米ゴルフツアーで“珍事件”…!?「ドローンが邪魔でプレーができない」
近年、ドローンの登場によって映像の見せ方が進化している。米ツアーでも撮影に使用されているが、その現状に突撃!
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空から撮影できるドローンは、飛行性能やサイズが日々進化している。撮影としてだけでなく、記憶に新しいところでは、昨年の東京五輪の開幕式で夜空を彩ったドローン群の飛行ショーなどでも使用されている。
日本に比べて飛行制限の緩いアメリカでは、スポーツ中継の映像撮影のためにドローンを使用する場面が確実に増えた。しかし、同時に、問題の発生などで規制が強化されているのも実情だ。
米ツアーのテレビ中継で最初にドローンが本格的に使用されたのは、2015年の全米オープン。当時、新しく中継局となった「FOX」が、ラジコンカーやドローンにテレビカメラを搭載して映像を流したことは、以前このコーナーで書いたが、その際、ドローンはコースの直上には入らず、あくまでもコースの外周ギリギリを飛行して選手のプレーを撮影するだけであった。コースや選手の真上を飛べなかったのは「ドローンの飛行音がプレーの邪魔になる」ことと「ドローンがボールに当たることを避けるため」であった。
あれから7年を経た今年、米ツアーにおけるドローンの利用範囲は確実に広がっている。そんなことを実感させる出来事があった。
今年2月の「ジェネシス選手権」の練習日。練習ラウンドでバンカーショットを打つ選手のすぐ横を、ドローンが高速で飛行する場面に遭遇した。選手とドローンとの距離は、バンカーの大きさから推測すると3メートル以内だったように見えた。
しかし、選手はとくに驚きもせずにプレーを続けていた。近くにドローンを操縦するスタッフがいたため、これが準備された撮影だったということに気づいていたのだろう。この映像はしばらくするとSNSで見ることができた。バンカーショットの打球を、鳥の目線のように追いかけた映像で、とても興味深いものだった。ただ、昨年は撮影中にドローンの操縦を誤り、国旗に接触して落下するという事故も起こっている。幸い近くにいたギャラリーにぶつかることはなかったものの、現場の人々はヒヤッとさせられた。
また、5月の「AT&Tバイロンネルソン」では、ある事件も起こった。約300ヤードに設定された14番(パー4)。1オンも可能なホールなので、試合進行をスムーズに行なうために、グリーンに上がった選手は一旦グリーンを空けて、後ろの組にティーショットを打たせる“コールアップ”というプレー方法を取る。しかし、そのプレー方法を理解していなかったドローン操縦者が、フェアウェイの上空にドローンを移動。すると、ティーショットを打とうとしていた後ろの組の選手から「邪魔だー!」と怒鳴り声が上がってしまう事態となった。
打球事故には至らなかったものの、もし選手が気づかずにティーショットを打ち、ドローンに当たっていた場合、どのような対応がなされたのか、ルール委員に尋ねてみた。「もし当たったら、送電線にショットが当たった場合と同じく、無罰で打ち直しすることになると〝思います〞。じつはまだドローンにボールが当たるというケースは発生したことがなく、ルールブックや裁定集にも記載がないのです。なので、今回の事態についてルール委員内で話しあって“無罰で打ち直し”ということになりました」
新しいことを導入するとトラブルもつきもの。それでも最新技術をツアーにどんどんと取り入れていこうとする米ツアーの姿勢は応援したい。
フォトグラファー
田辺安啓(通称JJ)
●たなべ・やすひろ/1972年生まれ、福井県出身。ニューヨーク在住。ウェストバージニア大学卒業後、ゴルフコース、テレビ局勤務を経験し、ゴルフを専門とするフォトグラファーに転身。ツアーのみならず、コースやゴルフ業界全般に関わる取材も行っている。
取材・写真=田辺安啓
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