【裏話】堀琴音、“スランプ”から復活Vまでの道のりとは?武井壮との対談企画

百獣の王こと武井壮が、ツアープロを目指していろいろな経験を積むのがこの企画。

ワッグル2022年1月号のゲストは堀琴音プロ。スランプから初優勝をはたすまでに復活したストーリーを語っていただきました。

2022年シーズンでは「Tポイント×ENEOS ゴルフトーナメント」にて、早くもツアー2勝目を挙げた堀プロの“復活”までの裏話がもりだくさんです。

※本企画は2021年に取材しております

堀琴音、復活までの裏話

武井 今月はツアーの合間に堀琴音プロにお越しいただきました。なのに外は雨で残念! でも、明後日からまた試合ですし、琴音プロにはお聞きしたいことがあったので、無理せずじっくりお話しさせてください。

 よろしくお願いします。

武井 琴音プロのプロゴルフ人生で気になるところは復活劇ですね。プロ入りから3年くらいはよくて、そのあとは……

 暗黒時代!(笑)

武井 と、本人がいうくらい低迷していたのに今年はV字回復。何が起こったんでしょうか?

 短い期間で忙しいプロゴルファー人生ですよね(笑)。不調になったのはひと言でいえば、ショットがすごい曲がっていました。

武井 好調だったのになぜ?

 最初の2、3年は、成績はよかったのですが「なぜ勝てないのか?」と考えるようになって、「何かを変えないといけない」と思ったからですね。

武井 それはスイングに原因があったのですか?

 今思い返すと、疲れから体のバランスが崩れていたとか、体に問題があったんだと思います。女性は23歳くらいから体がちょっとずつ変わるといわれていたんですが、その自覚はなかったし、そんな経験もはじめてなので、スイングが悪いと思っていじり出したのがよくなかったですね。

武井 スイングのことに走って迷路に入ってしまったケースですかね。辛そう……。うまくいっていたことができなくなってしまうんですもんね。そこから復調するきっかけは?

 コーチですね。本当にわけわからなくなってしまい、サッカーならボールの蹴り方、野球のピッチャーだったらボールをどう握ったらいいのかわからないくらいのレベルだったときに、森(守洋)さんに出会えたのが大きいです。

武井 森コーチは、どんなコーチなんですか?

 私がとくにいいと思うのは、プロやプロを目指す子だけでなく、アマチュアのお客さんも大事にしているところです。以前「一般のおじさんを教えているほうが楽しい」ともいっていました。

武井 たしかに森コーチは一般ゴルファーの共通の知人が多く、その方たちからも話をよく聞きます。

 プロに対してもアマチュアに対しても、教え方を変えないんですよね。アマチュアってスイングの知識も感覚もプロほどではないから、砕いて説明しないと伝わらない。当時の私も、かみ砕いていってもらわないとわからない状態だったので。

武井 プロでも悩んでいるときはわからないでしょうね。そういうときはアマチュアにイチから教えるような丁寧な指導が必要かもしれませんね。

 はい。でも私も頑固で「こうしたい!」「それはできません!」という我が強いところもありました。曲がるくせに(笑)。でも、それも受け入れてくれたんです。

スイングの根本は変えたくなかった。そこで…

武井 その我が一番出たところはなんですか?

 スイングの根本は変えたくない、ですね。私はノーコックで、体で打ちたいタイプで、自分でも独特のスイングだと思います。でも、小学校1年生から10年以上このスイングでやってきたので、変えるなんて今さら無理!

武井 体にしみついた動きですからね。僕もそのクセを消そうと必死に大改造中です。そういう変えたくないこともありながら、手に入れた新しいものはなんでした?

 球筋です。私はドローヒッターなんですが、森さんには「こっちゃんはドローを打つスイングじゃないんだよねぇ」といわれ続けていました。

武井 それでフェードに変えたんですか?

 いいえ。ずっと無視していました(笑)。「私はドローを打ちたいんです。打てていたんです!」といったこともあります。

武井 めちゃくちゃ頑固な人ですね(笑)

 ところが、アイアンはよくなってきましたが、長いクラブはどうしても曲がってしまう。それで、今年の開幕戦で森さんにキャディをしてもらったときに受け入れてみたんです。そうしたら約2年ぶりに予選を通ったんです!

