謎のスペック「プル角」とは何か?ゴルフ研究者が紐解く!

ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。

斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに光明を射す!

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プル角の都市伝説

さて、今回は「ハンドファーストとダウンブローは、なぜセットで語られることが多いのか」を考えてみたいと思います。ここでひとつのキーワードとして出てくるのが“プル角”です。プル角のことを正しく答えられる人は、あまりいないと思います。なぜならば、その存在は誰も否定しないものの、メーカーですらスペックを公表していない謎の角度、謎の仕様だからです。ちなみにネットで調べると、次のような説明が出てきます。

①クラブをロフトどおりに構えたときの垂線に対するシャフトの傾き

②ヘッドをソールした際、スタンス内でのボールの位置を示す

③ハンドファーストのダウンブローで打つためのもの

①はプル角の定義②はプル角の機能③はプル角の目的をそれぞれ説明しているだけで根拠がないのですが、概ね「プル角は、フェースに対するシャフトの傾きで、ハンドファーストとダウンブローで打つための仕様である」ということになっているようです。しかし、それはウワサの域を脱しません。

スナッグゴルフでプル角の真相を発見

スナッグゴルフでは、グリップの指示どおりに握ると安定ポジションになる(イラストA)が、この状態では地面のボールはトップさせて打つしかない。しかし、Bのようにフェースを開いてハンドファーストにするとβで接地し、うまく打てるようになるものの、フェースが右を向いているため右へのプッシュアウトが生じる。ところが、この状態のままで、フェースをDのように捻り戻すことを考えてみると、接地線がγへと変化して、スクエアに打てるようになる。プル角とハンドファーストの本当の意味がこのことからわかるかもしれない

スナッグゴルフというのをご存知でしょうか。スナッグ(SNAG)の意味は、Starting New At Golf(ゴルフを始めるために)の頭文字をとったもので、元PGAツアープレーヤーのテリー・アントン氏とウォーリー・アームストロング氏考案の、複雑な要素を排除したゴルフ似の遊戯のことです。

スナッグゴルフのグリップは五角形で、中心線となる五角形の頂点の右側あたりは黄色で塗られ、左側あたりは赤色で塗られています。黄色あたりに左の親指、赤色あたりに右親指と左親指をクロスさせて握ることで、誰でも左右均等に真っすぐグリップできるようになっていて間違いがありません。

さて、この状態でヘッドの向きを見てみると、ヘッドとシャフトとの関係が、上のイラストAのような状態、先月説明した“安定ポジション”にすでになっていることがわかります。ただ、この状態は、リーディングエッジがシャフトの左側に張り出しているため、ここが先に接地してしまう。シャフトの延長線上で地面にあるボールを打つことは容易ではないのです。

しかし、そこは考えられていて、すべてのショットをゴルフマットつきのティーに乗せ替え、ボールを浮かせて打つルールなので、問題なくシャフトの延長線上のスイートスポットで打つことができます。

ただし、普通のゴルファーなら、地面から直接打ちたくなるでしょう。そこで、スイートスポットでボールが打てる状況を探してみると、イラストBのようにロフトを寝かして開いた状態にするとリーディングエッジがラインβとなり、ヘッド部分が無理なく地面に接し、地面の上のボールを打てるようになる。しかし、この状態で真っすぐ打つためには極端なオープンスタンスをとって、フェースをターゲット方向に向ける必要があります。ところで、仮にホーゼルの部分が蝋ろうのような柔らかい素材でできていると仮定し、ここを温めて開いているフェースを捻り戻して(イラストC、D、E)、飛球線に対してスクエアなラインγで地面に接したらどうでしょうか。イラストEのようにどこかで見たことのある形、そう、ゴルフのアイアンの形に近いものになります。要は、このホーゼルの捻り戻しというのは、先月の安定ポジションで説明した「逆二等辺三角形の左辺にリーディングエッジを合わせる」ことになるのです。

このことから類推できるのは「プル角はダウンブロー等の目的のために設定されたものではなく、単に地面に置かれたボールを普通に打つためのものではないか」ということです。ハンドファーストの状態でインパクトを迎えても、スイングの支点は依然として左肩です。インパクト後もヘッドは左肩真下の最下点を目指して下降スライドすることになり、これがいわゆるダウンブロー的な動きになるのですが、この際のボールがフェースで擦り下ろされることによって生じるバックスピンは、ロフトの突っつきによって生じる逆回転に比べ、安定した逆回転を生むので弾道が安定します。

ダウンブローが好まれるゆえんですが、地面のボールを打ちやすくするためのハンドファーストが意図せずダウンブロー的なスイングを発生させていたことから「プル角はダウンブローをするための仕様である」とか「プル角によって作られるハンドファーストはダウンブローのためにある」という、別の目的を与えてしまっているのではないかと考えることができます。

個人的には、このことが話を複雑にしているのでは、と考えるのですが、真相はどうなのでしょうか。なお、バックスピンに関しては、下降スライドを意識した“インテンショナルバックスピン”として、後の回で詳しく説明します。

いかがでしたか? 今回は「ハンドファーストとダウンブローは、なぜセットで語られることが多いのか」についてがテーマでした。

文・イラスト=サンドラー博士
●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。

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