせてボールを擦り上げ、強力な順回転のスピンを掛けている。ここでおもしろいのは、フェースを上にスライドさせているので、イラストAの「実際のスイング軌道」のように斜め上に振り出しているのですが、感覚はターゲットに向けてボールの真うしろから打ち出す「イメージ上のスイング軌道」のままであるという点です。
この方法だと意識はターゲットをロックオンしたまま当てにいっているので方向性が安定するうえに、厚く当てられるのでパワーをしっかり伝えられます。かつ、この条件ではスイング速度が速ければ速いほど順回転ドライブが強く掛かるので、威力と安定性を兼ね備えたボールが普通に打てるようになるのです。また、上へのスライド量を大きく調節することで、まるで変速機を操作するようにスイングの運動エネルギーをスピン量に多く割り振れるため、短い距離もほぼ同じスイングイメージで難なく打ち分けられるのです(イラストB)。
つまり、ブルゲラのあの信じられないパワフルかつ安定感をもったトップスピンドライブは、天才的な運動センスと膨大な練習量でなされるものではなく、「ぶ厚く、上にスライドさせて打つ→トップスピンでボールが落ちる→相手コートに入る→さらに強く打てる→攻撃力が上がる」という理にかなった結果の見える確立されたシステムからの賜物だったのです。このことでわかるのは、フェース系のスポーツのキモはスピンコントロールにあり、その極意はぶ厚く当てながらもフェーススライドで強いスピンをかける、というコンタクトコントロールにあります。
もちろんゴルフクラブの場合は、ロフトのある構造ですからぶ厚くといっても垂直に当てることに限界はありますが、気持ち的には垂直に当てる感覚が必要です。次号では、この正しいスピンの感覚をインテンショナルショットを例に取りながら実感していただこうと思います。
いかがでしたか? レポートを参考にして、インパクトを考えてみてください!
文・イラスト=サンドラー博士
●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。
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