武井 フェードにしただけで?

 変えたばかりだったので、そのときはフェードというよりもスライスみたいな球筋でした。

武井 へ〜。それってどんな感覚でプレーしているんですか? ショットは思いどおりではないけど、スコアはいいわけじゃないですか。

 自分の感覚では50点くらいの出来。なのに次の試合もまたベスト10入り。「もうこれはやるしかないかな」となりますよね(笑)。次打の距離は残るんですが、フェアウェイから打てる。しかも不思議なもので、アイアンももっと真っすぐ飛ぶようになったんです。

武井 それは何が変わったの?

 たぶん軌道だと思います。インから入りすぎない、入射角も安定するとか。でも数ミリの差だと思います。それから「フェード、極めます!」と宣言しました。

武井 そして調子を上げていって、ついに優勝。今年一番印象に残る試合は、やはり優勝ですか?

 優勝もうれしかったですが、アース・モンダミンカップもですね。5位以内に入ったらシードが獲れそうなくらい賞金が高い試合で、そこでも森さんにキャディをしてもらって4位タイに入りましたが、キツかったですね〜。この試合、この1打でシードが獲れるかもと思ったら打てなくなっちゃって。

武井 精神的なキツさがあったんですね。

 最終日の最終ホールで1・5メートルのバーディパットが残り、これを入れたら5位以内に入れるかも。入ると外すでは800万円くらい変わる1打だったんですよ。

武井 たしか、3位以下は接戦だった?

 そうなんです。森さんに「私、これ打てないです。手が動かない。どうやって打ったらいいんですか?」と聞いたら、森さんも「えっ!」となってしまいましたが「もう決めて打つしかないよ」というから「どうやって決めて打つんですか? 決め方がわかりません!」。「打ち出しの10センチ。もうこれだけ! これだけ決めたら入るから!」。「じゃあ打ちます!」って、グリーン上で30秒くらい言い争っていました(笑)

武井 アハハッ。そんなやりとりがあったとは!

 それを経験してから怖さもなくなったし、自分を責めずに客観的に見られるようになりました。練習は厳しくていいと思うんですが、いざラウンドとなったら1番から18番ホールまである。ミスしても「今のはライも気持ちもこういう状況だったからああいう結果になった」と、自分を客観的に見て判断できるようになった。そういう見方ができる人のほうが強いんだな、とも気づきました。

ツアー初優勝を成し遂げ、次なる目標は?

武井 そんな琴音プロの今後の目標ですが、先のことはあまり考えたくないタイプだそうで。

 はい。2勝目はあげたいですが、どんな選手になりたいとかいつまでツアーに出るとかは決めていません。趣味をもちたいという目標はあります(笑)。最近は試合の合間にバッティングセンターに行くのが趣味なんですが、武井さん、野球も上手なんですよね?

武井 まあまあ上手。ゴルフよりはうまいかな(笑)

 今度、バッティングを教えてください。

武井 いいですよ。その変わり琴音プロは、僕にゴルフを教えてください!

 ぜひ! 暗黒時代より、教えるのも上手になっているはずです(笑)

堀琴音(写真右)

●ほり・ことね/1996年生まれ、徳島県出身。163cm。20-21年シーズンはニッポンハムレディスでツアー初優勝を果たす。そのほかにもアース・モンダミンカップで4位タイ、ニトリレディスで3位タイに入った。2022年は「Tポイント×ENEOS ゴルフトーナメント」にてツアー2勝目を飾った。ダイセル所属。

武井 壮(写真左)

●たけい・そう/環境省サスティナビリティ広報大使、日本フェンシング協会会長など、芸能の枠を超えて活躍するマルチタレント。新プロジェクト「# スポーツを止めるな # 音楽を止めるな」をスタート。YouTubeでは「武井壮百獣の王国」を配信中。
●オフィシャルサイト gogotakei.com/
●twitterアカウント @sosotakei
●インスタグラムアカウント sosotakei

写真=田中宏幸 協力=浜野ゴルフクラブ

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