「インパクト前後30センチ直線的に振る」は間違い?テニス式の打ち方が正解

ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに光明を射す!

【あわせて読みたい】「飛ぶ」と噂の“新ドライバー” を鹿又が試打してみた…結果は…?

フェースは口ほどにものをいう

先月まで、2回に渡ってゴルフを鉛直軸で考えたくてしょうがない、私たちの困った脳の性質に関して説明してきました。前回はストレートボールを打つために必須といわれることがあるフェースローテーションに疑問を投げかけましたが、では、曲げずに打つにはどうすればいいのかが今回のテーマです。これは、別の回でさらに詳しく説明しますが、「ストレートボールの打ち方に関しては、円弧状スイングはNGである」ことを念押ししておきたいと思います。

私は、方向性とスピンとを意識して打つのが、今では当たり前になってしまっていて、スライスで悩んでいたころのことを半ば忘れてしまっていますが、当時、スライス修正のきっかけとなったのは、それまでに培ってきたテニスでのインパクトの感覚で、それがそのままゴルフに応用できることに気づいたのです。

プロのテニスでは、わずかな隙間に糸を引くようなパッシングショットを決める姿を目にします。緊迫した状況下でも冷静に反撃するプロの技術の高さとメンタルに感心しますが、それは我々アマチュアの手が届かない領域のものではありません。どうしたらできるのか? は、理解できるところにあるのです。

テニスでのボールのコントロールは、インパクトの際の、①フェースの向き(打球方向の指定)、②フェースのスライド方向(スピン方向の指定)、③コンタクト圧(打球の強さの指定)のたった三要素で決まります。一見、相手からの攻めに否応なく反応しているように見えるかもしれませんが、感覚的には相手の返球を読んで自分のストライクゾーンに呼び込みながら、反撃のための弾道を決め、その弾道のために必要なインパクトの三要素を決定。

それをゴールとして迷わず振り抜いているといったところです。これら三要素さえ適切に決定・制御できれば、ボールは意図した方向と弾道で飛ぶ。ここで余計な横スライドを入れなければ、スライス回転などかかることはないのです。

インパクト前後30センチは直線的に振るは本当か

テニスでは、フェースの方向を維持するように手首の角度を無意識のうちに調節してインパクトの安定を図っている。しかし、ゴルフではインパクトの前後30センチの直線部分を作ることで方向性を高めるようにいわれることがあるが、これはいびつなスイング軌道を生んでしまう。手打ちを誘発するとともに、ヘッドを大回りして振り下ろすアウトサイド・インのスイングになってしまい、逆にスライスが出やすい皮肉な結果となる。ゴルフもテニス式の「タッチによるフェースコントロール」が正解なのだ

この三要素のなかで、打球の左右の方向性に関わるのは①のフェースの向きですが、方向を安定させるためにテニスでもゴルフでもよくいわれるのが、上のイラストにあるようにインパクトの前後の30センチほどのゾーンを直線的にキープしなさいという“アレ”です。

しかし、私の経験ではテニスはこの感覚とちょっと違っています。もともと直線的に振っているつもりのテニスでのスイングイメージですから、そのなかに直線部分を入れるというのは、感覚的に違和感がありますし、緊迫したシチュエーションで咄嗟にラケットを出す際に、30センチを意識することは現実的ではないからです。

じつは、これに代わって中級者以上のテニスプレーヤーであれば自然にやっていることがあります。インパクトでボールがフェースに乗ったところで、わずかに利き腕の手首を背屈するようにラケット先端を後退させて、フェースの方向を維持してボールを押し出すのです。

これは、キャッチボールの捕球の際に、わずかにグローブを引く感覚に近いもので、このやり方(タッチ)であれば、どのようなショットのなかでもフェースの方向維持が可能で、直線的にラケットを出してボールを打ちにいくスイングイメージとの共存ができるのです。

このときフェースの挙動を客観的に見れば、フェースが直線的に動いているように見えるかもしれませんが、これは、距離ではなく時間に着目したフェースの維持方法であって、スイング軌道内に直線部分を取るのとはまったくの別物なのです。

ところが、ゴルフでは円弧状のスイング軌道のイメージが一般的なので、30センチの直線部分を軌道のなかに組み入れて方向性を安定させようとします。ちなみに、インパクト前後30センチを直線に振ろうとすると、この直線のイメージに引っ張られて軌道の高さもアップライト気味になり、これによりイラストにあるようにヘッドが急降下するダウンスイングになってしまいます。

この軌道で実際にボールを打とうとすると、大回りしてヘッドを外側から叩き落とす必要があり、いわゆるアウトサイド・インのスライス軌道のスイングになってしまう。これではストレートボールどころか、スライスを量産してしまうことになり、やはり鉛直軸をベースとしたスイング理論では破綻してしまいます。結局、先に紹介したテニス式のリストコントロールがゴルフでも合理性があるというのが結論になり、これはフルスイングからアプローチ、パッティングに至るまで、すべてのシチュエーションに無理なく応用できるものになるのです。

ここまで、ゴルフに洗脳されたみなさんの頭をやわらかくしてもらうために、ゴルフ界の常識を覆す話をいくつかしてきました。新しい世界に臨む免疫が少しできたところで、次回からは、キャッチボールのように、ボールを投げるように「狙って打つ」ことを実際にボールを打ちながら考えていきますので、ご期待ください。

文・イラスト=サンドラー博士
●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。

【あわせて読みたい】

飛ばすために練習するならドライバー?SW?どっちがうまくなる…!?

“ハーフベスト37”の上級者がしている練習法とは?「球を見ずに…」とプロがレッスン

“正しいアドレス”の入り方とは?「目線も意識も近く…」とプロがレッスン

関連記事一覧