ヘッドスピードをすぐにアップさせるコツ!「インナーカウンター」って何?
ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに光明を射す!
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ブラッシングと左腕の引き
今回は「捻転を使わず、上半身リードで加速するスイング」を考えていきたいと思います。ソフトボールのピッチングは下手投げでも、120キロを超えるスピードが出ます。投球の際は、右ヒジを腰の右側にかすらせる「ブラッシング」という動作が必須だそうです。
ここで何が起こっているのかというと、振り子のヒモの途中に棒を差し込んで、実質的に短いヒモの振り子を作るのと一緒で、ヒジが接触することで減速。すると、行き場を失った運動エネルギーがヒジを軸とする半径の短い角運動に変わり、ボールを一気に加速させます。ブラッシングで得られるのは、この加速とともに「リリースの安定化」「コントロールの向上」だといわれています。
話は変わり、テニスではショットの際に、ラケットを持つ右腕と同じくらい左腕が左胸近くに力強く引き寄せられていることがわかります。これは利き腕ではない左腕を引き寄せることで体の回転にブレーキをかける。その反動で右腕が追いついて加速する、ソフトボールでのブラッシング的な状況が作られているのです。
このソフトボールやテニスでのブレーキを利用した加速の話は、ゴルフでの捻転の解放に代わるパワーソースのヒントとなります。
インナーカウンターで爆発的なパワーを得る
まずは、ウエッジを手にしてみてください。過去にグリップの回(ワッグル 2022年12月号参照)で説明したように、安定ポジションでグリップし、後退角でフェースの方向を合わせます。ロフトの大きいクラブでは、オープンスタンスにしたほうが構えやすいと思います。アドレスをとったら8時の位置までクラブを持ち上げ、前傾軸に沿って自重で落下させるように上半身リードのスイングを開始します。
このとき、下半身は一切コントロールすることを考えません。腕の振りに合わせ、勝手に左足に重心が移り、腰もスイングの進行に応じて勝手に動きます。レールの上を走るようにヘッドが滑り出したら、アドレスのときにイメージしたインパクトでのフェース状態を意識し続ける一方で、テニスで左腕を引きよる要領で左ワキをそっと締めてやります(意識的にはしません)。
これによって末端にある左手が減速されると、行き場を失った右腕、クラブの持つ運動エネルギーは左手首を支点とした角運動に変換され、ハンドファーストな状態にあるヘッドは一気に加速するのです。
左ワキを締めてブロックし、インパクト後は左腕全体でクラブを受け止め、惰性に任せ打ってみましょう。インパクトは安定し、ボールは軽々と飛んでいくと思います。この左ワキを締めての減速動作を、カメラのレンズで前玉と後玉の間にあるレンズ群を移動させて焦点を合わせるインナーフォーカスにならって、私は「インナーカウンター」と呼んでいます。
ここで、重要なのは二点。一点目は、左手減速による衝撃がブラッシングと同様に急激な加速を生んでいることです。ただ、従来のスイングでも「左の壁」や「ツイスト打法」のように、スイングにブレーキをかけ、その反動で加速するという技術はありました。しかし、「左の壁」は「壁」という曖昧なイメージから、さまざまな解釈が可能で、やるべきことが明確ではありません。
また、ツイスト打法はフォードスイングに逆向きの下半身の回転をぶつけ、衝撃で加速を得るものですが、下半身リードが大前提のなかで、腰の左回転と反対の腰の右回転を共存させるのは難しく習得は容易ではないのです。
お察しのように「左の壁」「ツイスト打法」が意味するものは、インナーカウンターで説明していることと同じものだと考えられるのですが、下半身リードありきでこれを説明しようとしても、どうしても無理があって理解が難しくなってしまいます。
しかし、インナーカウンターでは、カウンター動作を左腕という腰とは独立した部位に仕事をさせることができるので、やるべきことが明確になり、スイングはシンプルで確実なものとなります。
二点目は、インナーカウンターによるインパクトの自動化、プラボックス化です。フィンガースナップ(いわゆる指パッチン)では、一度中指と人差し指が滑り始めた時点でトリガーが引かれ、指の細かいコントロールではできなくなりますが、インナーカウンターをトリガーとしたスイングでは、これと同じことが起こっています。トリガーのタイミングだけを気にすれば、失敗を考える時間を与えることなく、プラス思考のままスイングを単純化させることができるのです。
これまで、捻転の解放は、どちらかというとフルスインで最大飛距離を稼ぐためのものとして説明されてきたと思います。しかし、インナーカウンターでは、ドライバーからアプローチ、パット、大出力のショットから小出力のショットまで、スケーラブルに同じ感覚で打つことができるのも特徴となります。
次回からも、この基本のうえに立って、これまで誰も論じてこなかったスイングの話を進めていくので、ご期待ください。
いかがでしたか? この理論を上達に役立ててください!
文・イラスト=サノドラー博士
●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということい気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えく、毎月レポートする。
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